ぶっちゃけディベートとディスカッションって何が違うの?という質問にお答えしていきます。
- ディベートとディスカッションの違いって何ですかね?
- ディスカッションもディベートも似たようなものでしょ?
- 対立的にものをいうか、みんなでひとつの話を作るかの違いでしょ?
とお考えの方に。
ディベートの基礎知識-4つの特徴-の記事では、ディベートについてはガッツリ書いてみました。この記事では、そんなディベートとディスカッションを徹底比較しながら、お互いの違いや状況に応じての分け方などを学んでいただけると嬉しい限りです。
はじめに
0.ディベートとディスカッションの違いを語る前に
なんでディベート講師なのにディスカッションについて語れるんですか?と質問に先にお応えします。
確かに、私の専門はディベート。ですが、ディベートの試合をする前と後にはかなり内容の濃いディスカッションもします。
【その1】ディベートのテーマ決め・議論の方向性を共有
→この時は、みんなでテーマを決めながら、どのような方向性にしていくかでディスカッションをする
【その2】チームに分かれて作戦会議・ディベートの試合を行う
→このタイミングでは、ディベートの試合に徹する
【その3】試合の判定&フィードバック
→試合の判定を決めた後は、その判定理由についてみんなから意見を募る。よって、ディスカッションに近い
いつもこんな感じでお話をしています。
例えば、こんなの
↓
- どんなテーマでディベートをするのか?
- このテーマを攻略するにはどんな知識が必要か?
- 今回の試合は、肯定側(否定側)の勝ちにしたが、皆さんの意見はどうか?
- 今回の試合で学んだことは何か?明日から活かせそうなことは何か?
などなど、ディベートの試合のひとつ前の工程はディスカッションの繰り返しです。ディベートとディスカッションの違いを知り、2つをキチンと使い分けられないとディベートの講師は務まらないわけです。
1.ディスカッションとディベートの違いはひとつ
結論から申し上げると、事前に設定するテーマが違うだけなんです。
テーマの違い
- ディスカッション-「5W3H」で話し合う-「何をするか」「いつするか」「なぜするか」「どこでするか?」「誰に対して行うか?」「どのように行うか?」「どの程度行うか?」「予算はどうするか」など、テーマの概要を決める
- ディベート-「YESorNO」を決める-5WH3からさらに一歩踏み込んで、特定の行動をを実行する・しないか、を決断する。そのために、対立形式の意見を戦わせる!
例えば、今あなたが何か副業をしようと考えています。ディスカッションでは、いつ、どこで、どんな事業を、どの程度行うか?また、お客さんは誰か?予算はいくらか?など表面的なところを固めていき、ディベートでは、その固めた内容を行うと仮定して、そのメリットとデメリットを戦わせるんですね。
つまり、「どんな副業をしようか?」と考えるのがディスカッションです。対して、ディベートでは、その副業を実際に行うか、どうか?の検証を行います。
広く浅く議論をするか、狭く深く議論をするか?この違いですね。そして、その基準はどんなテーマで議論をするか?によって決まります。では、もう少し掘り下げてみていきましょう。
1-1 ディスカッションのテーマ・進め方
こんなのは、ディスカッションのテーマに最適です。
ディスカッションのテーマ
- テーマ1.来季の事業予算をいくらするべきか?
- テーマ2.2020年はどんな教育が求められているのか?
- テーマ3.グローバル社会で企業が生き残るためには?
ディスカッションのテーマは、その場に参加をしているみんなが意見が言いやすい状態が望ましいです。だから、はじめは誰でも意見が言えるように抽象的なテーマを設定する場合が多いです。しかし、あまりにもテーマが抽象的過ぎると、みんなで意見を具体的に掘り下げていくのが難しくなる問題もあります。
1-2 ディベートのテーマ
対して、ディベートのテーマは、意見対立が前提になっています。例えば、「来期の予算は2,000万円追加するべきである」というテーマでディベートをする場合、具体的な金額を決めておいて、それを可決するか否かで議論を進めていきます。
ディベートのテーマ
- 「英会話の授業を増やすべき」
- 「教科書をタブレットにするべき」
- 「飛び級留年制度を取り入れるべき」
- 「外国人専用の語学教室を設けるべき」
- 「幼稚園・保育園を義務教育過程に組み込むべき」
1-3 トップダウンとボトムアップの違い
- ディベート-トップダウン
結論が先に用意されていて、その結論に導くために必要な判断材料を取捨選択する - ディスカッション-ボトムアップ
個々の判断材料を用意して、積み上げて、議論を通して結論を導き出す
このため、ディスカッションのほうが色々な話ができるのですが、色々は意見がであるあまり、結局話がまとまらず、「色々な意見が出ましたね。勉強になりましたー」が結論になってしまうケースがあります。
ここから一歩踏み込んで議論をしたい人たちがディベートに興味を持ってくださいますね。
2.ディスカッション/ディベートの進め方の違い
テーマが異なれば進め方も違ってきます。
ここからはディスカッションとディベートの進め方の違いについて解説していきますね。
2-1 ディスカッションの進め方
- 「これからの日本のICT教育はどうあるべきか?」
- 「ICT教育を実現するために何をするべきか?」
これらはディスカッション向きのテーマです。
逆にディベートには向いていません。具体的に何をするかが決まっていないからです。
ディスカッションのテーマをディベートにしていく場合、問題を掘り下げて、具体的に何をするべきか?まで導き出していく必要があります。
- [現状分析]現状の日本の教育はどうなのか?
