ん!論理が飛躍していない???
「論理が飛躍している!」と人から指摘されてあたふたしことはありませんか?もしくは、人が何かを説明しているのを聞いていて、「この人の話、どこか飛んでいるなー」と違和感をいだいたことなど。
さて、今回はそんな論理の飛躍についてお伝えしていきます。
ディベートの基礎知識-4つの特徴-
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はじめに
1.論理の飛躍するとは?
極論をいうなら、全ての論理は何かしらの形で「飛躍」がしています。そして、私たちは、その飛躍した論理を自分たちの思考で補っています。
【答】HRM研究所の研究結果が[我が社]にも当てはまる、という説明が抜けているんですね。但し、そこまで説明をしなくても意味は伝わればあえて言葉にする必要はないんですね。
似たような例を紹介します。
[例]アメリカのある企業が新しいある人事評価システムを考案して、それが成功した。そして、多くのアメリカの大企業がその人事評価システムを採用している。ある日本企業の社員がそれを知って、自社でも採用しようと上司にプレゼンした。ところが、上司からはこういわれた。
→アメリカの大企業で成功した事例が日本の企業にも当てはまるわけではない
「アメリカで成功しても、アメリカの事例が日本に当てはまるとは限らない。」この部分の説明が抜けています。では、仮にこれが日本の企業だとしたらどうでしょうか?
おそらく、その上司はこう反論してくるはずです。
「A社の事例がわが社に当てはまるわけではない。よって、その論理はダメだ!」
となるわけです。。。
このようにいくら説明をしても完璧な論理は存在しないのです。しかし、完璧な論理が存在しないからといって、説明を端折ってよいのか?これも違います。論理がある程度飛躍するのは仕方ないとして、そのうえでどこが飛躍しているのかを見破り、適切に対処していくスキルこそが「論理的」な状態です。
2.GASCAPモデル|6つの論拠ワラント
⇒ トゥールミンモデルについて説明されているところから、完全にディベート記事ですね。今回は、このトゥールミンモデルの「ワラント」という部分についての解説になります。
論拠を上手にパターン化できる方法はないかな?と調べていたところ、6-common-warrantとまとめてある文献を見つけました。
陳謝:英語の文献でした。つたない和訳でお許しください。
GASCAPモデル
- 一般化(Generalization)
- 類似性(Analogy)
- シンボル(Sign)
- 因果関係(Causality)
- 権威/社会的証明(Authority)
- 原理原則(Principle)
※簡単に意訳をします。
1、一般化(Generalization)
A very common form of reasoning. It assumes that what is true of a well chosen sample is likely to hold for a larger group or population, or that certain things consistent with the sample can be inferred of the group/population.
意訳:一般的な理由付け。特定の事例・条件でのの正解をより大きな集団に当てはめてしまう考え方。もしくは、いわゆる一般的に正しいことを特定の事例に当てはめて考えてしまう。
うーん、上手に訳せない・・・泣
過度な一般化や個別化ですね。
結果:80%の人が、仕事よりもプライベートが大事だと答えた。
結論:最近の若者は仕事よりもプライベートを好む。
とはいっても、現実的に1000万人のサラリーマン全員にアンケートを取るのは不可能です。だから、一定量の対象者を集めて、アンケートをお願いするわけですが、必ずしもその結果が全体に当てはまるとは限らないわけです。
一般化の例
- 「先月の新聞を読んだら失業率が5%を超えた。うちの会社でも20人に1人はリストラされるかも」
- 「AKBのCDの総売上が1200万枚!そっか、日本国民の10人に1人が買っているのか」
- 「あるテレビ番組の視聴率が20%を超えた。2400万人の人が見ている計算になるな」
ディベートのみならず日常会話でも、全く異なる言葉をあたかも同じことのように論じるケースがあります。もちろん、私もします。(気づいたときは後の祭り)
失業率の計算については、結果こそ示されていますが、その過程や中身が示されていません。
計算結果だけに注目をするのではなく、計算方法や調査機関など細かいところを見ると論理の誤りに気付くかもしれません。
AKBのCD総売上げは説明するまでもありませんね。
テレビ業界ではやっぱり視聴率信仰が高いようですが、やっぱり英会陰のブラックボックスです。
さて、次。一般化の反対である「個別化」についても見ていきましょう。
個別化の例
- 帰国子女は全員英語が話せる。Aくんは帰国子女である。だから、Aくんは英語が話せる
- ディベートをしている人は頭がいい。Bくんはディベートをしている。だから、Bくんは頭がいい
- SEはタイピングがメチャクチャ速い。CくんはSEである。だから、Cくんはタイピングが速い
