ディベートのコツ-ジャッジのやり方を暴露!3つでOK

2016年2月19日

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ジャッジ取り方

ディベートの試合が終わったら、いよいよ試合の決着をつけます。ディベートのだいご味は何と言っても必ず試合の決着がつけられるところ。そして、その判定は第三者に委ねられるところですね。そんな試合の決着をつけるのが「ジャッジ」です。

ジャッジは、選手の議論をすべて聴いて、どんな議論だったかを理解して、各議論の論証を分析・評価して、最後に決着をつけます。

即興ディベートワークショップ2019

はじめに

1 ジャッジとは?

ジャッジ取り方

ディベートでは試合の決着をつける人のことをジャッジと呼びます。なので、ジャッジと覚えてください。

さて、そんなジャッジの立ち位置についてもう少し詳しくお話をしましょう。

1-1 選手の目的はジャッジを説得すること

ディベートの試合では相手を言い負かすことではなく第三者であるジャッジを説得すること、と教わります。相手をギブアップさせるくらいコテンパンにしても、ジャッジから票を勝ち取れなければ、負けです。

逆に考えると、相手からどんな攻撃を受けても、ジャッジから、「あなたの議論のほうが相手チームの議論より説得力があると判断したから、あなたに投票しました」と言ってもらえれば、あなたは試合に勝てたことになります。

1-2 ジャッジから票を獲得する方法?

第二反駁でこれまでの議論を全て整理して、ジャッジに対して、「よって、この試合は、肯定側(否定側)に投票してください」という強く指示することです。

お店のスタッフが「今すぐに、この商品をもってレジに並んでください」というようなイメージですかね。(笑)

え?そんなことをいうの?と思うかもしれませんが、この一言を最後のスピーチでいうために、これまでの議論があるわけです。

即興ディベートワークショップ2019

2.ジャッジがチェックしている3つのポイント

Free-Photos / Pixabay

さて、ここからはジャッジと選手の両方の視点に立って考えてみて下さい。肯定側第二反駁(最後のスピーチ)が終わったタイミングでジャッジは以下の3つのポイントをチェックしています。

  • 2-1 議論が成立している理由を示せているか?
  • 2-2 細かい争点に決着がつけられたか?
  • 2-3 お互いの議論を比較しているか?

よって、選手としては、この3つのポイントを意識してスピーチに取り組めばジャッジから投票を勝ち取ることができます。

試合が終わった後にジャッジがチェックしているのは、この3つです。

2-1 議論が成立している理由を示せているか?

言い換えるなら、自分たちの議論がどの程度成立しているのかを定性的に示せていることですね。

テーマがあったほうが解りやすいので、用意しました。

仮テーマ:某ファーストフード店は、カリフォルニアロールを商品化するべきである、是か非か

qimono / Pixabay

「カリフォルニアロールは日本で売れる?」で考えてみましょう。カリフォルニアロールといえば、アメリカでヒットしたお寿司です。アメリカ人か日本人かは忘れましたが、日本のお寿司をアメリカ人が食べやすいようにアレンジしたものです。

「カリフォルニアロールは、アメリカで売れたのだから日本でも売れる」という議論を提示します。

すると、相手選手からは、「アメリカで売れたからといって、日本で売れるとは限らない」という反論を受けることになります。

では、ここで問題です。この議論は成立しているでしょうか?それでも成立していないでしょうか?

答えは、両方です。

完全に成立はしていなくても、ある程度は成立しています。

2-2 細かい争点に決着がつけられているか?

先ほどのカリフォルニアロールの続きですが、究極的にはカリフォルニアロールが日本で売れるかどうかなんてやってみないと解りません。未来のことですから。

様々な議論がある中でひとつひとつの議論に決着をつけていくのがポイントです。

例えば、カリフォルニアロールが日本で売れるとは完璧に証明できなくても、このようなことは言えます。

2-2-1 立証側

「日本人はカリフォルニアロールは食べなくても、

  1. お寿司を食べる文化がある
  2. シーチキンやサーモンにマヨネーズをかける
  3. エスニック料理が好きな日本人はたくさんいる

よって、カリフォルニアロールは売れる、と判断してください。」

と、カリフォルニアロールは100%売れるとは言い切りませんが、これまでの論点を集約整理して、自分たちの議論は説得力がある、と示すことです。

もちろん、この議論を崩すこともできます。

2-2-2 反証側

「一部の人がカリフォルニアロールを食べることは解った!しかし、

  • 一部の人であって万人ウケする商品ではない
  • 万人ウケする商品でなければ商品として販売するのは難しい
  • アメリカではジャパニーズブランドが強いから成立している。日本では通用しない