- [問題提起]どのような問題があるか?原因は何か?
- [問題解決の是非]その問題は解決するべきか?
- [解決手段]どんな手段(政策・改革案)が必要か?
- [解決案の証明]その解決案で問題が解決するのか?
- [弊害の検討]果たして、その解決案を提示したら別の問題は生じないか?
- [まとめ]問題解決と弊害を比較検討して、今回の問題を解決するべきなのか?
4の解決手段が思いついたら、必ずその解決手段に対して、別の問題が予想されます。
例えば、ICT教育を実現するために、小学校の授業にタブレットを取り入れるべき!と誰かが主張するとします。
すると、予算の問題、教師の負担、デジタル依存の問題、などなど別の問題が思い浮かびます。
さて、このタイミングでディベートができると、どうか?
このように考えることができます。
↓
ディスカッションは、議論が横に広げることには向いていますが、焦点を絞って深堀していく縦の思考法が身につかないんですね。逆に、ディベートは、ディスカッションにないこの縦の論理を深めることに最適です。
それでは、ディベートの進め方についてみていきましょう。
2-2 ディベートの進め方
先ほどの、「デジタル教育・ICT教育」をテーマにして考えてみましょう。
ディベートにすると、こうなります。
文部省は、タブレット教科書を推進するべきである
- [解決手段]202X年までに小学校5年からタブレット授業を開始するための予算を確保する
- [賛成派の主張]
- [現状分析]AIやLoTなど今後はデジタル中心の社会になる
- [問題提起]国家の課題でもあるのに、教育の現場に中々浸透していない。
- [解決手段]今回の手段を実行することで、問題は解決する(以下、その手順)
- [反対派の主張]
- [弊害1]教科書をタブレットにすると膨大な予算が発生する
- [弊害2]タブレットの操作が難しくて、授業が滞るかもしれない
- [弊害3]インターネット環境の設備を含めたインフラの構築が大変そう
- [お互いの主張をもとに議論]
- [議論]双方がお互いの議論に反論・再反論を行う
- [議論]どちらのほうがより望ましいか?決着をつける
- [総括]審判がどちらかに判定をする。
今回の場合、ディベートとなるべき争点は、文部省がタブレット教育を推進するべきである、であり、その手段として、202X年までに小学校5年からタブレット授業を開始するための予算を確保するべきか否か、です。
このように、具体的に何をするかはもちろん、その先にある、「いつ」「どのように」「どれだけ」「例外は?」などとある程度論点を絞り込んだうえで、ディベートの試合は行われます。
そして、
↓
- 賛否両論のテーマを決める
- 賛成派と反対派の主張を用意する
- お互いの主張をもとに議論をする
- お互いの議論を検証して判定をする
ディベートは、何について議論をするのか?そのテーマが決まっていないとできません。
逆に、テーマさえできてしまえば、あとは手順に従ってスイスイと議論ができます。
・・・実は、ディベートのテーマにも欠点があります。
3.ディベートのテーマの欠点
ディベートのテーマは、議論をする主題が狭いことです。
先ほどの「タブレット教科書を推進するべきである」というテーマでディベートをする場合ですね。結局、タブレット教科書の導入を推進する理由(推進しない理由)の範囲内でしか議論ができないのです。
もちろん、「ICT教育の在り方やこれからの日本教育はどうあるべきか?」といった議論を出してもいいのですが、「だから何?」「結局、タブレット教科書を推進するの?しないの?」と質問されてしまうのです。
4.ディスカッションのトレーニングのためにディベートが最適か?
経験上、最適だと思います。
即興ディベートワークショップでも、ディスカッションのトレーニングを行うために、ディベートを学びにくる人はたくさんいます。
「会議を運営する力やファシリテーション能力を学びたいから即興ディベートワークショップに参加をした!」という方は一定数いました。また、会議運営やファシリテーションのコンサルタントをしている方からの申し込みもありました。
一方で、ディベート業界にいる人の中で、ディスカッションのトレーニングをするために、それ専門の講座に参加をしている人はほとんどいません。てか、いません。
即興ディベートワークショップでは、ディスカッションの技術や手法こそ教えていませんが、即興ディベートワークショップ全体が最初から最後までディスカッションになっているので、ディスカッションの技術を高めたい方は是非とも即興ディベートワークショップへご参加ください。
即興ディベートワークショップの内容についてはコチラのページで全て暴露しております。
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