今回のテーマは「人を動かす!」です。
いきなり質問ですが、あなたは人を動かすことに興味がありますか?
私はあります。
即興ディベートに興味を持ってもらわないことには、何も始まりませんからね。また、ウェブデザイナーとして働き、ホームページで顧客から関心と行動を獲得するために、どうやったらいち個人でも影響力を高められるのか?については毎日のように考えています。
何をいうか?で人が動くのはディベートの世界だけです。リアルの世界では、誰が言うか!のほうが何倍も重要なわけです。
もくじ
1.影響力の武器とは?
米国の心理学者:ロバート・B・チャルディーニが書いた承認誘導心理に関する本です。人が思わず説得されるには様々なテクニックが使われているという内容です。
その手口をひとつひとつ暴露しています。
経営者やマーケッターが絶対に人に薦めたくない本とも言われていますね。
2001年に販売されてから、200万部を超えるベストセラーになりました。27ヶ国語で翻訳されました。
もともとはセールス、募金集め、相場師など「承認誘導のプロ」の手口から一般人を守るために書かれた本でした。
ところが、手に取ったのは、善良な一般市民ではなく、承認誘導をお仕事にしている人達でした。
2.ロバートBチャルディーニ-影響力の武器から学ぶ6つの力
影響力の武器-6つの力
- 1.返報性|人は親切に報いようとする
- 2.好意|人は、好感度を抱いた相手にはイェスと答える傾向が高まる
- 3.コミットメントと一貫性|人は、自分の行動に対して筋を通す
- 4.希少性|人は、何を希少だと見なすと、価値を高く評価する
- 5.権威|人は、専門家や権威のある立場の人の判断に従う
- 6.社会的証明|人は、他の人と同じことをしようとする
1-1 影響力の武器がてんこ盛りに使われている状態
Aさんは英語を勉強するために、外国人がたくさん集まる英会話サークルに参加をしました。そのサークルは喫茶店で行われていて、コーヒー代さえ払えば参加費は無料です。Aさんは、その会に参加をしてリサという女性に出会いました。リサは青目で金髪の外国人女性。英語の発音もネイティブそのものです。まさに日本人が理想とする金髪女性。リサは、Aさんに対して凄くやさしく、そして親切でした。リサと数時間ほど英会話を楽しんだAさん。AさんのToeicの点数は、700点。会社では英文メールを打つばかりで外国人と会話をする機会がありません。そんなAさんにとって、リサとの会話は思う存分英語が話せて、心の底から楽しめる時間でした。楽しい時間もつかの間。サークルの時間は終了。Aさんは、リサに対して、"I wish I could talk with you more!"と一言告げました。すると、リサはこう切り返します。"Fine! I am working as English Teacher in this town. If you want to study English more, why don't you join our English School? Many students joined today. So, this is the last chance for you!※訳:ええ。いいわよ。私ね、この町で英語の先生をしているの。もしも英語をもっと勉強したかったら、あなたも入会しない?今日はたくさんの生徒が入会したから、最後のチャンスになるけれど・・・"と言われて、入会費がいくらかを確かめもせずに入会の手続きをしたAさんでした。
この一連のやり取りの中に、影響力の武器によるセールストークはたくさん仕込まれています。
- 返報性-無料で参加をしたのに凄くやさしく対応してもらったこと
- 好意-リサさんが物凄く高印象で神対応だったこと
- コミットメントと一貫性-「もっと英語を話したい」と思ってしまった。
- 社会的証明-「たくさんの人が申し込んでいる!」という一言
- 権威-日本人はアメリカ人に対して潜在的にコンプレックスを抱いている
- 希少性-ひと枠と同じチャンスは二度と来ない!というとどめの一言
これで一発。
では、6つの力について解説をしていきます。
1.返報性の原理|人は親切に報いようとする
人は、親切に報いようとする。人を助ければ、その人はあなたを助けるだろう。例えば協力的な態度で接すれば、相手も同じ態度であなたに接する。
「お返しのルール」ともいえますね。人は、親切にされたり、助けられると、恩を感じます。それ自体が、大きなパワーを持ちます。
大手の求人会社ほどサポートやフォローが手厚いからね。
結果、お客さんがつくのよね。
では、なぜ親切にされるとお返しをしたくなるのか?
