マイケル・ポーターの限界|分析は過去の最適化でしかない!未来は創れない

2015年7月3日

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ポジショニングで失敗

ポーターは、5フォース、3つの基本戦略などといった革新的な分析モデルを産業界に提供して、米国の産業界・アカデミック界を震撼させるほどのスーパースターになりました。

ポーターに関する記事は、競争戦略の世界|マイケルポーターが提唱する業界内に潜む5つの脅威と3つの基本戦略を参照してください。

これほどまでに世界の経営者・起業家、若手のビジネスパーソンに多大な影響を与えたポーターさん。

学生は全員が「ポーター!ポーター!ファイブフォース!ファイブフォース!差別化!コストリーダーシップ!集中!」とまるでライブを聴くようかのように熱狂していたのです。

まるで教祖的な存在のポーター!競争戦略といえばマイケル・ポーター!サンデル教授を圧倒していましたね。

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はじめに

1.ポジショニング戦略の落とし穴

「私は、競争に勝ったのだ!」と余韻に浸っているポーター。ある学生がポーターの目の前に現れてベタ褒めをしました。

学生「あのー、すみません。ファイブフォースによる分析と3つの戦略は解りました。非常に科学的だと思います。全ての企業が最適にポジショニングができればそれに越したことはありませんよね。」

ポーター「その通りだ」

ところが、この次、その学生からはポーターの学説をひっくり返すようなツッコミが飛んできました。

1-1 ある学生の鋭い質問

学生「ところで、Appleのi.Phoneやスターバックスの上質なコーヒーはポジショニングだったのでしょうか?」

ポーター「そうだ!Appleは、ガラパコス化したモバイル市場を分析して、差別化を図ったのだ。直感操作で動かせる機能性と世界を変えるというコンセプトで実ガンをしたのがi.Phoneじゃ。」

学生「では、スターバックスは???」

ポーター「スターバックスは、コーヒー市場を見渡して、若年者・女性市場がガラ空きであるところに目を付けた。そこで差別化集中戦略を図り、女性や若年層向けにコーヒーと空間を提供した。差別化集中じゃ」

学生「なるほど!つまり、差別化と差別化集中の発想をもって、市場の穴場をみつければ、どんな企業もAppleやディズニーのような戦略ができるということですね。」

ポーター「そ・・・・そうじゃ」

1-2 ある学生からのトドメ

その学生はニヤリ笑い、まるで別人のように態度が変わり、ポーターにこう突っ込んだ!

学生「じゃあ、そんな企業がこの世にいくつあるよ!?アンタの競争戦略論が正しければ、今頃はAppleやスターバックスのような企業がゴロゴロあるはずだ。ところが実際はどうだ?ない!つまりだ・・・ポジショニングは机上の空論なんだよ」

ポーター「机上の空論だと!おい、この野郎!ふざけるなよ。私を誰だと思っている。泣く子も黙るマイケルポーターだ」

横にいる赤ちゃん「オギャー」

後ろにいる赤ちゃん「びえーーーーーん」

目の前にいる元知事「わ、わ、わ、私はこの国を・・・・ウォーーーん」

学生「全員泣き始めたな(笑)」

ポーター「・・・・・・」

※書き途中です。

 

次にある経営者さんが、ポーターに向かってこのようにいいました。

経営者A「いや~、ポーター先生のポジショニングに挑戦してみたんですけれど、見事失敗ですわ。去年までは上手く行っていたんだけれど、突然別の企業が私たちの市場に乗り込んできて・・・」

ポーター「ある企業とは・・・どんな企業だね?失礼だが、あなたは参入障壁の脅威を分析しきれていたかね」

社長さん「はい、私の会社は自動車を販売しています。確かにポジショニング理論で学んだ5つの競争要因では、自動車業界の参入障壁は堅牢でした。ところが、そんな参入障壁すらぶち破った企業が乗り込んできたのです。」

ポーター「・・・・・想定外だーーーーー」

ポーターに足りなかったのはここです。

競争戦略の欠点は、分析に頼りすぎるところにあります。業界や市場の動向、ライバルのチェックは過去のデーターから勝つためのパターンを見つけて判断することです。本質が、株式投資と変わりません。

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2.ポジショニングを実践した企業が負けた相手

残念ながら、ポジショニングについて一切考えず、体当たりで史上に乗り込んできた企業に負けました。

80年代~90年代の前半のJAPANアズナンバーワンの時代のことです。日本企業が全盛期だった時代です。

ポジショニングがウケた背景には、米国の企業が、今のソニーのように事業部制を採用しており、様々な業界、市場に事業を展開していたからです。

電子端末を製造販売している会社なのに、「今後儲かりそうだから」という理由だけで金融や人材ビジネスにも手を出しました。

まるでたこが足を拡げるかのように、儲かりそうな市場にあちこちと手を出している様子です。

すると、その企業は、ただの何でも屋になってしまいます。

競争力が低下してしまうというものです。今のソニーやナショナルのような状態ですかね。

圧倒的な製品力、企業力で勝負をする、「競争力が強い企業になろう」という発想は、当時のウォール街にはなく、とにかく事業を儲かりそうな多岐に展開して、拡大を目指していました。