よって、カリフォルニアロールは日本ではそんなに売れないと判断してください。」

つまり、ある程度売れることは認めたうえで、商品化するレベルまでには至らない、という反証です。

さて、この2つの議論に決着をつけていきましょう。

2-2-3 争点の決着

繰り返しになりますが、ジャッジは、カリフォルニアロールが売れるとか売れないとか、商品化するべきか否かとかどうでもいいと考えています。そもそも自身の考えを試合には持ち込まないことを徹底しているのがジャッジです。

大事なのは、カリフォルニアロールを商品化するべきか否かの判断材料と判定基準です。これまでの議論を振り返って、判断材料と判定基準を示せるかがディベーターの腕の見せ所です。

さて、この判断材料と判定基準の違いについては、次の「お互いの議論を比較しているか?」でお伝えしていきます。

次に進んでください。

2-3 お互いの議論を比較しているか?

まずは、先ほどの判断材料と判定基準の違いについてみていきましょう。この2つが似ているようで全く異なります。

<判断材料>

  • カリフォルニアロールが売れるかどうかを検討するために必要な情報

今回の議論を振り返ると、「カリフォルニアロールが売れる」と立証した側はたくさんの判断材料を示していました。

  • お寿司を食べる文化がある
  • シーチキンやサーモンにマヨネーズをかける
  • エスニック料理が好きな日本人はたくさんいる

対して、反証側は、この論点に対しては、全く否定できていません。カリフォルニアロールが売れない、という情報は十分に否定できませんでした。

<判定基準>

  • カリフォルニアロールが売るべきか否かを決断する考え方・決断方法

今回の場合だと、売れる商品と売るべき商品は別の話です。経営判断に近いかもしれません。「カリフォルニアロールが売れない」ということを立証できないと判断した反証側は、別の判断基準を持ってきました。

  • 売れるのは分かったけれど、商品として販売するかは別の議論
  • 今回の場合だと、多くの人には支持されないから、販売するべきではない

と、このように論点をすり替えたわけです。つまり、相手の議論を一部認めたうえで、自分たちが戦いやすい方向で議論をリードしていくわけです。その手段が、判断基準を示すことです。

このようにジャッジは、お互いの議論を吟味してどちらのほうが説得力が高いか、どちらに投票をするべきかを、判断材料・判定基準をもとにして考えてジャッジをします。

3.ジャッジの仕事3つ

qimono / Pixabay

先ほどは、ジャッジの仕事は肯定側と否定側の議論両方を聴いて、説得力があると判断したほうに票を入れるもの、とお伝えしました。

単に肯定側と否定側のどちらかに票を入れるだけのジャッジなら、これだけでOKかもしれませんが、公式戦のジャッジは他にもたくさんの仕事があります。

3-1 試合の振返り・判定・アドバイス

ジャッジの仕事は振り返り判定講評アドバイス

自由-より自分が説得されたと判断した方に説得してよい

責任-なぜ肯定側(否定側)に投票をしたのかを説明する義務

<ジャッジの仕事と親和性の高い職務>

  • 試合の振り返り-議事録やマインドマップが書ける程度でOK
  • 判定・講評-仕事でリーダークラスの裁量を持っていればOK
  • アドバイス-講師やトレーナーの経験、褒め上手であればOK

ディベートができるできないに問わず、社会人経験がある人なら、ジャッジは誰でもできるポジションかもしれません。

ま、そんな感じでひとつひとつのポイントを見ていきましょう。

1-1 試合の振り返り

ディベートジャッジ編フローシートが大事

選手の発言・試合で提出された議論を全てフローシートに書きます。判定・講評をするときは、これまでに書いたフローシートを見ながら行っていきます。

フローシートを書くときに注意点

自分だけが解ればいいので、キレイにまとめる必要はありません。私は、人に見せられないくらい殴り書きで書いています。試合が終わって、スピーチの内容を思いだせるようにしておくのがポイントです。

フローシートの書き方については、あまり難しく考えず、段からメモやノートをまめにとる感覚で書いてみて下さい。大事なのは、フローシートをキレイに取るよりも、試合の内容を振りえって解説できることなので。

これまで試合に出てきたスピーチを全てフローに書き落とせたら、判定・講評をします。判定の方法は、メリット・デメリットをチェックしてみて下さい。チェックするべき点は、これからお伝えする6点です。

