ディベートは、相手選手を言い負かすのではなく、第三者を説得させることである、とお伝えました。
では、どのように話せば第三者(ジャッジ・観客)を説得できるのでしょうか?
その答えは論理を構築する!なのです。
では改めて、論理とは何でしょうか?論理的とはどういう状態でしょうか?最近流行りの論理的思考力とは何ができる状態でしょうか?
「論理」を意識する瞬間
- 「論理的じゃない」とハッキリと言われた
- 「何が言いたいか解らない!」と注意された
- 「え、なんでそうなるの?」と質問された
はじめに
1.論理・論理的とはどういう意味?
で、そのときにふとこう考えてしまうのです。「え・・・論理的・・・ってどういうこと?」
ロジカルシンキング(logical thinking)とは、一貫していて筋が通っている考え方、あるいは説明の仕方のことである。
ロジカルシンキング - Wikipedia
1-1 根拠がある主張のこと
ディベートにおける論理的とは、主張に対して根拠があることです。根拠と主張の筋道こそが論理になります。
たとえあなたがほめ上手で、口がうまくて、どんなに相手の心を動かすような一言を述べても、その主張を支える根拠がなければ多くの人から賛同は得られないでしょう。
結構ショッキングですけれど、同じチームの人も納得してくれません。
「あなたが主張したいことは解るけれど、根拠がないよね?これだと反論されるよ。」と言われます。同時に、根拠と主張の間に筋道がどの程度あるかで議論を行っていきます。
1-2 以下の問題は筋道が通っているか?
問題を二つ出します。以下の説明は筋道が通っているでしょうか?
問題1-お金がない→仕事をする
この問題でお伝えしたかったポイントは、より正しい筋道です。確かに、お金がないのなら仕事をするは、一般論としては当たり前かもしれません。ですが、本当にお財布の中に1円もなければ仕事もできません。
ですから、大雑把にみれば、この論理は正しいのですが、もしもお財布の中に本当に1円もないことが立証されたら、「お金がないなら仕事をしろ」という根拠と主張との筋道は成立しないことになります。
問題2-上司から「論理的思考力がない」と上司から注意された→ディベートを学んで論理的思考力を身につける
さて、この筋道は正しいでしょうか?これはよく皆さんから相談されることです。
「説明が論理的ではない」という指摘を上司から受けたことは、誰もが経験していることです。ただ、ここでも注意が必要で、そのときに、どんな説明が抜けていたから「論理的ではない」と注意された原因としかるべき対策の筋道ができていないと、「そうだ!京都へ行こう」「いつやるの?いまでしょ!」のノリになります。
まとめ
- 「AだからBである」、といったより正しい道筋
- 正しい道筋もキチンと検証すれば正しい道筋ではなくなる
- 情報が足りていないかどうかも検証する必要がある
- 論理的か論理的じゃないかを判断をするのは人である。
では、次章です。
2.ディベートの論理-根拠、主張、論拠の法則
より説得力のある議論をするために考えるのは、根拠、主張、論拠の3つです。この3つの論理のブロックのことを3角ロジックと呼んでいます。
3角ロジック
- 根拠(Ground):
主張を裏付けている理由。事実や出来事を論じる形で主張を立証していく。「なんでそうなるんですか?」「本当にそうですか?」という質問に答える - 主張(Claim):
根拠から展開されたいちばん言いたいこと「~~~だと考えてください」「~~~をして下さい」と終わるのが望ましい。 - 論拠(Warrant):
根拠が主張を支えている理由。必ずしも明示的ではなく、暗黙の前提として機能していることもある。
では、根拠、主張、論拠がどんなものかについて解説をしていきます。
2-1 根拠-主張を裏付ける理由
説得力の高い意見を述べるためには、主張をしたら根拠を述べることは鉄則です。ですが、その主張を裏付けている根拠が弱ければ、説得力そのものが弱くなります。では、弱い根拠がどんなものかを見ていきましょう。
