こんにちは、木村です。いきなりですが、ひとりディベートをご存知でしょうか?
通常、ディベートと聞くと、ひとつのテーマに対して肯定側と否定側で分かれて、双方の議論を戦わせているシーン・もしくは戦っているシーンを思い浮かべると思います。
目の前に必ず対戦相手がいます。
ですが、今回は、この肯定側と否定側をひとりで行うことができる、というお話です。
はじめに
1.ひとりでディベートとは?
いきなりですが、こちらの本はご存知でしょうか?
滝本哲史氏の「武器としての決断思考」ですね。2007年ごろに、氏が理事をしている全日本ディベート連盟に属しており、滝本氏がディベートの効果として挙げられるのは、意思決定力だと論じていました。
どういうことか?実例を2つあげてご紹介します。
例1 転職するべきか否か?
あなたは今の仕事に不満を感じてしまい、転職をしようかどうかを検討しています。そこで転職関連の情報をネットで調べてたり、転職関連の本を買ったり、転職セミナーに参加をするわけですが、中々行動ができません。気づけば、転職する前提でネットサーフィンをしているわけですが、やっぱり行動に移せないわけです。
では、原因は何でしょうか?実は、あなたに行動力がないからではありません。ましてや、勇気がないわけでもありません。原因はたったひとつなんです。
決断をしてないだけ!
- 決断をしないから、行動に移せない
- 行動に移せいないから、情報集めに精を出す
- 気づけば、情報集めの無限ループにハマる
この場合、何が問題なのかというと、決して行動しないことではありません。行動するか否かを決断していないまま、情報収集したり、答えのない問題について考え続けることに時間とエネルギーを費やしていることです。
転職はまさにそうです。逆に、現状に不満があっても人生レベルの不満ではない限り、人は行動しないことを転職業界の人たちはよく知っています。
例2 恋愛編(交際)するべきか?
とりあえず、あなたには意中の相手がいるとします。現時点で付き合っているのであれば、結婚するかどうかで考えてみてください。もしも、片想いでなければ、付き合うべきかどうかで考えてみてください。
いや、結婚(恋愛)は、ひとりでするものじゃないだろ!?と思いますよね?
その通りです。こればかりは相手ありきです。なので、この場合、あなたが決断すべきことは、相手にアプローチを仕掛けるか、否かです。アプローチの方法は問いません。肉食タイプと草食タイプで方法は大きく異なってくるかと思います。
- 肉食タイプ-積極的にガンガン連絡をして要求を伝えまくるプッシュする
- 草食タイプ-ボールを投げまくって、相手が振り向くように色々仕掛ける
もちろん、肉食的に攻めるか、草食的に振り向かせるかは、あなたが選ぶことですし、応じる・応じないはあくまで相手が判断することです。ですが、最初のアクションはあなたが自ら仕掛けないといけません。
先ほどの転職の例と同じように、成功する・失敗するは別として、とりあえず行動するか、否かの決断をします。
2.決断がいちばん重要
転職、結婚(恋愛)、資格取得、独立・起業、子育て、家を買うか、お友達選び、時間の使い方、休日の過ごし方でもなんでもそうですが、人生を充実させるためには、決断をすることが不可欠です。
2-1 決断しないデメリット―3点
他人に決断をさせられる
迷って、悩んでストレスがたまる
非生産的な決断をすることになる
1)他人に決断をさせられる
先ほどの、転職するかしないか、で考えてみましょう。試しに転職エージェントに相談しに行ったとします。さて、エージェントさんはどうでるか?というとあなたが転職をしたがるように猛プッシュするかと思います。あなたに転職をしてほしいからです。
これは、転職に限ったことではありません。お買い物をしているときに、よい商品があり、買う・買わないの決断ができなければ、店員に勧められて購入させられます。売る側のほうがそこらへんは上です。あなたが何が何でもバックからお財布を取り出すようにあれこれ仕掛けてくるでしょう。
2)迷って、悩んでストレスがたまる
決断できない!それ自体が「どうしようか?」と迷う時間が増やし、結果としてあなたのストレスがたまる原因になります。申し上げないことを言いますが、あなたはこの記事を読んでいる時点で、何かに迷っているかと思います。
そして、私は何の迷いもなくこの記事をサクサクとブラインドタッチで書いています。喫茶店で、この記事を書いていますが、喫茶店に歩いてくる途中で、この記事を書くと決断したからです。
もちろん、決断をしている最中は短期的に大きな葛藤が伴いますが、決断をしないほうが時間的にも、精神的にも、生活的手にも大きな葛藤が生じます。
決めるは一時の苦しみ、決めないは一生の苦しみです。
3)非生産的な決断をすることになる
これがいちばん最悪。物事を決断しないままでいることは、「決断をしない」という決断をしているのとイコールです。皮肉に聞こえるかもしれませんが、決断をしないものも決断なのです。考える→決断をしない、の無限ループにハマっているわけですね。
世の中には、あなたの願望・目標(どっちでもいい)を実現するための選択肢はたくさんあると思います。ですが、それが逆に、「あなたを決断しない」という状態を作り上げているのです。
決断をしないことにデメリットはいかがだってでしょうか?