1-2 判定・講評

いきなりジャッジをすると、「どちらに判定をしたらよいのか?」と誰もが迷いますが、判定そのものはどっちでもよいです

大事なのは、判定そのものよりも、判定後にどのように講評をするか、です。

最後は、直感で決めても問題ない

確かに選手からしたら試合の結果を直感で決められるのはちょっと・・・と思いますよね。一方で、ジャッジにとって大切なのは、その判定を下すまでの過程です。

肯定側に投票をしても、否定側に投票をしても、その場にいる人たちが納得できる説明ができるかどうかです。だから、選手は極力ジャッジが判定を下しやすいように、そのお手伝いをする感じで議論に臨むとよいでしょう。

選手の判定理由に同意してもOK

では、あらためてジャッジの立場でお話をしますね。ジャッジをするとどちらに投票をしようか迷うこともありますが、基本は投票理由を明確に示した選手に投票すればよいと思います。そのほうが判定後の講評が楽ですからね。

基本は、選手自ら投票理由を試合の中で出してくると思うので、選手の主張に乗っかるのがいちばん簡単です。

ただし、途中で抜けや漏れがないように、フローシートだけはキチンと書いておくようにしておいてください。

ディベート試合編-フローシートを上手に書くコツ3つ

メリット・デメリット方式が一番カンタン

抑えるべきポイントはメリットとデメリットの6つであり、それぞれの主張と根拠です。

  • ゼロになった、限りなくゼロに近い
  • 全体のバランスを見て著しく弱い

と判断したら、掛け算で考えましょう。つまり、メリット・デメリットそのものを採用しない、ということです。

この判定方法の優れいているところは、竹を割ったかのようにサッパリとした講評ができますね。絶対にお勧め。(言い切ります)

メリットデメリット方式やディベートの流れについてはこちらの記事を参考にして下さい。

「立論」「質疑」「反駁」3スピーチのやり方を理解しよう!

1-3 アドバイス

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ジャッジは、教育者・コーチ・トレーナーの資質が試されます。

試合の判定だけして終わりではありません。ここら辺が、スポーツの審判との決定的な違いですね。

その試合を通じて学んだこと、次の試合での活かし方?などアドバイスをたくさんくれます。ディベートを通じて身に付けたスキルをどのようにして日常で活かしていくのか?と、選手の成長をサポートできなければジャッジはできません。

もしもあなたが、「人を育てるような仕事に就きたい」と思っているのなら、選手よりもジャッジに向いているかもしれませんね。

あとは、絶対に選手視点を忘れてはダメ!いや、ジャッジをするなら選手も経験しておくべき!そもそもディベートをしないジャッジなんてあり得ない。

そんなジャッジがディベート業界をダメにするのだと勝手に思っています。

ディベートができない教授ディベーター達が多くね?
即興ディベートワークショップ2019

最後に

私がジャッジを始めたのは、大学4年生のときです。本格的にジャッジをしたのが社会人2年目でした。ディベート甲子園の中学生・高校生の大会のメインジャッジとサブジャッジを担当しました。

ジャッジのスキルにはあまり自信がありませんでした。とりあえずフローシートを読みながら、「良いところ」だけをひたすらほめるスタイルのジャッジメントをしていました。

当時は、選手を褒めるのが上手だったみたいです。(笑)

ほめ殺しジャッジだったかもしれません。負けを下したチームはかなりケアしましたね。

追記!

あまり知られていないかもしれませんが、競技ディベートは、このジャッジをすることも含まれています。寧ろ、選手よりもジャッジのほうがウェイトを占めていますね。選手だけ経験していると、ディベートの技術こそ身につけることができても、ディベートの思考は身につかないんですよね。

面接に例えるとわかりやすいかもしれません。面接を攻略するコツは、ひたすら面接の練習をするのではなく、一度でもいいので面接官を経験して、採用の是非を判断してみることです。採用する側の立場が分かるから、どんなふうに面接をすればいいのかがわかってきます。

どうすれば相手を説得できるか?と悩むくらいなら、はじめから説得される側の立場になればいいんですよね。

即興ディベートワークショップでは、最後に選手としてディベートの試合を経験してもらいますが、はじめはジャッジの立場でディベートの試合の参加をしてもらいます。意思決定や決断のトレーニングができると思うので、よろしければご参加ください。

 

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運営者情報

フリーランスのウェブデザイナー。元ディベート好き。30代でニートになる。2015年に本サイト:インプロ部がヒットして、副業ディベート講師として活動。 ホームページをゼロから収益化した実績が認めれ、35歳からウェブデザイナーになる。ウェブ制作会社・デジタルマーケティング会社を渡り歩き、複数社で経験を積み、現在はフリーランスのウェブデザイナーとして活動中。セミナーやオンライン相談の実践者として、現在は個人事業主の方向けにディベートやWordPress制作×集客を教えている。事業者の専門性をカタチにしたいと考えて、屋号は木村専門研究所に変更

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