この返報性の原理には、2つの心理的負担が働いています。
返報性の原理が与える心理負担-その1「薄情な奴とは思われたくない」
人から薄情なやつとは思われたくないし、自分自身も薄情なやつとは思いたくないという心理を持っています。
■クーレンツの実験
数年前、ある大学供給が、全く面識のない人たちにクリスマスカードを送るという実験をした。送られた人達のほとんどは、教授が何ものかも確認せず、自分もカードを送ってしまった。-社会科学者クーレンツの実験より-
日本でも年賀状を受け取ったら、送り返しますよね?もしくは来年からは、その人に贈ろうと思いますよね?
で、これが凄くめんどくさいけれど、
- 頂いたんだからこっちも送り返さないと相手に悪いな?
- 年賀状を頂いたんだから、送り返すのがマナーだよな?
と感萎えてしまうわけです。
ここで返報性の原理がメチャクチャ働いています。
実験参加者のふりをした研究員と本物の実験参加者の2人を部屋に入れ、作品を評価させる実験がありました。休憩時間に、研究員たちは部屋を出て行く。そして、自分の分と相手の分の2本のコーラーを持って帰ってくる場合と、持ってこない場合の2つのバージョンが実施された。
作品の評価が終わると、研究員は実験参加者に頼みごとをする。
「実は抽選権が売っているんだけれど、売上が最も高ければ賞金として50ドルもらえるんだ。協力をしてくれないか?」
すると、コーラを貰った人は、研究員に対して狩りを感じ、抽選権を多く買った。その枚数は、コーラを貰っていない人の2倍だった。
心理学者リーガンの実験より
このように、先に何かを受け取るとほとんどの人は何かを返さなければならないと心理負担を感じるのです。
返報性の原理が与える心理負担-その2「恩義は断りにくい」
大抵の人間は一方的に恩義を受け取ることに心理負担を感じることは解って頂けたかと思います。
では、受け取るのを断ればよいのでは?と思いますが、それが中々できません。
無料で受け取れるのに断る理由を考えなけばならないからです。「無料で差し上げるのに何で受け取ってくれないんですか?」という質問にあなたは答えられるでしょうか?
これを上手に利用しているのが、新商品を販売するときに、無料サンプルを配布するマーケティング戦略ですね。
プレゼントだから、渡された客は返報性の魔法にかかる
スーパーやデパートの食品コーナーの試食販売も同じです。食べた後にその場を去ることに抵抗を感じます。そして、特に美味しいと思わなくても、気がつけばその商品がかごに入っています。
ただ、注意してほしいのは、あくまで「相手が恩を感じる」ことが大切です。
相手に恩を売ろうと思って何かをしてあげようとしても、ありがた迷惑に感じられては逆効果なので、ここは気をつけるところですね。
2.好意|好感度を抱いたら、相手の話を聞く
人は、あなたが自分に好意を持っていると感じたり、あなたと自分との共通点に気付いたりすると、あなたに好意を抱く。こうしてあなたに好意を抱いた人は、あなたの依頼に対してイエスと答える傾向が高まる
あなたに好意を持っていて、あなたのことを完全に信頼しきって、尚且つあなたのことを頼っている状態になって、説得術が役に立ちます。
3Bの法則-Beauty, Baby, Beastの法則
ネットコンテンツの表紙画像で、よく目にするのが「美女(Beauty)」「赤ちゃん(Baby)」「動物(Beast)」です。
本記事とは全く関係なくても、最初の画像が印象的なついついスクロールをします。
最初の印象がよい!ってだけに。」
それだけネットコンテンツの素材は大事だったりします。
テレビCMは、好感度を上げるため
テレビを見ているとき、CMになったらチャンネルを変えずに必ずCMを見るように心がけて下さい。
特に、自動車メーカー、ドコモ・AU・ソフトバンク、証券・投資がおススメですね。
一昔前は商品の機能や利便性を前面に出していましたよね。ところが、最近はどうでしょうか?見ている人達を楽しませるところにウェイトが置かれています。
- CMを好きにあってもらう
- 企業や商品に興味をもってもらう
- 最後に購買につなげる
というロジックです。
AKBのCDがバカ売れする理由
ファンはCDが欲しいのではなく、AKBメンバーを応援したいだけです。その手段としてCDをたくさん買い込んでいます。全ては「好意」からきています。
