「美しく勝つ」を切り口に否定側の戦略を紹介していきたいと思います。否定側を担当していて辛いと感じることは、肯定側立論が終わるまでにどのようなケース(プラン&メリット)であるかが予想できないことです。
なので、否定側は、幅広いアドリブ力が肯定側よりも試されますが、それは最初だけです。最初の切り口さえ見つかれば、あとはお決まりのパターンで議論展開が可能です。そんな否定側の戦略-議論展開-のパターンを紹介していきたいと思います。
0 はじめに
1.否定側チームの特徴
肯定側は、チーム全員が議論の方向性や戦略を共有するのが望ましいです。対して、否定側は各々が自分の役割を理解して、自分の裁量でスピーチをすることが求められます。
1-1 否定側第二反駁は「ボス」になる
否定側の役割(立論、第一反駁、第二反駁)をまとめるとこのようになります。
- 否定側立論:議論を作る人
デメリット、ケースアタック、カウンタープラン、トピカリティーを出して、全体の戦略を提示する
→立論の作り方については、否定側立論の作り方を参照下さい - 否定側第一反駁:攻撃をする人
肯定側の立論(内因性、重要性、解決性のいずれか/全てに)に反論をしてメリットをゼロにする
→反駁のポイントについては、ジャッジの視点-メリットをチェックする方法を参照下さい - 否定側第二反駁:判定理由を伝える人
これまでの議論を整理して、ジャッジに投票するべき理由を示す。+α立論&第一反駁担当者に指示を出す
否定側第二反駁担当者がボスのようなものです。否定側立論担当者と否定側第一反駁担当者に対して指示を出した方が結果として上手くいきます。
もちろん、「ボス」といっても、チームの中で偉いわけではありません。チームにおける「役割」でしかないことを認識して下さい。
1-2 指示を出すのも否定側第二反駁の仕事
もしもあなたが否定側第二反駁担当者(ボス)なら、フォロワーである否定側立論と否定側第一反駁の仕事をキッチリと振り分けて下さい。
- 否定側立論:自分たちの立場を明確にした議論を提示させる
- 否定側第一反駁:肯定側の議論にひとつでも多く攻撃をさせる
と、このように「守り」と「攻撃」をキッチリと分けて、立論と反駁の方向性は必ず共有して下さい。否定側立論担当者と否定側第一反駁担当者は、チーム内でコミュニケーションをとる必要もありません。ボスにエスカレーションをしましょう。
そういう意味では、ディレクターに近いポジションかもしれません。
さて、そんな組織論の話を終わりにして、そろそろ戦略のお話に行きましょう。
2.否定側の反駁は2つの戦略
図のとおりです。(ちんぷんかんぷんだったら申し訳ございません)
否定側の基本戦略では、立論と第一反駁で一つでも多くの議論を出して強固なネガティブブロックを作り上げて下さい。肯定側第一反駁にプレッシャーを与えることです。
必ず肯定側第一反駁は、どこかの論点を落とします。すかさず拾って、ジャッジにアピールをして、次の肯定側第二反駁を黙らすことです。
この戦略をネガティブブロック+エクステンドと言います。
- 2-1 ネガティブブロック
- 2-2 エクステンド
それぞれを簡単に見ていきましょう。
2-2 ネガティブブロック-肯定側第一反駁にプレッシャーを与える
必ず肯定側は、反駁をし忘れてどこかの論点を落とすと思って下さい。そして、その論点を見極めて、すかさず次の第二反駁でジャッジにアピールをして、次の肯定側第二反駁で黙らせましょう。
ネガティブブロックの概念を理解する前に、否定側立論、否定側第一反駁と肯定側第一反駁の3つのパートについて見ていきましょう。
- 否定側立論-4分
デメリットは必ず複数提出する、他にもカウンタープラン、トピカリティ、ケースアタックを打つ - 否定側第一反駁-3分
肯定側のメリット(内因性、重要性、解決性)の3つ全てにアタックをする - 肯定側第一反駁-3分
たった3分で、否定側立論4分と否定側第一反駁3分の議論に対応しなければならない。
これが意味するところは、肯定側第一反駁は3分しかありません。この3分以内に、4分の否定側立論と3分の否定側第一反駁で提出された議論に対応をしなければなりません。つまり、3分で計7分の議論に反論をしなければならないということです。
正直、キツイ・・・というより普通に考えて不可能に違いですよね?この不可能に近いことを強いられるのが肯定側第一反駁だと思って下さい。
2-3 エクステンド-肯定側が落とした論点をジャッジにアピールする
肯定側第一反駁の担当者が、「反駁し忘れた」、「反駁が思いつかなかった」、「忙しすぎて反駁ができなかった」がひとつでもあればチャンスです。
反論をしていないのだから、その論点は認めたと、ジャッジにアピールをしましょう。以下のことを意識しましょう。
2-3-1 ニューアーギュメントとレイトレスポンスの対策は絶対に行う
特に第二反駁ではニューアーギュメン(新しい議論)とレイトレスポンス(遅い反駁)がたくさん出てくると思って下さい。
肯定側第二反駁担当者がディベートのルールを十分に解っておらず、最後のスピーチで今までの議論をひっくり返すかの如く行う場合もあります。
- 「論点●●に反論はされていませんでした。よって、この論点は肯定側は認めたと考えて下さい。」
- 「●●という反論はありましたが、××の論点には反論がされていませんでした。伸ばして下さい。」
- 「これ以降の反論は、レイトレスポンス(遅い反論)になります。カウントはしないでください」
肯定側第一反駁で落とした論点があれば、迷わず必ずジャッジにアピールをして下さい。ジャッジは、ニューアーギュメントやレイトレスポンスの概念は知っていますが、試合の中でひとつひとつを判別できているわけではありません。気付いていない場合もあります。
ジャッジの判定ミスが原因で、本来だったら無効となる議論がカウントされてしまい、負けになったら、泣くに泣けません。必ずレイトレスポンスとニューアーギュメントは厳しくチェックをして、ジャッジに伝えるようにして下さい。
2-3-2 投票をしてほしいポイントは、1点集中でジャッジに伝える
それでも、この次の肯定側第二反駁担当者は好き勝手にスピーチをすると思って下さい。そして、ジャッジ経験の浅い人は、最後の肯定側スピーチの勢いに流されてしまいます。
否定側第二反駁担当者は、肯定側第二反駁担当者がどんなに素晴らしいスピーチをしても覆せないくらいの勝ち筋をひとつでもよいので残すイメージで最後の議論に取り組んで下さい。
総合的に勝とうとする必要はありません。一点集中で「ここだけは絶対に負けない!」という論点を残して、ジャッジにアピールをすることを心掛けて下さい。
もちろん、勝ち筋が複数あるのなら、できる限り伝えましょう。
最後に
否定側の基本戦略については以上になります。文章だけだとどうしてもわかりにくい部分があると思うので、無理をして頭で理解しようとせずにまずは実践をしてみて下さい。
ここで紹介をした否定側の戦略については、アカデミックディベートでも実践可能です。