- 他人に決断をさせられる
- 迷って、悩んでストレスがたまる
- 非生産的な決断をすることになる
1,2,3がセットになる弊害は、自らの自由と選択権を放棄して、他人に人生を委ねることになります。もちろん、そのほうが楽だと考える方もいますから、これ以上は何も言いません。
2-2 あなたが決断できない原因
さて、ここからは、あなたが決断できない原因についてお話をします。意外かもしれませんが、あなたに勇気がないわけではありません。情報が足りないわけではありません。頭が悪いわけではありません。(逆に、頭がよい人のほうがハマります)
- 決断の方法を知らない
- 決断のトレーニングを積んだ経験がない
この2つにつきます。
2-2-1 決断の方法を知らない
決断の方法を知らないのは、その方法を誰からも教わった経験がないからだと思います。それは幼少期からです。親は子供に対して、「進路や将来は自分で決めな」と言いますが、決断の方法までは教えてくれません。
野球部の監督は、バントとシングルヒットとホームランの打ち方は教えてくれます。バントを打つべきか、シングルヒットを打つべきか、ホームランを狙うべきか?までの裁量権はくれません。子供は大人の指示に従え!は、日本社会の鉄則のようなものです。
大学受験も同じですね。自ら進路を決断した高校生がどれくらいいるでしょうか?おそらく、学校の先生や親の指示に従って、進路を選んだ人のほうが多いのかと思います。
では、次に行きましょう。
2-2-2 決断のトレーニングを積んだ経験がない
決断のトレーニングを積む機会がないんですね。理由は2つです。
- 意思決定するための本がありますが、それらのほとんどが理論を説いているだけで終始している
- 世の中には、コーチやカウンセラーこそ存在するが、「最後はあなたが決めなさい」と突き放す
そんなものです。
備考-ニートとして生きる決断はどうなの?
前置きをすると、サポステのトラウマもあり、個人的にはニートは好きではありません。ですが、「もう働かない」「ニートとして生きる」と決断をしたのなら、決断思考の点では間違っていません。必ずしも、前向きな決断が良いわけではありません。
私は応援こそしませんが、その決断は立派です。
1-2 ディベートは最初から最後まで意思決定?
ディベートの試合をしているときです。
選手の役割は、ジャッジに意思決定をさせることです。そのために、主張したら理由をごねているわけです。
対して、ジャッジの役割は、意思決定を行い、その理由を選手から納得してもらえるように解説をすることです。原則、ジャッジは、肯定側(否定側)のどちらに投票をしても構いませんが、投票後は必ず説明責任がついてきます。
そして、もうひとつ!試合が反駁スピーチに進むにつれて、選手は複数ある反駁の選択肢のうち、どの反駁をしようか一瞬で判断をしなければなりません。これも意思決定といえば意思決定。
しつこくてごめんなさい。
立論を始める前に、どのような方向性で議論を練るのかを決めなければなりません。これも意思決定です。
まとめると、ディベートは決断を前提に物事を考えていきます。そして、即興ディベートはアカデミックディベートよりも何倍もこの結端を前提に物事を考える思考が求められます。
1-3 但し!リアルでできるかはまた別の話
さて、これまでディベートは意思決定を行う上で最適なトレーニングになるとお話をしてきました。では、実際にディベーターがリアルなシーンでダイナミックに意思決定をしているのか?といわれたら、それを示すエビデンスがないので何とも言えません。
個人的な経験からいうと、日本のディベート業界には保守的な人が多く、ディベーターたちが論じているような創造的な発想やダイナミックな意思決定をする人たちはいない!というのが正直なところです。
ディベート業界の問題なのか、個人の問題なのかわかりませんが、あえて意思決定をしないことが最も合理的な意思決定なのかもしれませんね。(笑)
とはいっても、やっぱり意思決定は大事だと思います。
私も、ひとりでこのホームページを立ち上げたり、即興ディベートワークショップを開くようになってから意思決定をする機会が増えましたからね。
2.意思決定にディベートは最適なのか?