1にも2にも相手から好かれろ!ってことですかね。最もシンプルで最も難しい方法かもしれませんね。「この人から買いたい!」「この人にお願いしたい」「この人なら私の悩みを解ってくれるかも・・・」と相手から選ばれることが好意のポイントになります。
「好意」を使うときは、あまり露骨にならないように心がけましょう。損得勘定で動いて何とかなるものではありません。何よりも相手から好かれようと思ったらそれなりに努力が必要になってきますからね。
3.コミットメントと一貫性|人は、言葉と行動を一貫させたい
人は一貫性を保とうとする。もしくは、少なくともそう見えるようにしたいと思う。公の場で、自発的に約束(コミットメント)をしたら、人はなるべく最後までそれを守ろうとする
人は無理をしてでも「言葉」と「行動」を一致させたがります。
理由は2つあります。
- 「あの人、言っていることとやっていることが違うよね?」と思われたくない
- 言葉と行動を一致させれば、余計なことを考えなくて済むため、ストレスを感じない
このようなことから、人は多少無理をしてでも、言動を一致させるように心がけます。
「目標を紙に書こう!」は、コミットメントの典型例
目標を紙に書こう!と自己啓発書やビジネス本では書かれていますね。目標を紙に書けば願いがかなうわけではなく、目標を紙に書いたから、日々の行動を改善していこうと心がけるわけです。大事なのは、紙に書いた本人が自分にコミットできるかどうかです。
誰かに指示されて、夢や目標を書いた場合は要注意が必要です。
「あなた昔こう言ったよね?・・・だったら・・・●●をしなよ」と、承認誘導のプロからは無理な要求をされることもあります。
注意が必要です。
自己啓発セミナーでよくある手口ですね。
欧米人はコミットメントの一貫性による説得に弱い?
集団主義社会では、全員の利益が優先されますが、個人主義社会では、信条や考え、価値感を元に人は判断をするため、一度でも「自分はこうだ!」と決めつけると、自分に対して拘りが生まれてしまい、そんな自分に縛られてしまいます。
このような文化背景もあってか、欧米のような個人主義社会では、コミットメントの一貫性を利用した説得方法が有効だといわれています。
コミットメントの一貫性による説得が最も効果的なのは、「オレはこう思うよ!」と自分の意見を前押しする人です。
50代の人には効果は抜群です。
血液型で性格を判断するのは一貫性?
「血液型と性格が一致する」という科学的裏付けはありませんが、血液型と自分の性格をイコールにさせる方が楽なのです。
例えば、自分はA型だから几帳面だ!B型だから自由奔放だ!と思うのは楽なのです。「おおざっぱで愛想がよい性格」とされています。この場合、O型だから愛想がよいのではなく、O型は愛想がよいと思い込むから、次第に愛想がよい性格になっていく、と考えるわけです。
ラべリング効果:ラベリング効果とは?|人はラベルを貼られるとその通りになってしまう。
4.希少性|人は、希少なものに高い価値を感じる
人は、何かを希少だと見なすと、その価値を高めに考える
同じ商品・サービスでもいつでも購入できるものとめったに購入できないものなら後者の方価値が高いものと感じてもらえます。
例えば、高級ブランド商品が売れる理由は、あえて希少性を演出しているからです。
- 価格を高くして希少性を演出する
- 素材そのものが希少だと言い張る
- 販売の期間を●●日まで!と伝える
- 限定●●本!と個数を指定する
5.権威|人は、専門家や権威のある立場の人の判断に従う
人は、専門家や権威のある立場にいる人の判断に従うものだ(そして、概して自分のその傾向を過小評価する)
基本、人は従うことを求めます。自分一人で決めたら、全てのことを自分で責任を負わなければなりませんから、誰か命令してくれる人がいると楽なのです。
- 医者から「あなたは病気ですよ」
- 弁護士から「その行動は法律違反になりますよ」
と専門家から意見を言われると、誰もが信じてしまいます。お医者さんが処方箋を出せばだれも疑いませんよね?それはお医者さんが権威を持っているからです。
「権威」=絶大的な影響力だと考えて下さい。
「指示されたい」という欲求は誰にでもある