これ、よく私が人から張られるラベルです。この間違った大前提に感謝と陳謝です。
とりあえず、英語はできますが、特別ペラペラなわけではありません。洋書は読めません。Google先生がいないとお手上げです。
ディベートはしていますが、特別頭がよいわけではありません。ただ、ディベートの経験があって、人に教えられるだけです。
SEはタイピングが早いか?これも怪しいです。
タイピングが早いほうですが、ブログを書いているからでしょう。
とはいっても、あまりにも飛躍していたり、強引にこじつけるのは問題です。その時は、以下の質問をすると論理の飛躍がどこにあるのかわかりますね。
- 「必ずしもそうとは言えないよね?」
- 「例外は必ずあるよね?(反証可能性)?」
- 「今回のケースは一般化(個別化)できないよね?」
なお、建設的な議論をしたいのであれば、1,2,3についてはそうでない理由や根拠をキチンと示しておくのは、最低限のマナーです。逆の理由や根拠を示せなければ、「なんとなくおかしいよね。理由はないけれど。」と言っているようなものです。
2 類似性(Analogy)
Extrapolating from one situation or event based on the nature and outcome of a similar situation or event. Has links to 'case-based' and precedent-based reasoning used in legal discourse. What is important here is the extent to which relevant similarities can be established between 2 contexts. Are there sufficient, typical, accurate, relevant similarities?
類似性の証明、間違った比較や対比と覚えてください。図にするとこんなのです。
例えば、Xにa,b,c,d,e,fという性質があり、Yにa,b,c,e,fという性質があるとします。この場合は、100%ではないけれど、比較をするには問題がないという結論になると思います。
「オレンジとオレンジジュース」の法則と呼んでいます。100%オレンジが使われていれば、オレンジを食べても、オレンジジュースを飲んでも、摂取できる栄養は同じだからどちらでもOKということ。
で、もしもここで、「オレンジジュースにすると、ビタミンナントカの成分が死んでしまうんだ!」と反証してきたらオレンジ=オレンジジュースではなくなります。
アナロジー思考は、(ディベートの試合での)立論作成でものすごく大事です。なぜなら、ディベートのテーマは、前例がない政策や法案の是非について議論をします。だからこそ、対比できる例をたくさん用意して、議論を組み立てます。
アナロジー思考
- 1.子供にゲームをプレゼントしたら、夢中になって勉強しなくなった
→子供にタブレットをわたすと同じになるだろう - 2.社会では「ググれ●ス!」という名言がある
→子供たちもわからないことはタブレットで調べればよいのでは? - 3.子供の頃は物を乱暴に扱い何度も壊してしまった
→子供たちにタブレットを渡したら壊すのでは?
- 小学生は、は面白いものが目の前にあると注意がそれる。その点では、ゲームもタブレットも同じ。
- ググれ●スも調べてください、も言い方が違うだけで何をするかは一緒。また、社会人も小学生も解らなければ気持ち悪くなるから、調べるだろう
- 私物と共用物でも壊すときは壊すと考えるほうが妥当。逆に、自分のものを大切にして人のものを雑に扱う人もいる
XとYは違うのでは?と指摘を受けますが、できるだけ似たような要素をたくさん集めて、可能な限り証明するようにしてみてください。
なお、アナロジーな議論に対しての反論は、一般化と同じですね。「一概に言えないよね」「今回のケースに当てはまらないよね」と反証すればOKです。同時に、このような反論をされたら、「出来事こそ別だけれど、本質的な部分は変わらないよね。」と切り返すのがベターですね。
余談ですが、業界・職種未経験で転職をする方法は、仕事の親和性や業務の類似性を活用することです。例えば、一般事務から経理の仕事に転職をしたいとすれば、Excelの入力が正確にできることをアピールします。なぜなら、一般事務も経理もExcelで伝票を作る現場が多いからです。
経理は未経験だけれど、Excelが得意だから、御社に貢献できます!とアピールするのは、アナロジー思考に違いですね。
3 兆候(sign):
The notion that certain types of evidence are symptomatic of some wider principle or outcome. For example, smoke is often considered a sign for fire. Some people think high SAT scores are a sign a person is smart and will do well in college.
