モチベーションと賃金の関係についての3つの質問

2016年3月1日

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ハーズバーグ先生の質問3つ

ハーズバーグのモチベーション論「衛星要因」「動機づけ要因」解説をしていきます。はじめて訪問をした方は、「マズローの5段階欲求とハーズバーグの二要因理論の限界点」を参照してください。

ここではモチベーションとお金の関係についてお伝えしていきます。ディベートの試合で結構議論になりそうなところなので、リサーチと経験と独断と偏見でまとめてみました。

即興ディベートワークショップ2019

はじめに

1.「衛星要因」「動機づけ要因」についてのおさらい

ハーズバーグ先生

左下の赤い部分は、「不満足」を招いた要因です。対して、右側の「満足」を招いた原因が動機づけ要因になります。ハーズバーグは、この2つの欲求を別々に考えていました。

はじめて訪問をした方は、「マズローの5段階欲求とハーズバーグの二要因理論の限界点」を参照してください。

 

即興ディベートワークショップ2019

2.賃金とモチベーションの関係について

お金とモチベーション

ハーズバーグの「衛星要因」と「動機づけ要因」の2つが理解できたところで、ちょっと問題を出します。一緒に考えていきましょう。

  • 年収1,000万もらっている人はモチベーションが高いのか?
  • 高い給料払っているから必死に働け!は通用するか?
  • モチベーションが高ければ低賃金でもOK?

【質問1】年収1,000万もらっている人はモチベーションが高いのか?

ハーズバーグの理論で考えるのなら、年収1000万そのものはモチベーションを上げる理由にはなりません。

年収1,000万の人でモチベーションが高い人がいたとしたら、それは年収1,000万を受け取っているから、モチベーションが高いのではなく、給料が安かった頃からモチベーションが高かった。人の数倍仕事に励んだ。結果、年収1,000万をもらえるまでになった、と考えるのが自然でしょう。(因果関係の法則)

給料・賃金に対しての評価|金額ではなく数字の意味
給料・賃金が満足向上につながるケースもあります。「私は、会社から評価されているんだ」と承認欲求を満たすことができます。金額よりも、その先にある数字に意味を見出している人でしょう。

年収1,000万に限らず、賃金と動機づけはどこかでつながっていますが、どこでつながっているかをキッチリと理解していないと、何となく給料を上げるだけの施策になります。

【質問2】高い給料払っているから必死に働け!は通用するか?

一時期には効果があっても、長くは続きません。これは過去の事例や統計で証明されていることです。何よりも、おそらくあなたもお金は欲しいと願っていても、心のどこかでは「いくらお金をもらってもやりたくないことはやりたくない」と思っているはずです。

テイラー主義とフォーディズムの衰退

豊かな大衆はもはや、単純労働に耐えられない。

多くの新人従業員が、試用期間だけで工場を去りました。まさにチャールズチャップリンが映画「モダンタイムス」(1936)で風刺した、あの光景そのものでした。皮肉なことに、日給5ドルという高級は、「単純作業」という名の精神的苦痛への対価だったのです。

経営戦略全史

テイラーやフォード達の「賃金さえ上げれば、従業員たちは仕事に頑張って打ち込んでくれる」と思い込んでいました。これは自分たちが豊かになりたい、と思い続けていたからでしょう。それを他の人たちに大衆にも当てはめてしまったのです。

とはいっても、やっぱりお金がたくさんもらえるなら、会社の文句は言ってもやめずに働き続けるでしょう。

ただし、経営者が従業員に期待する以上の、コミットメントは現場からは生まれません。

せいぜい、「まー、仕事はつまらないけれど、お金が欲しいよね」「給料を下げられない程度に、クビにならない程度に、働くか」という程度です。

既得権を必死に守ろうとするインセンティブの方が前面に出てしまいます。政治家たちですね。

ところがちょっと不思議なことに、「給料を倍にするから2倍の結果を出せ!」といっても皆頑張りませんが、「仕事の量を半分にしてやる。但し、給料も半分だ」というと不思議なことに頑張り始めます。(プロスペクティブ理論)

金額ではなく、金額の意味付けが大事?

もしも賃金や待遇を理由にして、従業員たちの心に火を付けたければ、その金額の意味を伝えて、納得させることです。そして、どうすれば時給が上がるのか、その方法論を言葉にして伝えることです。

例えば、派遣会社の担当の人が、派遣社員の人に時給を提示したときとを想像してみて下さい。

  • 「あなたの時給は1500円です」と金額を提示するだけ
  • なぜ1500円なのか?その理由をしっかりと説明できる

さて、どちらの方が、「頑張ろう!」という気になるでしょうか?

