ディベートの試合中に議論の方向性を見失う一番の原因・・・。それは誰の立場で議論をしているのかがわからなくなることですね。
例えば、「企業は新卒採用を廃止するべき」というテーマでディベートの試合をするとします。
肯定側は中小企業の立場で主張をして、否定側は大企業の立場で主張します。
すると、お互いの前提が違っているため、議論がかみ合わなくなります。
答えはテーマの主人公にあります。
目次
主人公を決める理由
先ほどの、新卒廃止の是非について考えていきましょう。
その企業の従業員数が3000人以上の従業員を抱えている大企業であれば、新卒制度は毎年安定的に社員を採用できる素晴らしいシステムです。対して、100人未満の中小企業では、新卒採用に費やすコストを考えると、積極的にはなれません。
このように双方が異なる前提で議論をしだしたら、双方の議論は永遠とかみ合わないわけです。
「じゃあ、お互いが相手の立場を理解して議論をすればいいんですね。」が模範解答かと思いますが、違います。
誰の立場で議論をしているのか!を固定しておく
事前にテーマの主人公を決めておき、その主人公の立場になって議論を作るのが正解です。
「じゃあ、お互いが相手の立場を理解して議論をすればいいんですね。」は模範解答に聞こえるかもしれませんが、猫の首に鈴をつけるくらい難しいです。
ちょっと会話タイム
と、このように主人公がはっきりしたほうが焦点が定まりやすくなります。
社会人ディベートCafe☆時代の出来事
かつて私も同じような経験をしました。社会人ディベートCafe☆の最初のイベントです。まだ、このときは、社会人ディベートCafe☆という名前があっただけです。
その時のモデルディベートは、「小学生に携帯電話を持たせるべきか、否か」でした。ちょうどスマートフォンが普及し始めた時代ですね。
あまり覚えていないのですが、確かこんな感じの議論だった気がします。
- 肯定側-緊急時に親といつでも連絡が取れるため、身の安全が保障される
- 否定側-授業中に携帯電話からネットにアクセスして悪質なサイトを閲覧するかも
メリット・デメリットは全部残りました。さて、このテーマですが、先ほど指摘したとおり主人公が誰かが解りません。
国家・政府が行うのか?文部省・教育委員会が行うのか?特定の学校が行うのか?そこら辺が特定できません。
肯定側は子供たちに携帯電話をもたせたい親の立場に立って議論を作りました。
対して、否定側は現場の先生に立って議論を作りました。
誰の立場でジャッジを下すか?
先ほどのテーマについて突っ込んでいきます。
国家・政府から教育員会・文部省、学校(現場レベル)、親の達で判定をしてみました。
すると、こうなりました。
- 政府・国家-子供の身の安全第一。防犯ブザーよりも携帯電話の方がよい。肯定側
- 教育員会・文部省-子供が授業に集中できないため、持たすべきではない。否定側
- 学校(現場の立場)-放課後の子供の管理は学校の責任ではなく親の責任。肯定側
- 親の立場-サイトから料金を請求されて、家計に負担をかけないで欲しい。否定側
さて、誰の立場を優先するべきか?そして、その決定的な理由は?などが試合の判定理由になります。
因みに、この時は政府の立場で判断をして肯定側に投票しました。
教育委員会、学校(現場の立場)、親には、携帯電話を持たせる権限を持っていないからです。唯一、全ての生徒に対して、携帯電話をもたせるように働きかけることができるのは日本政府だけ、という判断です。
その結果、肯定側の負けにしました。
肯定側を負けにした理由
理由は、肯定側の議論では、この部分の説明が一切されていなかったからです。
主人公を「政府・国家」「教育委員会・文部省」「学校(特定の私立学校)」など固定することです。
誰の立場で議論するべきかが明確になるからこそ、意見が違っても立場が同じであるため、お互いの議論が噛み合うのです。
絶対に主人公は必要か?
その気になれば主人公を決めなくても、ディベートの試合は成り立ちます。
ただ、この場合、ディベーター(選手)が積極的に誰の立場で議論をするのかを事前に宣言してから自分たちの議論を作る必要があります。
やジャッジ(審判)にその部分を理解してもらって、その上でディベートの試合をしてもらうため、相当ストレスがかかります。