サイン・・・つまり、視覚や言葉がもつイメージによる論理の飛躍ですね。私たちは、知らず知らず言葉のイメージによって深く考えず物事をそうだと決めつけています。ところが、現実はどうか?
イメージと現実
- バナナ=すべる-実際にバナナの皮を踏んだけれど、滑りませんでした。
- ニート=働く気がない-全員が全員、働く気がないわけではない
- 長時間労働=ブラック企業-労働基準法を守っていればOK
- 外資企業=実力主義、英語を使う-日系企業のほうが英語を使う(個人の経験)
この手の論理に対しての反論は簡単ですね。イメージと現実のギャップを知ることです。
- 「実際はどうなの?」
- 「それはイメージですよね?」
- 「私こういう体験をしたのですが」
という視点を常に持っておくことですね。世間一般で言われていることと、現実はやっぱり違います。
他の人にとってイメージであっても、あなたにとっての現実はたくさんあるんですね。だから、どんな経験も無駄にはなりません。世間一般のイメージよりも、実際に体験をした人から話を聞きたい人は案外といます。
4 因果関係(Causality)
Arguing that a given occurrence or event is the result of, or is effected by, factor X. Causal reasoning is the most complex of the different forms of warrant. The big dangers with it are:
1.Mixing up correlation with causation
2.Falling into the post hoc, ergo propter hoc trap. Closely related to confusing correlation and causation, this involves inferring 'after the fact, therefore because of the fact').
ある事象・事件の原因はXなのか?そもそもXは結果なのか?X成立するのか?と論じている状態。因果関係の法則は、6つの推論の中で最も複雑。大きな危険性として考えられるのは、次のとおり
1.原因と結果を混在させてしまう
2.原因と結果が似ているため、前後の関係がグチャグチャになる(エルゴアドホックのワナ)
はい、問題です。この論理は正しいでしょうか?
エアコンの売上と気温の変化に相関性があった。エアコンが売れるから、気温が上がる!
因果関係が逆ですよね?暑い(原因)→皆エアコンを買う(結果)が正解です。
(※エアコンが売れまくって、エネルギーを使いまくって、
温暖化が促進して、結果、気温が上がる、
という論理を組み立てるなら別として)
今回の例は極端ですが、似たような例はたくさんあります。
因果関係が微妙な例
- 従業員の職務満足度が高ければ、会社の業績が上がる
- 「ありがとう」を習慣にすれば、経済的に成功する
- イケメン・美人になれば、性格もよくなる
- 海外留学をすれば、英語が話せるようになる
原因と結果を入れ替えてみて、どちらの方がより正しい、より納得できるのかをチェックしてみて下さい。因果関係の論理は難しく思えますが、案外とカンタンです。
「Aになれば、Bになる」という論法を聞いたときに、「Bになれば、Aにならないのか?」と反射的に考えることです。
例えば、「留学をすれば英語が話せるようになる」という論理ですが、留学を志している人は、試験に合格するために英語の勉強をしています。だから、「英語が話せるから、留学ができるようになる」と考える方が論理としては説得力があります。
他にも面白い例で、「コウノトリのいる地域には赤ちゃんが多い」というデータがありました。そこから、話が飛躍して、コウノトリが赤ちゃんを運んで来てくれるという論理になりました。
ここも考え方で、赤ちゃんが多い地域は、自然が多く住み心地がよい地域である。結果、コウノトリがたくさん生息するようになった、という論理展開もできるわけです。ただ、コウノトリと赤ちゃんの場合、因果関係が入れ替わっても論理が崩れるわけではありません。これは相関関係があるからです。
まとめ
- 「Aになれば、Bになる」のAとBを入れ替えたら論理が成立するか?
- 因果関係が成立していなくても、相関関係そのものは崩れないか?
