ディベートの試合で最初に行うのが、立論スピーチです。肯定側であればテーマを肯定する理由を述べて、否定側であればテーマを否定する理由を述べます。この記事では、そんな立論の作り方や上手な伝え方について紹介をしていきます。文章は、10,000文字超えとやや長めですが、ガッツリ読まなくて大丈夫です。
即興ディベートワークショップで教えている内容を元に紹介しております。
まずは、目次を見て下さい。
目次
1 立論とは?
立論とは、「自分たちの議論を提示する」前半のスピーチです。プレゼンテーションのようなものですね。ディベートの試合では、肯定側(否定側)が自分たちの議論を提示して、後半からはお互いの立論の中身を戦わせていきます。ディベートのだいご味は後半の反駁スピーチですが、前半の立論でコケてしまうと、そのあとの巻き返しが大変になるため、以下に立論を作り込むかがキモにもなります。
1-1 メリット・デメリットを出す
肯定側は「メリットがあるからテーマを肯定するべき」と論じます。対して、否定側は「デメリットがあるからテーマを否定するべき」と論じます。これをメリット&デメリット方式といいます。この記事では、そんなメリットとデメリットの上手な使え方についてご紹介していきます。
実際に、具体例があったほうがわかりやすいと思うので、今回はテーマを用意しました。
1-2 仮テーマ-消費税引上げ
メリット・デメリット方式とは、テーマを実行することによるメリットとデメリットを比べて、メリットの方が高ければそのテーマを採用する。すなわち、肯定側に投票。逆にデメリットの方が高ければ否定側に投票する、という考え方です。
近年のディベートで最も主流なのがこのメリット&デメリット方式です。
【備考】誰にとってのメリット&デメリット?
もちろん、消費税を払う側の消費者にとってはデメリットですね。逆に、消費税分の税収を受け取れる政府にとってはメリットです。これだと議論終了!なので、今回はテーマの主人公を日本にしました。日本とは何ぞや?ってところから考える必要があります。今回の仮テーマでは、主人公を国家にました。日本全体にとって消費税upはメリットになるのでしょうか?デメリットになるのでしょうか?
<余談>
この記事を書き始めた2015年は、まだ消費税引き上げの法案はあがっておりませんでした。その点は、温かく見守っていただけると助かります。
2.立論の作り方(プラン、メリット、デメリット)
まず最初に覚えてほしい言葉があります。
プラン、メリット、デメリットの3つです。「ん・・・?プラン」・・・・・はい、ごめんなさい。
言い忘れたわけではありません。あえて、このタイミングで登場させました。
メリットとデメリットを作る前にまずは「プラン」というものを用意して、テーマではなく、プランからメリットとデメリットを出して、そのうえでディベートの試合は進められていきます。
2-1 プランとは?
プランとは、えーまを具体的な実行計画に落とし込んだものです。
例えば、いきなり、「日本は、消費税を引き上げるべきである」といっても、は?って感じですよね?
- 「えっ?消費税を何%まで引き上げるの?10%なの?」
- 「全ての商品・サービスに対して課税するの?」
- 「いつから消費税を引き上げるの?オリンピック後?」
いきなり消費税をあげるにしても、何%あげるのか?いつからあげるのか?その財源はどのように使うのか?が明確でないと、肯定も否定もできません。
だから、そこら辺をしっかりと固めるんです。肯定側が・・・・。
極論かもしれませんが、こんなプランもありなんですよね
2030年に消費税を8.1%に引き上げる
2030年の世界なんて誰もわからないから、否定側が予測していたデメリットがほとんど成り立ちません。こういうのを事前にデメリットを封じるための「スパイクプラン」と言います。またの名、ビックリプラン。
逆に、こんなプランもありです。
明日から消費税を30%にします!
デメリットがたくさん出てきそうですね。(笑)なので、この場合は、それ以上に、なぜいきなり明日に消費税を引き上げるか?その説明が必要なんですね。
「いつやるの!今でしょ!」と言っても、「なんで今やる必要があるんですか?」と突っ込まれるのが、ディベートの世界です。
まとめると、今回論じるテーマが、消費税をあげるかどうかなので、テーマの要件さえ満たしていれば、プランは自由に設定できますね。但し、なぜそのプランが必要で、そしてなぜ有効なのか?この2つを立論を通じて全て解説する必要があるんです。
2-2 テーマをプランに落とし込む-以下その方法
この4つを抑えておくだけでプランは簡単に作れます。
「日本は、消費税を引き上げるべきである」のテーマで一緒に考えてきましょう。
2-2-1 いつから、どの程度、補足事項、例外
<いつから?>
いつから消費税を引き上げるのか?来月、来年、翌年度、数年後?