●ある面接講座にて
あなたは転職を希望しています。ある面接講座に参加をしたときに講師の方がこういいました。
面接で大事なのは、話の内容よりも第一印象のほうがよっぽど大事です。メラビアンの法則はご存知でしょうか?メラビアンはある実験をして、人が話したときの印象は、7%が声、38%が声の大きさやトーン、55%が表情や見た目だといいました。よって、この実験からもわかるように、話す内容よりも話し方や第一印象です。
さて、いかがでしょうか?講師の方は、メラビアンの法則を根拠にして面接では内容よりも話し方のほうが大事だ!と主張しました。では、この根拠がどれくらい説得的なのかを見ていきましょう。
やや話がメラビアンの法則に行きましたね。ですが、これは本題ではありません。ここで本当に問いたいのは、主張をしたら、とりあえず根拠を示すことの重要性です。メラビアンの法則が本当に根拠として適切なのかは改めて議論をするところですが、ここで問いたいのは、まずは根拠を示さない限りどんな主張をしても認めてもらえないということです。
加えいて言うなら、この講座でもただ単に「第一印象は大事ですよ」というよりも、「メラビアンの法則がある」と根拠を示して主張したほうがより説得的になるということです。
2-2 主張-根拠から展開されたいちばん言いたいこと
さて、いちばん言いたいこととはどういう意味でしょうか?先ほどは、メラビアンの法則を根拠に声のトーンや第一印象の方が大事ですよ、ということを論じましたね。では、「声のトーンや第一印象の方が大事ですよ」は主張になるでしょうか?
本当の主張とは、あなたがいちばん言いたいことです。日本人は、あえて物事をはっきりと言わず、間接的に要求を伝えますが、ディベートではジャッジや観客に対して「どのように考えるべきなのか!」「何をしてほしいのか!」をはっきりと伝えない限り、その主張は通りません。
ジャッジや観客に対して指示を出そう
- 「肯定側(否定側)の議論は論理が破たんしています。→カウントしないでください」
- 「~~よって、今回の試合は肯定側のほうが否定側よりも勝っています。→肯定側に投票してください」
- 「先ほどの反論は論点がかみ合っていません(以下理由)→試合の結果に反映しないでください」
ジャッジや観客に指示を出すことに抵抗感を抱く人は多いようですが、ジャッジや観客はどのように議論を分析してよいか、判断してよいか迷っています。ディベーターの方から積極的に議論をリードしてもらえると助かるわけです。
これは仕事でも一緒ですよね。上司の指示が曖昧だと部下は何をしてよいのかが解らず困るばかりか、意図せぬ行動をとるかもしれません。
だからこそ、主張は的確に何をしてほしいのかを示すようにしてください。
ちなみに、私が参加したその面接講座では、メラビアンの法則を教わり、「お手元の割りばしを加えて声を出してください」という指示を受けました。
3.3角ロジックの練習問題
2つほど記事を書きました。
転職をテーマ
A美さんとD子さんの転職物語です。
恋愛がテーマ
異性から「好き」と言われたときに、この「好き」の意味について根拠と主張で読み解いていきましょう。
最後に!論理では人は動かない
ディベートにおいては、「論理」においてジャッジ・観客から同意を得て、票を勝ち取るしかありません。共感や感情ベースの同意はご法度。ジョブズは、多くの人に感動や気づきを与えることができました。小泉総理やオバマ元大統領は、シンプルなフレーズで国民から好意的な反応を得ることができました。時々、ディベート講師が、有名スピーカーの写真を掲載して、ディベートの権威をあげようとしていますが、私たちは、どれくらい彼の論理に動かされたでしょうか?
・・・実は論理では動かされてないんですよね。(笑)
その証拠に・・・ディベート業界の永遠の課題は、人々にどうやってディベートに興味を持ってもらうか?だったりします。論理を極めた人たちですら、自分たちが得意とする論理を応用して、人を動させないわけです。これってなんか矛盾していますよね?