瀧本氏を含め、ディベートは意思決定のトレーニングになると論じている人はいます。で、実際に一人ディベートをして意思決定のトレーニングをしてみたのですが、ディベートがそのまま意思決定のツールとして使えるかとったら微妙なのが正直なところ。まずは、その理由から説明します。
2-1 ひとりディベートをやってみた
こんな感じで過去にひとりディベートをやってみました。左側が目的(あなたが実現したい内容)であり、右側が今から意思決定をする内容です。
- 収入を増やすために、転職をするべきである
- 海外で働くために、英語を勉強するべきである
- 恋人を作るために、合コンに行くべきである
さて、いかがでしょうか?実は、これ意思決定をするうえでいちばんダメなパターンです。この問題を出して、意思決定をしろ!と言われても無理です。
理由1-他にも選択肢に浮気をする
例えば、「収入を増やすために、転職をするべきである」というテーマでまじめに意思決定をしようとしても、他の選択肢に浮気をしてしまいます。
<収入を増やすための転職以外の選択肢>
- 副業をする→副業の方法について調べる→ネットサーフィンをする
- 残業をする→エクセルを立ち上げて、残業手当ともらえる給与を計算する
こうしている間に当初の目的は忘却の彼方。はじめに設定したテーマでディベートをするのではなく、本題がディベートそのものからかけ離れて行き、ほかのより良い選択肢が思い浮かぶ。
<「決断をしない」という決断をしただけ>
- Aさん:「仕事をとるか?それともプライベートをとるか?」
- Bさん:「仕事とプライベートを両立する方法を考えるよ!」
- Aさん:「あ…そう(決断しないことを決断したな)」
このような思考パターンの人は意思決定に向きません。また、このパターンで上手くやってこれたなら、意思決定はする必要はないかもしれません。皮肉ではありません。
ディベートをしていると、このパターンの意思決定がものすごく下手になります。
理由2-意思決定の内容が努力目標で終わる
先ほどの3つの意思決定を見て、「具体的に何をするの?」と思ったら正解です。全部、努力目標なんです。
- 収入を増やすために、転職をするべきである
- 海外で働くために、英語を勉強するべきである
- 恋人を作るために、合コンに行くべきである
どう見ても具体的ではありませんよね?仮に、この決定にYES I DOと答えても、数分後に何から手を付けてよいのかわからず、意思決定こそしたものの、その次の行動につながりません。
<とりあえず、具体化してみる>
では、さっそく英語を勉強するべきである、を具体化してみましょう。
- 実際に海外で働いていた人に会う(いつ、どこで、どうやって)
- 英会話スクールに申し込む(予算の上限額、スケジュールの確認)
- インターネットを開きTOEICに申し込む(日程を確認する)
- 英語の勉強計画を立てて現実的にこなせるかを判断する
さて、いかがでしょうか?思い付きで書いてみましたが、こんなものでしょう。
意思決定をする以前に、情報収集や事前の段取りがたくさんあることに気づかされます。調べているうちに、途中で嫌になり、ギブアップしてしまいます。
ここではしつこいくらい教えている、メリットvsデメリットの方程式です。以下の手順です。
①メリット・・・得するかどうかで考えてみる
内因性・・・「それ」をしたい理由はあるのか?悩みがあるの?
重要性・・・絶対に「それ」をするべき決定的な理由は?それほどヤバいのか?
解決性・・・本当に「それ」をすることで、悩みが解決するの
②デメリット・・・損するかどうかで考える場合
発生過程・・・「それ」をしたら本当に問題が発生するのか?
深刻性・・・本当に「その問題」はヤバいことなのか?
固有性・・・もう一度細かく考えて、「その問題」が発生するのか?
③適当に反論をしてみる・・・どれかひとつがゼロになっていないか?
ここら辺からは、ロジックが必要です。先ほど、作った内因性、重要性、解決性、発生過程、深刻性、固有性に真っ向から反論をしてみて下さい。
- 内因性・・・悩みはない、時間がたてば解決する
- 重要性・・・大きな問題でもなく、解決する必要もない
- 解決性・・・どうせ解決しない、解決をしても焼け石に水
- 発生過程・・・おそらく、その問題は起きない
- 深刻性・・・仮に起きても大したことではない
- 固有性・・・もう一度考えたけれど、今回だったら大丈夫
無理をしてでもいいから、とりあえず理由を用意するのがポイントです。
④反論をした後に立て直す
先ほどの反論に再反論を加えたり、反論された部分を補強してみて下さい。もう一度考え直すイメージですかね。
- さっきの反論は間違っていたかもしれない
- ちょっとは問題があって、それを実行すればもしかしたら解決するかも
- 大した問題ではないけれど、もしかしたら発生するかも、面倒かも
おそらく、メリットもデメリットも少しは生き残るはずです。ディベートでは、上記の3+3の6要素のうちどれか一つがゼロになれば、全てがゼロになると教えました。
ところが、実際の悩みや問題はそのとおりにいきません。人生そんなものです。なので、極力小さくしてみるイメージを持って下さい。
⑤最後に決着をつける
最後に生き残ったメリット・デメリットをぶつけてみて、どっちの方がより大きいか、重いかを判断してみて下さい。
これをセルフディベートといいます。私が日々実践していることです。
「デメリットの方が大きかった。メリットがゼロになった。これをすると損だ!でもしたい!諦めたくない」・・・という感情に突き動かされたのなら、それは論理よりも感情の方が上回った証拠であり、あなたが本当にしたいことです。
損得勘定を抜きにして、迷わずチャレンジをしましょう。ディベーターは、ここで強引に論理をベースにした判断を優先させますが、あなたはディベーターではないはずだから。
要するに、そういうことです。やりたいことをやればよいのです。
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