「カウンセリング」や「カウンセラー」と聞くと、精神に問題があるクライアントに対して心のケアを行うイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか?
一方で、論理をベースにしたカウンセリングも存在することはご存知でしょうか?この記事では、論理治療の父といわれるアルバートエリスのABC理論とABCDE理論についてお伝えしていきます。
ABC理論とは?
ABC理論は、アルバート・エリス(Albert Ellis)が1955年に提唱した論理を中心としたカウンセリングの概念です。論理治療と呼ばれていますね。
- A:Activating Events(出来事・事実)
- B:Belief(解釈・考え方-受け取り方や感じ方)
- Consequence(結果、判断、感情、行動)
A:出来事や事実は変えられませんが、すぐにC:結果・判断にならず、いちど個人のB:解釈・認知を通るんですね。
B:ビリーフ(認知・考え方)がキモ
ABC理論でいちばん大事なのは、B:ビリーフです。
全く同じ経験をしても、ある人は激しくへこみ、ある人はそんなに喜ぶといった違いが生まれます。会社をクビになって失恋をしたら、落ち込んで3か月間ぐらい立ち直れない人とスグに前向きになれる人がいます。
この違いは、個人のビリーフからきていると論理治療では考えられています。
例えば、仕事で失敗をすると、「自分はダメなやつ」だと考えを持ってしまうかもしれません。その結果、自分に自信が持てなくなってしまいます。一方で、他の人が同じ失敗をしても、そんなに気にしない人もいます。
その背景には、仕事で失敗をすることはよくないというビリーフを強く持っているからです。
勿論、仕事にストイックになることは素晴らしいことかもしれませんが、その結果メンタルをやられては元も子もないですかね。実際に、責任感が強い人ほどうつ病になりやすいといったデータがあります。だからこそ、不適切なビリーフに対して適切な働きかけを行うのが論理治療の特徴といえるでしょう。
イラショナルビリーフを正していく
イラショナルビリーフとは、誤った認識や不合理な考え方です。著書によると、非論理的思考と訳されています。以下、アルバートエリスの「人と業績」から引用します。
- 人は自分にとって重要である人から愛されたり認められなければならない
- 人は自分の有能さを証明し実績をあげねばならない。少なくとも、重要な領域においてはひとかどの才能や能力を持たなければならない
- 人々が自分に対して深い、不正を加えた場合には、断固としてその人を非難したり、強めたりしなければならないし、彼らの不正、不徳のダメ人間とみなさなければならない
- 人がはなただしく欲求不満に陥ったり、不正な扱いを受けたり拒絶されたりすると、人は必ずや事態を八方塞がりで恐ろしく、悩ましく、絶望なものとしてとらえなければならない
- 外からの心理的圧力がある人から人はみじめな気持ちになるのであって、自分の感情をコントロールしたり変えたりできるわけがない
- 危険で恐ろしそうに思えるものに遭遇したとき、不安で頭がいっぱいになってしまうものである
- 人生の困難や責任のある仕事に毅然として立ち向かうよりは、回避するほうが楽である
- 過去は極めて重要である。その人の人生にかなり影響を与えた過去の出来事は、その人の現在の感情や行動を左右するほどの影響力を持ち続けてしかるべきである
- ひとや自体(物事)というものは現状よりもいっそういい方向にむかわなければならない。人生の諸問題の良き解決策をみいだせないとしたら、人生も末で、恐ろしい事であるとは考えねばならぬ
- 「果報は寝て待て」「棚から牡丹餅」風に幸福を享受したり手に入れたりすることこそ人生の至福である
引用:アルバートエリス、人と業績
論理治療では、カウンセラーがクライアントのイラショナルビリーフに対して適切に働きかけていきます。
ABCDE理論とは?
ABCDE理論とは、ABC理論にDEを加えたものです。下図をご覧ください。
- D:Dispute(反論・論駁)
- E:Effect(効果)
ABCDE理論では、カウンセラーがクライアントのビリーフに対して反論・論駁をしていく形で進めていきます。反論・論駁と聞くと、カウンセラーがクライアントの考えを批判・否定しているように聞こえますが、実はその通りです。
クライアントが囚われている謝ったビリーフ(イラショナル・ビリーフ)に対してのみ反論・論駁をしていきます。但し、クライアントの気持ちをむやみに否定するのではなく、クライアント自身が否定したい部分を一緒になって考えていくイメージですね。
ABCDE理論での気づき
カウンセラーのあり方について非常に考えさせられました。ABCDE理論を知るまでは、カウンセラーの役割は黙ってクライアントの言葉に耳を傾けることが大事だと考えていました。結果、クライアントは自ら自分の悩みや問題に対して考えはじめて、ひとりで問題が解決できるようになる!これは、ロジャースの人間主義の影響でしょう。この考えは大切にしています。
逆に、クライアントがカウンセラーに自分の悩みを伝えているだけで解決できない場合は、エリスのように自らクライアントの悩みや問題に対して介入することも必要なのかもしれませんね。
この点については、自分もまだ調べ中です。どのように判断をするのかは読者の皆様にお任せします。