5 権威/社会的証明(Authority):
Does person X or text X constitute an authoritative source on the issue in question? What political, ideological or economic interests does the authority have? Is this the sort of issue in which a significant number of authorities are likely to agree on?
人は権威に弱い!の一言ですね。「●●大学の教授が、私と同じことをいっている」「私の主張は医学的にも証明されている」「英語を覚えれば、国際社会で活躍できるって英語の先生が言っていたもん」と権威を使って自分の意見を強化する論法はもはや王道です。
さて、権威付けのロジックに対しての反論は以下の通りです。
権威による誤解
- 1.立場-その権威者は、どの立場で論じているか?
- 2.実際-本当に事実や研究に基づいているか?
- 3.情報源-その情報源のソースは一次か?
例えば、英語の先生は英語を覚えるといいことがあるよ!というのは当然です。それが商売ですから。ところが、その先生が国際社会で活躍していなければ、その論理は弱いと言えるでしょう。最後に、情報源とは、情報の鮮度です。情報は、発信元がいちばん説得力があると言われています。
例えば、日本で紹介されているディベートの99%がアメリカから来たものです。では、本当のディベートは何なのか?について議論をしたければ、原文で読んだ内容を伝える方が説得力が高いわけです。
他にも、日本ではSEOの技術について様々な憶測的論議がされていますが、何が最新のSEOで、何が最新の技術化を理解したければ、GoogleUSAが公表しているページを見るのがいちばん早いです。
まとめると、権威を攻略する方法は、誰が言っているか?ではなく、その人が、どの立場でどれだけの内容の発信をどの事実に基づいて行っているかを確かめることです。
6 原理原則(Principle):
Locating a principle that is widely regarded as valid and showing that a situation exists in which this principle applies. Evaluation: Is the principle widely accepted? Does it accurately apply to the situation in question? Are there commonly agreed on exceptions? Are there 'rival' principles that lead to a different claim? Are the practical consequences of following the principle sufficiently desirable?
チェックするポイント:その原理原則は、多くの人から認められているものか?ところで、現在の状況にも当てはまるのか?例外が発生したときにも認められているか?アンチを唱える人はいないか?十分に望ましい原則を次の実用的な結果はあるか?
私たちは「原理原則」に基づいて物事を考えさせられている!ということです。しかし、この原理原則が必ずしも正しいものではないということ。
(例)お金持ち父さん貧乏父さん、影響力の武器、経営戦略論、数被術、カバラ占い、タロット占い、エニアグラム、エゴグラム、サイグラム、●●式ダイエット、●●式呼吸法、●●式英語学習法
と枚挙に暇がありません。こういうのをひとつの法則というのですが、これらが本当に正しいですか?と言われたらどう答えるでしょうか。
おそらく、「考え方としてはまとまっているけれど、絶対に正しいとは言い切れないよね・・・」と答えると思います。
正解です。
学問、コンテンツ全般に言えることですが、体系的であり世間に認知されているひとつの考え方、です。ただ、ひとつの考え方を妄信していると、同じ考えを共有している人とは上手にコミュニケーションを取れるかもしれませんが、そうでなかったら何をいっても通じません。日本人の常識は外国人の非常識と覚えるとわかりやすいかもしれません。(逆もしかりです)
なぜディベートをするのか?
最後の原理原則で、異なるセオリーや法則がたくさん存在するからではないでしょうか?
- 心理学論争-アドラーvsユング
- 経済論争-人間は合理的に判断するvs人間は非合理的である(経済学vs行動経済学)
- 経営論争-経営は数字&効率派vs人間関係が大事(テイラーvsメイヨー)
- 戦略論論争-企業の競争要因は外部にあるvs内部の資源が大事だ(ポーターvsバーニー)
- 占い-運命論者vs成長論者(生まれたときから運命は決まっているvs自分次第で運命は切り開ける)
- 性格診断-人の性格は、8通り/9通り/12通り/16通りに分けられる
- ディベート論争-ディベートは証拠資料を使うvs自分の言葉のみで行う
どんなセオリーにも必ず欠点があります。ところが、ひとつのセオリーを妄信して、他の可能性に目を向けなければ視野が狭くなり、そこで論理の飛躍が起きてしまいます。
とはいっても、ディベートもひとつの体系ですよ。