これと真逆の路線に進んでいたのが、当時の日系企業です。ポジショニングとか市場分析などを考えずに、商品の品質や企業力で勝負をしていました。

「日本企業には戦略がなかった!行き当たりばったりだ!」とポーターは日本企業を批判していました。

ところが、「戦略がないのが最強の戦略だぜ」と世界に乗り込んできた日系企業を目のあたりにして、ポーターの批判は真っ向から覆される結果になりました。

CANONの半導体、本田自動車のオートバイが世界を制した時代のことですね。

3.優れた製品を生み出す技術と組織力の根源

当時の日系企業には、戦略論の教科書で解説されているような高度な戦略はありません。

かつての本田宗一郎が小難しい経営学の本を読んだか?NOです。

SWOT分析も、ポジショニングも、バリューチェーンすらも考えていません。

よい製品を生み出すこと一点のみを考え抜き、とりあえずやってみよう!というチャレンジ精神だけでした。

競争力が強い製品があったから勝てたのではないか?という意見もあるかもしれません。そういう見方もあります。

ですが、「外国の自動車業界は、GMが高級路線に走っていて、フォードが低価格戦略に走っている。よしおれたちは隙間市場を狙うぞ」なんて考えていたら、米国でバカ売れしたハーレーは作れなかったかもしれません。

 

「競争戦略」から「成長戦略」へ

競争で負けないように戦い方をするために、とにかく勝てそうな市場を見定めるところからスタートしますが、その判断材料は過去のデーターにしかありません。

アパレル業界を例にすると、ユニクロ、ZARA、H&Mがコストリーダーシップ戦略を採用してトップの地位にいる。他の企業は追従している。バーバリーやシャネルは、高級路線の差別化戦略。他のメーカーは、集中戦略をとらざるを得ません

さて、あなたが、今からアパレル企業のトップになるとしたら、

  • 「コストリーダーシップ」
  • 「差別化」
  • 「集中(コスト優位・差別化)」

の3つのうちどの戦略を選ぶでしょうか?おそらく間違いなく特定の市場に「集中」することを選ぶはずです。大量生産・大量販売は初期費用がかります。一方で、高級ブランドを創り上げるのには非常に時間がかかります。

となると、市場を絞り込むことしか選択肢がありません。

さて、問題です。15年前のユニクロはこのような戦略をしていたでしょうか?業界を見渡したら、特定の市場で勝つしか方法はないから、「集中するしかないな」と柳井社長は判断したでしょうか?

もちろんしていません。

普通にやっていたら業界トップ企業にはなれないから、自社の強みを最大限発揮して、トップを独走する戦略を採択しました。ファーストリテーリングは、ポーターの戦略を採用しなかったのです。

市場分析はしたのかも知れませんが、特定の市場に身を置いてその市場をドンドンと拡大させる戦略を選びました。なぜできたのでしょうか?

起業戦略論者は、こう言います。

  • 「ビジネスの環境に対応するばかりで、企業内部に眠っている強みに気付かない、気付こうとしなかったからだ!」
  • 「企業が収益を生む根源は、自社のポジショニングではない。業務の効率性でもない。洗練された戦略ではない」
  • 「企業の中に眠っている「底力」が大切であり、「底力」が競争力を生み出す根源になるのだ」

では、ポジショニング戦略は、どこで躓いたのでしょうか?BCGの成長マトリックスは企業の成長に寄与しきれなかったのでしょうか?当時の米国でエクセレントカンパニーといわれた企業が優良になりきれなかった理由は?

企業内部に眠っている「底力」を無視したからだ!と、ハメルとプラハラードの未来に向けた成長戦略(コアコンピタンス)経営の中でポジショニングの弱点を指摘していました。

 

 

 

 

 

 

 

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運営者情報

フリーランスのウェブデザイナー。元ディベート好き。30代でニートになる。2015年に本サイト:インプロ部がヒットして、副業ディベート講師として活動。 ホームページをゼロから収益化した実績が認めれ、35歳からウェブデザイナーになる。ウェブ制作会社・デジタルマーケティング会社を渡り歩き、複数社で経験を積み、現在はフリーランスのウェブデザイナーとして活動中。セミナーやオンライン相談の実践者として、現在は個人事業主の方向けにディベートやWordPress制作×集客を教えている。事業者の専門性をカタチにしたいと考えて、屋号は木村専門研究所に変更

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