<どの程度>
何パーセントに引き上げるのか?10%?20%
<補足事項>
消費税を引き上げるに伴い、必要な手続きはとるか?
その他、弊害を防ぐための補足的な政策も実施するのか?
<例外>
課税非対象にする商品・サービスを設けるか
(例)現状では、家賃には消費税は課税されていない
この4つの質問に答えられれば、OKです。それなりのプランはできます。ジャッジから、「具体的にどんな風にテーマを実行したいの?」と突っ込まれはしません。時々、執拗にプランについて重箱の隅をつくジャッジや講師もいますが、「じゃあ、あんたはどう作るんだ!」と逆に質問すれば黙ります。
2-2-2 プランを述べるタイミング
原則、プランを述べるのは肯定側立論です。肯定側第一反駁など、途中からプランを変更することはできません。プランを変更した時点で、最初に述べたプランは不採用とみなされます。もしくは、ニューアーギュメントとして処理されて、そのプランは採用されません。
例えばのお話ですね。
- 立論-2020年に消費税を10%にします。
と立論では宣言したのにも関わらず、否定側から2020年に執行したら、オリンピックの問題でウンタラカンタラ・・・みたいなデメリットを出されたオデ、
- 反駁-それなら、オリンピックが終わった数年後の2023年にしましょう!
とプランを変更してしまえば、2020年に発動する予定のプランはオジャンになったとみなされます。
プランの作り方:ディベート実践編-「テーマ(論題)」と「プラン」の違い・作り方
2-3 プランからメリット・デメリットを出す
プランができたら、肯定側は、そのプランによって生じるメリットを主張します。対して、否定側は肯定側のプランによってのみ発生するデメリットを述べます。
否定側の立場は、「現状維持」が基本です。つまり、「今回のプランを採用すると新たな問題が生じるから採用するべきではない。現状を維持するべきだ」となるわけです。
なお、否定側もいくつかの条件を満たせば、プランを出すことができますが、それは後半で解説をします。
まずは、プランを提示して、どのようにメリットにつなげていくか?その流れを見ていきましょう。
3.肯定側-メリットを作る
先ほど、プレゼンテーションにも型があるように、立論にも型があるとお伝えしましたね。ここからは、メリットの型についてみていきましょう。
まずは図で。
はい・・・「内因性」「重要性」「解決性」・・・普段の生活では絶対に聞かない言葉が出てきましたね。ディベーターたちは毎日この言葉を叫んでうなっていることでしょう。
まずは、メリットの概念について説明をしていきたいと思います。
3-1 メリットとは-問題が解決されるシナリオを作る
メリット=「よいこと」と思っている方が多いようですが、違います。メリットの本来の意味は「問題解決」です。
メリット=問題解決です。
メリット=問題解決です。
メリット=問題解決です。
・・・・しつこくて恐縮です。この視点がないと、プランを採用すると素晴らしい未来が待っていまーすと論じる人が出てくるので、くぎを刺しておきます。
政府も、企業も、解決するべき問題があるから仕方なく行動をするのであって、そもそも問題がなければ何もやりません。
消費税引き上げに関しても同じことが言えますね。日本政府の財政に問題があるため、消費税を引き上げることで、その問題を解決しようとしています。
そして、その問題は絶対に解決せねばならない問題でうs。
だからこそ、膨大な予算を費やしてまで、国会で討議をして消費税引き上げ是非のディベートをしているのです。
3-2 問題解決のシナリオの作り方
先ほど、メリット=「問題解決」とお伝えしました。「問題の提示・分析」「問題解決の重要性を強調」「提案の効果・実証」の3つを行います。これをメリットの3要素と言います。
- 1)内因性:問題の提示・分析
現状何らかの問題があり、その問題は放置していても解決しない - 2)重要性:問題解決の重要性を強調
このままだと大きな問題が起こり、主人公はこの問題を解決するべきである - 3)解決性:提案の効果・実証
プランを採用することで、この問題は解決する。また、プランは実行可能
繰り返しになりますが、「内因性」「重要性」「解決性」とはディベートの専門用語です。現在・将来的に何らかの問題があって、その問題は解決されるべきであり、今回のプランでその問題は解決できるのシナリオにして伝えていきます。
3-2-1 内因性-現状の問題提起をする
現状、潜んでいる問題を指摘します。現状分析と似ているかもしれませんが、中身は全く違います。(それだったら、「現状分析」という言葉を使えばよいわけです。内因性なんて難しい言葉をあえて使ってマウンティングをかける必要もないのです。)
内因性とは、現状何らかの問題があることを指摘したうえで、
- 「その問題は放置しても解決しない」
- 「プランを実行しない限りは解決しない」
- 「テーマを実行していないから問題が起きている」
と、現状の問題とプランを紐づけていく説明の仕方です。
<「日本政府は、消費税引き上げるべきである?」で考えるとこうなる>
- ①現在、日本の財政は赤字です。2015年時点で、国債や借入金等で「国の借金」の残高は、1000兆を超えました。(問題提起・現状分析)
- ②本来は、お金の使い方を見直すべきなのですが、既にそれは困難なレベルです。年金や社会保険料が既に圧迫をしており、税収を増やさない限り赤字は増え続けます。(内因性-問題が解決しない理由-)
①だけだと、財政が赤字だから税収を増やして問題を解決しよう、になりますよね。
すると、否定側から、
国債や借入金が原因なら、そこを減らすほうが先だよね?消費税を上げることじゃなくない?根本治療になっていないよね?