前者よりも後者の方が、心から頑張ろう!チャレンジをしよう、という気持ちが湧いてきます。もちろん、説明の仕方にもよると思いますが・・・。

これは商品を販売するときも同じかもしれません。コートを10万円で販売したいのであれば、10万円の値札を貼るだけで買うでしょうか?おそらく、買いません。なぜ10万円なのか、その価値を伝えて、お客さんは理解をしてくれて、納得をしてくれて、はじめて買います。

数字はどこまでいっても数字です。その数字にどんな意味付けができるのが伝え手のテクニックにもなります。

ただし・・・その人に説明するべきかどうかを見極めて下さい。どんなに「あなたの時給はこういう理由でこの金額なんだよ」と熱心に説明しても、「別にお金さえもらえればいいよ。そういうの(金額の意味)を求めていないからー」という人には馬の耳に念仏です。

 

【質問3】モチベーションが高ければ低賃金でもOK?

何だかブラック企業臭がぷんぷんしますね。(笑)

ある本にこう書いてありました。

ベンチャー企業の報酬はお金ではなく仕事そのもの

ベンチャー企業は、できる人には責任重い仕事を積極的に任せよう、という社風があります。お役所仕事が嫌いな若者にとって、ドンドンと新しい仕事を任せてくれるのは、成長実感をリアルタイムで感じられ、承認欲求も満たせるため、心に響くのでしょう。

無報酬の方が満足度が高い

実際にある実験では、賃金が低い仕事の方がそうでない仕事よりも満足度は高い、といった実験もあります(認知不協和:社会心理学-認知的不協和とは?byレオン・フェスティンガー

ブラック企業を肯定するわけではありませんが、高給取りでもないのにかかわらず過酷な労働に耐えられるのは、そこで働いている人たちがお金以外のことで働くインセンティブを感じているからです。

このメカニズムを利用してか、楽しい仕事を与えたり、褒めまくって、動機付けをするのが高い給料を払わず動機づけを上手にする経営者もいます。スティーブジョブズもその一人ですね。

 

冷めたらアウト?

では、お金以外のところで従業員たちに対する動機づけができていれば、低賃金で働かせてもよいのか?という議論も生まれそうですが、その通りです。

別に給料なんていくらでも、この仕事にやりがいがあるから続けるんだー、と思っている人もいるでしょう。

ところが、この考え方は危険です。

もしも「仕事が好き」「やりがい」が感情だけで、動機づけをされているのなら、「好き」「やりがい」が一瞬でも冷めたら、不満しか残りません。

恋愛にたとえてみましょう。想いを寄せている相手が欠点だらけでも、本当に好きならずっと一緒にいたいはずです。だから、欠点も我慢できます。それすらも好きになるかもしれません。

ところが、「好き」という気持ちが少しでも冷めたら、今度は欠点だけが目立つようになり、相手の欠点を指摘するようになり、気持ちも離れていくでしょう。

それと同じです。仕事に対する満足度も同じです。

「この仕事は楽しい」「達成感を感じる」「認められている」と感情に対する働きかけが強ければ強いほど、その感情が覚めたときに思わぬしっぺ返しを受けることになります。

 

3.結論:モチベーションについて再考

モチベーションと賃金の議論はよくされますが、一方でモチベーションと賃金について議論をすることを真っ向から「するべきでない」と批判をする人もいます。

モチベーションは上げるな

ソフトブレーンという会社を創業者:宋文洲の渾身の一冊です。コンサルタントとして10年以上仕事をしたなかで、「モチベーションを前面に押し出している会社ほど業績が悪い」とプロジェクトX論者に真っ向からアンチテーゼを放っています。

経営者やマネージャーが本当にするべきことは、従業員のモチベーションを上げることではなく、進捗を管理することであり、究極的には業績を向上させることである、ということがツラツラと説かれています。

何が言いたいかというと、モチベーションが低くても会社さえ回って入ればそれでよいということです。似たような経営方針を打ち出しているのが、AMAZONです。マンパワーに頼らず、誰がどんなことをしても、業務が回るようにマニュアルを整備して、進捗を管理するシステムを確立させるほうに力を置いています。

テイラー時代に逆戻りをしていますね。

歴史は繰り返す。

 

 

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運営者情報

フリーランスのウェブデザイナー。元ディベート好き。30代でニートになる。2015年に本サイト:インプロ部がヒットして、副業ディベート講師として活動。 ホームページをゼロから収益化した実績が認めれ、35歳からウェブデザイナーになる。ウェブ制作会社・デジタルマーケティング会社を渡り歩き、複数社で経験を積み、現在はフリーランスのウェブデザイナーとして活動中。セミナーやオンライン相談の実践者として、現在は個人事業主の方向けにディベートやWordPress制作×集客を教えている。事業者の専門性をカタチにしたいと考えて、屋号は木村専門研究所に変更

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