こんにちは、木村です。どうも、最近はジャッジと運営ばかりをしているためか、選手としてディベートをする余裕がありません。今度、一緒に試合をしてください。本当にしたいです。
さて、今回は、ジャッジをするときにポイントについて解説をします。
はじめに
1.ジャッジとは?
ジャッジとは、試合を判定する人のことです。ディベートの試合を最初から最後まで聞いて、納得できた方に判定を行います。判定後には、なぜ自分が肯定側(否定側)に投票をしたのかを全員の前で解説します。
1-1 正解ではなく理由を解説
ジャッジの仕事は、正しいと思った方ではなく、「より納得できた」と判断したチームに票を入れることです。加えて、全員の前でその理由を解説します。
1-2 判定が割れるときもある
ジャッジは、全員が全員同じように試合を見て判定をしているわけではありません。公式戦では、ジャッジが5人いて、3人が肯定側(否定側)、2人が否定側(肯定側)に投票するなんてことはよくあります。
今回は、そんなジャッジの判断のポイントを4つに分けて解説をしていきます。
2.ジャッジの判定方法を4つに分類
<マトリックスの見方>
- 縦軸:試合に自ら分析・評価を行う
- 横軸:試合に価値観を反映させる
多かれ少なかれ、ジャッジは自分の【分析・評価】や【価値観】を試合に反映させています。理想は、100%客観的になることですが、人間である以上、それは無理です。
できる限り論理をベースに客観的な立場になって考えてみて、最後の最後にどうしても判断できない部分は、あなたなりの【分析・評価】や【価値観】を加えて判定に臨んで下さい。
絶対にやってはいけないのが、はじめから決めつけるように物事を考えて、判断に挑むことです。
ジャッジを4パターンに分ける
- 2-1 まっさらな新人
- 2-2 リーダー・教育者
- 2-3 面接官・責任者
- 2-4 大学教授・株主
変なネーミングで恐縮ですが、この4つのタイプのうちから、あなたに合ったスタイルのジャッジをチョイスをしてみて下さい。
1. まっさらな新人
ジャッジをスタートしたころは、誰もがまっさらな新人です。私にも、そんな時期がありました。
テーマの知識や判定理由は、選手の方から積極的に伝えてくれる思うので、ジャッジは、選手のスピーチを全て聴いて、肯定側と否定側の議論を両方聴いて、より納得したと判断した方に投票をすればよいでしょう。
判断に迷ったらメリット×デメリット方式が有効
- メリット=内因性×重要性×解決性
- デメリット=発生過程×深刻性×固有性
詳しくは「明日からでもディベートはできる!メリット・デメリット方式の判定方法について」を参照してください。
基本的な態度は、自ら分析・評価を積極的に行わないこと。テーマに対して、ディベートに対して、あまり深く考えず、議論を議論としていく方が望ましいです。このようなジャッジのスタイルを「タブラササ(真っ白な彫刻)」と言います。
2. リーダー・教育者
ディベートの試合を見て、自分なりに判断のポイントや講評の仕方を覚えた状態ですね。ジャッジを通してディベートの考え方やスピーチの方法を教えていくようなイメージで行ってみて下さい。
もしくは、ディベートのことをそんなに解っていなくても、テーマについて知識を持っている人なら、このスタイルでジャッジに挑んでも大丈夫でしょう。
新人に仕事を教えるようなイメージですかね。あなたが選手だったら、どのように考えて、スピーチをするかを言葉にして選手に伝えてみてください。
まっさらな新人の方では、考えずありのまま受け入れるタブラササのスタイルを推奨しましたが、ここでは論点ひとつひとつをチェックしていきながら、ディベートの試合全体に一歩踏み込むようなクリティークのスタイルが望ましいです。
3 面接官・経営者
このタイプのジャッジは、ディベートをゲームとして捉えていません。現実的なもの・実践的なトレーニングの場として捉えているため、「ディシジョンメーカー」「決断をする人」の役割を果たすようになります。
「決断をする」「意思決定をする」観点で、ディベートのゲームを見ていきます。
ジャッジの仕事には、意思決定をするという部分も含まれています。
- 面接官の仕事:「採用するしない」、「次の選考に進める、落とす」の判断を下す人
- 経営者の仕事:事業にかかわる意思決定をする。つまり、「する、しない」の決断
「今回のディベートの試合では、このような流れだったけれど、実際この部分はこのようにも考えることができて・・・」「確かに、企業は利益を求めるのは当然だけれど、その点では肯定側が勝っている。一方で利益よりも大事にしているものがあって・・・実は否定側の意見も虫ができなくて・・・」とゲームの枠で物事を片づけない一面があります。
特に、ディベートを通して「決断力」「意思決定力」を身につけていきたいと考えている人は、面接官・経営者タイプのジャッジを目指します。
ジャッジをするときは可能な限り自分の主観や考え方を取り除いて挑むべきですが、最後の最後にどうしても判断ができない部分があれば、主観やこれまでの判断してきたことをベースに判定に挑んでもかまいません。
その分、まずは肯定側と否定側の議論を全て聴いて、全部理解をして、そのうえでどうしても判断ができない部分があったから主観で判断をしたことを伝えなければなりません。
4 大学教授・株主
過去に選手としてディベートはしていたけれど、いつの間にかジャッジしかしていなくて、ディベートのやり方をすっかり忘れたタイプのジャッジですね。ジャッジに慣れ過ぎてしまったのが仇となり、あまり考えなくても感覚だけでジャッジができるようになると、段々とこのタイプのジャッジになっていきます。
基本的な態度は、「オレはできないけれど、口だけは出すぜ!オレ流にな!」です。だから、こんな特徴が目立ちます。
- ジャッジ経験が長い、選手のブランクも長い
- ディベートの講師をしているが、選手はしない
- ディベートの知識だけはあるが、試合はできない
- ディベートは大好きだけれど、選手はやりたくない
長年ジャッジだけをしているため、オリジナルの分析や評価のやり方を持っています。人前に立って発表をすることにも慣れています。理屈だけで、人を説き伏せる力もあります。
このタイプのジャッジは、1つだけ問題があって、「頭で解っている」「実際にできる」の違いを一番理解していません。なぜなら、長い間、選手としてディベートの試合をしていないため、そこら辺の感覚がマヒしています。
これはディベートの試合とジャッジの両方をしていれば解ることですが、ディベーターとジャッジは見ているところが極端に異なります。大学教授・株主タイプのジャッジは、そこら辺が全く解っていません。試合のレビューをするときも、一見的を射たように発表はしますが、よくよく聞いてみるとトンチンカンな絶対にできないアドバイスを平気で選手の前で要求します。
何よりも、そんな絶対にできないようなアドバイスをできるように思わせるのがすごく上手だったりするのもこのタイプのジャッジです。戦略は立案できるけれど、自分で立案した戦略を実行できないストラテジストさんですね。