と突っ込まれてしまいます。これでオダブツです。
だからこそもう一歩踏み込んで「おっしゃる通りだけれど、現実的にできないんだから仕方ないじゃん」「消費税を上げるしか問題を解決する方法はないのです」と切り返せす別の論理が必要になってきます。
3-2-2 重要性-解決の必要性を主張する
さて、「問題だー、問題だ―」と叫んだところで、その問題が本当に解決されるべき問題なのかどうかは別の話です。その証拠に、私たちの周りにはたくさんの問題があります。もしかしたら、私たちが抱えている問題は財政赤字1兆円並みかもしれません。でも、その問題を一つ一つ解決しようとはしませんよね。
とりあえず解決しないとヤバい問題から手掛けますよね?
ディベートも同じです。なぜ他の問題は放置していてもOKで、「絶対に解決しなければならない問題がここにある」とさらに堀あ下げて論じる必要があるんですね。
だからこそ、肯定側は、消費税を引き上げないことによって生じている問題は絶対に解決するべきだ!と立証していかなければなりません。
<年金・医療保険等の社会保障の問題で考えてみる>
公務員の人達にとって、年金や社会保険は毎月の給与からしっかりと差し引かれるものであり、自動的にもらえるものです。また、雇用も定年まで保障されます。ですから、率先して解決する問題とは思っていません。
一方で、来年リストラになって収入を失い健康保険料が支払えず、年金がもらえないのではないか?と不安を抱えている人にとっては死活問題です。
このように立場によって、解決されるべき問題は大きく異なります。
<日本の借金は誰にとって不都合か?>
先ほど、日本の借金は1000兆円を超えたという議論がありました。え?日本はそんなに借金しているの?と驚くかもしれませんが、日本は、外国からはなく国民や企業から借金をしています。日本の借金は、国民の資産が成立します。ここがギリシャとの大きな違いです。
ただ、政府にとっては、借金が膨れ上がるのは問題です。だから、お金を持っていそうなところから税金を徴収して、1日でも早く借金を減らそうとしているわけです。
改めて、重要性の話に戻ると、「現状のままだと解決しない問題がある」を「その問題は絶対に解決されるべき」にする作業が必要になります。
ニートの人達に「働かないと将来ヤバいよ!」と言っても、ニートは働きません。親が養ってくれるし、遺産を残してくれると疑っていないからです。加えて、親が亡くなれば、兄弟に頼ればよい。その気になれば生活保護があると信じて疑いません。
<プランの【必要性】と【有効性】について>
説明が複雑になってきたので、一度ここで話をまとめたいと思います。ひとつ前で肯定側はプランを示したら、その【必要性】と【有効性】を示すとお伝えしました。この【必要性】というのが、内因性と重要性を指します。
今回なら、消費税を10%に引き上げる必要性ですね。現状、消費税が10%に引き上げられていないことによって、どのような問題が生じているのだろうか?そして、その問題はどうしても解決されなければならない問題か?の2つについて考えて下さい。
この2つができたら、改めて、なぜ今回のプランでこの問題を解決するのか?【有効性】についての議論を行います。
3-2-3 解決性-プランの効果を実証する
解決性はプラン後を採用すれば、内因性や重要性で挙げた問題が解決することを証明していきます。ここで証明することが2つあります。
- 問題を解決するのか?
- 現実的に実行可能か?