多くの人は自分が何をしていいか、何をしたいかが解っていません。それが不安や恐怖にもなっています。そのときに誰かが何か指示してくれるとすごい楽なのです。
その証拠に、書店に足を運ぶと「~しなさい」「~をするな」といった命令口調のタイトル本が置かれています。「は?命令するなよ」と反抗する人は少数派で、自信を持って断定的に言い切られると人は弱いのかもしれません。
ディベートの世界でも、ジャッジができることは権威の象徴になっています。
「ジャッジは難しい」「頭がよくないとできない」というイメージがあるからです。
だから、ジャッジという肩書があるだけで、ジャッジをしたことがない人から凄い人と思われます。
権威はどの世界にも存在する
子供のころは、「親」と「学校」が権威になります。大人になったら「会社」が権威になります。やがて社会全体が「権威」で作られていることに気付きます。
「いやー、オレは社会の歯車じゃない!自由だぜ。絶対自分主義だぜ」と叫んでいても何かしらの権威に従っています。例えば、反社会組織は社会の権威に立てつきますが、反社会はの権威にいつの間にか従ってしまいます。
アウトローにもアウトローのコミュ人ティーがあり、その中には必ず上下関係があります。
究極的には、人は権威から逃げられません。
人は完全に自由になりたくない
仮に完全に自由になったとします。すると、次の壁があなたの前に立ちはだかります。
何をしていいか解らなくなり、自分の考え・行動に自信が持てなくなります。そして、人々は、大抵、何をしていいか解らない状態です。自分で考えて行動をすることを嫌います。全ての責任を自分で負わなければなりませんからね。
自ら考えて、自ら決めて、自ら行動することを求められる今の社会においても、これができる人はほとんどいません。多くの大人が主体性を放棄したような行動をとっています。
主体性を持って行動することの重要性を訴える人はたくさんいますよ。ところが、そういう人に限って主体性を持って行動することが大事なのか?と理由を尋ねてみると、こんな答えが返ってきます。
「私が尊敬している●●さんがそう言っているから」・・・・本末転倒だったりします。
6.社会的証明|人は、他の人と同じことをしようとする
人は、他の人々がやっているのと同じことをしようとする。とりわけ、自分と似ている人たちのやっていることに対して、その傾向が強い。
結局のところ、人は周りの行動を見て自分が何をするかを決めているということです。
セブンイレブンやマクドナルドに当たり前のように足を運ぶのは、皆が利用しているからです。子供の頃に学校にいって、大人になったら就職活動をして、定年まで働くのは、皆が同じようなことをしているからです。
行列のできるラーメン屋さんに行列ができ理由
人気商品と紹介されたからです。本当においしいかどうかを判別できる人は本当に少ないです。結局のところ、たくさんの人が興味を持ってもらえば、影響力をもつことになりますね。
(にわとりと卵のような気もしますが・・・)
アナと雪の女王のありのままを合掌する大人たち
映画館で「さー、皆でありのままに~と歌いましょう」とアナウンスが流れました。観客が次々と声をそろえて「ありのままに~」と歌っていました。
みんなが歌うから自分も歌う!という形で動かされます。
たとえ歌いたくなくてもみんなが歌っているから自分も歌わないといけない!という心理誘導が働きます。
参考になる記事を2つ用意しました。
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さいごに
如何でしたでしょうか?「影響力の武器」の6つの技術は?
私がこの本を通して学んだことは、日本における「ディベート」の影響力が弱い原因ですね。
ディベートが日本人の文化に合わないから流行らないのではありません。
ディベーター達が、影響力の武器で解説されているような6つの技術を、リアルで活用できていないだけです。
ジャッジを説得する技術を覚えても、一般人を説得することまではできなかったようです。
ご安心ください。ディベートは人を騙したり、詭弁(きべん)を使って人を操作するような「悪用厳禁」と称されるようなテクニックは学べません。
そのような技術を身につけたければ、ディベートなんてマジメにしている場合ではありません。影響力の武器を手に取ることを真っ先にお勧めします。