「経営学の理論は実践で使えるのか?」
経営学の教科書を開くと、「これでもか!」と突っ込みたくなるくらいわんさかと経営学の理論が紹介されています。
そして、最後の文末には必ずこのように書かれています。
「あとは、ここで学んだことを現場でどのように生かすかはあなた次第だ!」
私が大学で経営学を学んだときは本当にこんな感じでした。社会に出てからは全然使えなかったのですが、大学の経営学を社会人向けに教えているところがたくさんあり、ビックリもしました。経営学は、物凄く人気がある学問みたいですね。
はじめに
1.経営学の理論とは何か?
有名どころでいうと、マイケルポーターやアンゾフのマトリックスなど、経営に必要な知識を解りやすく体系化したものですね。
私自身、大学時代には経営戦略論・組織論のゼミを履修していていました。戦略論や組織論についてはばっちり学んでいましたね。繰り返しになりますが、会社員時代は全然生かせていませんでした。逆に、頭でっかちと思われたくらいです。
1-1 経営学の理論は現場で役に立つのか?
少し話を戻して、大学時代に就職活動をしていたころのお話です。企業の人事担当者に大学で学んだ経営学は実践で使えるんですか?と質問をしたことがありました。
その人事担当者は、慶応大学の商学部出身でマーケティングを学び、メガバンクで働き、企業の出資で海外の大学でMBAを取得した経歴の持ち主でした。
そして、当時は、人材系のベンチャーのリクルーターのお仕事をしていました。
1-1-1 その方の答え
- 「新卒1年目でいきなり経営に関わるお仕事なんてしないよ」
- 「Excleの勉強をしておく方が戦力として重宝されるよ」
- 「そもそも、日本の企業はMBAを評価しないよ」
とのことでした。いや・・・MBAじゃなくて、学部レベルの経営学なんだけれどなー、、、と思いながら。
1-1-2 仮に役に立つとしたら
- 競合他社やお客さんが誰かがすぐに理解できる
- 経営学やビジネス書が大好きな人とお話ができる
- 友人・知事から会社についての悩み相談に乗れる
インテリ層の人たちと雑談をするときには驚くくらい効果を発揮しました。
経営者やマネージャークラスになるとやっぱり経営学の本は手に取るため、そこらへんで話についていくことはできます。
ユニクロの柳井社長もドラッカーのファンですからね。
1-2 仕事の悩み相談で力を発揮した
プライベートで知人から仕事や会社についての悩み相談を受けたときですかね。
経営学や組織論を知らないと、「会社なんて色々だよね」で話が終わります。でも、経営学についてある程度詳しければ、「その色々」を体系的に説明することができます。
1-2-1 ケース① 「うちの会社って凄く管理がキツくて・・・」
ここで経営学を知らないと、2人でお酒かコーヒーを飲みながら、会社を批判しておしまいです。
もしも、経営学を知っていれば、
- テイラーvsメイヨーの世界観と組織の考え方
- トップダウンやフラットな組織の違い
等を交えながらお話をすることができます。意外とこのような話を聞きたい人は多いんです。
心の悩みを抱えている人が心理学の本を手に取るのと同じ理屈ですかね。
1-2-2 ケース② 「私にあった会社ってどんな会社ですか?」
これもよく相談されますね。
大体マイケルポーターの話に持っていきますね。(笑)
経営学を学んでよかったなー、と思うところはここら辺ですかね。
結論:実務では全く役には立っていません笑
1-3 実践で使える経営学は存在するの?
よく最近ネットなんかで「経営学」と検索をすると企業のPRで「実践で役に立つ経営学・戦略論」というコピーを目にします。
- 【大前提】経営学は実学である
- 【小前提】実学は現場で使えてなんぼ
- 【結 論】よって、経営学は現場で使えるものが望ましい
というロジックなのでしょう。残念ながらスローガンで終わります。
誰が教えているか?がやっぱりポイントですね。
アカデミック業界の人がいくら「実践で役に立つ経営を教えます」と論じても、現場の人たちが異議を唱えれば、やっぱり聞き手はその現場の人たちの意見を支持する傾向にあります。それだけ経営の知識は本よりも現場寄りということなのでしょうか?
2.日本の経営学ってどうなの?
2-1 基本は、アメリカのマネ
基本は、アメリカのアカデミック界が発表したものを和訳しているものが多いですね。日本のアカデミック界でも研究はされているみたいですが、今のところアメリカの経営理論のほうが影響力が強いのが正直なところ。実際に、大学の時は、海外の本を和訳したものばかり読まされますからね。
日本人の大学教授が書いた本は、引用貼り付け集で終わっています。
良い本の基準が、いかに上手にまとまっているか、です。
2-2 野中理論が王道
日本発生の理論といえば、野中育次郎氏のSECIモデルくらいでしょう。
3.経営学の教授は現場に口を出せない理由2つ
これはどこの経営学の教授にとっても歯がゆいところかもしれませんね。アカデミック畑の人は経営者や現場の人たちに助言をしてはいけない!という鉄の掟が存在します。出したくても出せないパターンと本当に出せない2つのパターンがあります。
3-1-1 理由1 「じゃあ、自分でやれば!」と言われたらアウト
「じゃあ、あんたが代わりにやってみなよ!」「なぜやらないんですか?」と突っ込まれてたら反論ができないからです。
イソップ童話の猫の首に鈴をつけようの状態ですね。
頭でっかちの役立たずと批判されて終わります。そんなことを言われたら、その人が今まで積み上げてきたものが全て無になるような絶望感を味わうことになるでしょう。
だから、何をすればよいかは頭の中で解っているけれど、それを口に出せず歯がゆい思いをしています。そして、「●●社は、××という戦略をするべきなんだけれどなー」・・・と学生を相手に半ば口状態になっている教授もいますね。
3-1-2 理由2 具体的にどのように実行していけばよいかまでは解らない
上から「何をするべきか?」という質問に対して方向性ぐらいは示せても、現場のプレーヤーとして「みんなでどのように実行していくのか?」という問いかけに的確に応えられる学者・教授はいないでしょう。てか、いません。
ここら辺は、「トヨタ社員の問題解決法!5whyをあなたが使えない理由」でもお伝えしている通りです。
理論そのものは語れても、現場の課題と統合させて、具体的な提案を出せる人たちはいないでしょう。なぜなら、現場経験がないから。
もちろん、現場経験があれば最強なのですが、研究者気質の人は性格上、人とコミュニケーションをとることが苦手です。(だから、研究室にこもります)