なぜなら、内因性や重要性は、政策を実行しなかった場合のシナリオについて考えるのに対して、解決性は政策が実行されたと仮定して、その未来の話について論じるからです。
例えば、今回の場合は、「プランを採用して、消費税をUPすれば、日本の財政は赤字の危機から救うことができます」と言えばよいわけです。もちろん、「理由」や「根拠」を示さないといけません。
では、消費税を8%から10%にすることでいくらの税収が見込まれるのか?ここが論点になると思います。
解決性の論証①-問題を解決するのか?
消費税を8%から10%に引き上げたら税収がいくらになるのか?という計算ですね。
過去に消費税を3%から5%に引き上げたときに、税収が2兆円UPするというデータがありました。でも、やっぱり過去のデータです。逆に、消費が低迷して期待通りの数字を下回るどころか、逆に税収がダウンするリスクも考えられます。
そんな反駁を予想したうえで、消費税を2%UPすれば、問題は解決していく!と論じていかなければなりません。結構難しかったりします。
解決性の論証②-現実的に実行可能か?
それでも強引に問題解決性を示したら、次はそのプランを現実的に実行できるのかを証明しなければいけません。あくまでプランですね。これは簡単ですね。過去に、3%、5%、8%と消費税を引き上げたら、現実その通りになりましたからね。
逆に、消費税を引き上げて、その税収分を日本の恵まれない子供たちに配る!と論じたければ、現実的にその税収分が日本の子供たちに行きわたるのかをキチンと論証しなければなりません。
参考記事:ディベートのルール-その7.フィアットとは?テーマがShould形式である理由
-まとめ-肯定側立論の作り方
- テーマ(論題)をプラン(具体的な実行計画)に落とし込む
- 問題解決からメリットを出すときは、問題解決を意識する
- メリットの3要素は「内因性」「重要性」「解決性」
色々と仕事が多い肯定側ですが、肯定側立論が上手に作れるようになると、あらゆるプレゼンテーションが上手にできるようになります。学んでみる価値はありますよ!
4 否定側-デメリットを作る
続いて、否定側のデメリットの作り方について説明します。
先ほどの肯定側の仕事を思い出して下さい。主に2つでした。
- テーマをプランに落とし込む
- そのプランからメリットを作る
逆に、否定側立論は、肯定側のプランからデメリットが発生するシナリオを組み立てます。
今回のプランからはデメリット(新たな問題)が発生する。この問題は深刻である。プランを採用するべきでない、と論じるの事になります。
発生過程、深刻性、固有性・・・相変らず聞き慣れない言葉が出てきましたね。そんなに難しく考えず、否定側は、肯定側のメリットと真逆ことをしているだけです。
では、ここからは否定側立論を作成するときのポイントについて解説していきましょう。
改めて、否定側の立場を明確にすると、否定側は現状維持を主張することでテーマを否定します。今回のテーマだと、「消費税を引き上げず8%のままにしておくべきだ」というのが基本的なスタンスです。
- 主張-消費税を8%から10%に引き上げるべきでない
- 根拠-「新たな問題(デメリット)」が発生する
そこで、否定側は新しいデメリットが発生するシナリオを描かなければなりません。
そのシナリオの書き方が、以下の3つになります。
- 4-1 発生過程:どのようにしてデメリットが発生するか、そのシナリオ
- 4-2 深刻性:結果として生じる問題が深刻である(重要性よりも)
- 4-3 固有性:デメリットはプランによってのみ起きる
4-1 発生過程:どのようにしてデメリットが発生するか、そのシナリオ
発生過程とは、「あーなって、こーなって」とデメリットが発生する一連のシナリオを描く作業です。デメリットの作り方は、「え?そんなこと説明しなくても解るだろ!」と突っ込まれるくらい細かく説明することです。
<よくあるデメリットの失敗例>
- 「消費税を10%にすると、色々と問題が起きます」と論じる
「具体的にどんな問題が起きるんですか?」と反論されてアウト - 「消費税を10%にすると、国民の生活が苦しくなる」と論じる
→「本当ですか?どの程度苦しくなるんですか?」、「具体的な説明が全くありません。」と反論されてアウト - 「消費税を10%にすると、経済活動が低迷する」と論じる
→「消費税を5%から8%にしたときに、経済活動は低迷しましたか?」
ビジネスのプレゼンを学んだ人の中がよく犯すミスです。ビジネスプレゼンでは、「要点をコンパクトに伝える」ことを徹底します。ディベートの試合で要点だけをコンパクトに伝えると、
- 肝心の根拠の積み重ねをしていない
- 要点だけ伝え他だけで終わっている
- 専門用語だけで説明しようとする
結果、立論が本の目次のようになります。タイトルだけを箇条書きにしているだけになり、箇条書きした内容の中身を一切伝えていない立論になっています。
<デメリットの考え方-当たり前のことをバカみたいに伝える>
「誰が何をして結果どうなる?なぜ?」をバカみたいに考えることです。下図は、ホワイトカラーエグゼンプションを採用するべきである」というテーマでモデルディベートをしているときのロジックです。
発生勝ての作り方は以下3つがポイントになります。
このロジックは、ホワイトカラーエグゼンプションをすると、ブラック企業が増えて、長時間労働が増える、と論じるだけです。日常の議論であれば、この言い方でも問題はありません。
ところが、ディベートだと、「ホワイトカラーエグゼンプションをすると、ブラック企業が増えて、長時間労働が増える」と一言でと伝えても、「え?なんで?」「どのような論理を積み重ねればブラック企業が増えるの?」と質問を受けます。最悪の場合、「その流れを説明した?」「これだと議論になりません。」と反論されます。
同じように、今回の消費税論題で同じです。
消費税を10%にすることで、
- 1)「消費者の負担が増えて、モノを購入しなくなる」
- 2)「消費者がモノを購入しなくなれば、企業の売上が低迷する」
- 3)「企業の売上が低迷すれば、政府への税収が減る」
という論理を組み立てたければ、1~3の根拠を示さないといけません。
繰り返しになりますが、その場にいる全員はあなたが何を言いたいのかは解ります。ですが、みんなが知りたいのは、どのような根拠を用意したか、です。これが似ているようで違います。
4-2 深刻性:結果として生じる問題が深刻である(重要性よりも)
発生過程が「何が起きるか?」に対して、深刻性は「何が問題か?」です。肯定側の「重要性」と同じように考えてもらっても構いません。
立論のタイミングで、肯定側の深刻性よりも問題である理由を説明できると、後半が戦いやすくなります。
4-3 固有性:デメリットはプランによって「のみ」起きる
固有性とは聴き慣れないかもしれませんね。デメリットが本当にプランによって「のみ」、引き起こるのか、その証明です。肯定側のプランの出方によっては、固有性が必要がない場合もあれば、本当に立てなければならない場合もあります。
先ほどの「英語公用語」と「消費税10%UP」を例にしてお伝えしたいと思います。
3-3-1 英語公用語|プランで設定するTOEICのスコアによってデメリットが異なる
英語を公用語にすると、英語が得意でない社員にとってはデメリットです。ところが、英語公用語もどの程度行うか?によって、デメリットの度合いが変わってきます。
例えば、TOEIC600点とTOEIC900点を義務付けるのではデメリットを出す切り口がだいぶ異なります。そもそもTOEIC取得を義務付けてこないかもしれません。
他にも、「いつから始めるのか?」が挙げられますね。来月からいきなり実行に移すのか、今から2年後に実行する予定で段階的に行っていくのか?によってデメリットそのものがプランから発生しないかもしれません。
3-3-2 消費税10%|現在が8%だとして、+2%によるデメリットを出す
消費税10%は、私たち消費者にとって、デメリットになります。(正直嫌です。)今まで10,800円で買えていたものが、11,000円になわるわけですから。
だからといって・・・「生活が苦しくなる」、「国民の負担になる」というデメリットは、ややザックリし過ぎです。評価はされません。この場合、消費税UPそのものもよりも、消費税が2%上がる「前」と「今」では、具体的に何が変わるのか?そこを論じなければなりません。
以上が固有性の考え方です。肯定側は、極力デメリットが発生しないようにプランを上手く調整してくる場合もあります。否定側にとって、最も難しいところは、肯定側がどのようなプランを仕掛けてくるか解らず、柔軟かつ予測をしなければなりません。
4.まとめと立論の目的を再確認
肯定側、否定側、ジャッジの仕事をまとめていくと以下の通りになります。
- 肯定側の仕事
テーマの範囲以内でプランを設定する。「今回のプランからはメリットが発生する」と論じる - 否定側の仕事
肯定側のプランを採用すると「デメリットが発生するため、プランを採用するべきでないと論じる - ジャッジの仕事
メリットとデメリットを比較して、プランを採用するか否かを判定する。その基準はメリット・デメリットのどちらの方がより大きい・重いかで決まる
ほとんどのジャッジは、メリットとデメリットの大きさ・重さを比較して、肯定側のプランを採用するか否かを決める、と教育されています。これを「メリット・デメリット方式」と呼び、最もシンプルな方法と考えられています。