テイラーの生産性の最大化とメイヨーの人間的経営!あなたはどっちに投票する?の記事の続きです。
テイラーとフォードについてばかり書いていたら、10000文字オーバーしてしまいました。
別記事に移しました。SEO的な都合もありますね。
ここでは、ホーソン実験の経緯から実験の内容、結果はどうだったか?のみではなくホーソン実験の限界点など必要なことはすべてお伝えしていきます。
経営学部の学生さんはレポートやテストに活用してください。
はじめ
1.ホーソン実験とは?
ホーソン実験の概要
- 場所:ウェスタンエリクトリック社のホーソン工場
- 期間:1924年~1932年の間に行われた
- 目的:作業環境と生産性を測るため行われた実験
- 実施者:エルトンメイヨーとフリッツ・レスリーバーガー
ホーソン工場で行われたらホーソン実験なんですね。一部では、ホーソン研究と呼ばれています。
メイヨーとしては、メイヨー実験にしたかったのかもしれませんが、工場長から「うちの工場で実験することを許可するから、うちの工場の名前で紹介しろ!」と交渉を仕掛けれられたのでしょうか?そこらへんはお調べください。
メイヨーがホーソン実験を行うまでは、大テイラー主義による価値観が産業社会にありました。大テイラー主義とは、人は合理的な存在である、人は基本働くのが嫌いである、人は監視をしていないとサボる、といった人間観によって作られた管理のスタイルです。
1-1 大テイラー主義の前提条件-人間は合理性を追求する
ガチガチの性悪説に基づくものです。
人はもともと楽をしたい。仕事をしたくない。見えていないところでサボる。手を抜く。だから、管理が必要なのだ、と。
テイラーにとっての「管理」とは、法律や条令みたいなもので、ルールがないとみんな好き放題して組織はまとまらない。だから、ルールを作ろう、というシンプルなものです。もちろん、このルールが今日の経営管理に応用されているわけです。
「うわー、いやだなー」と思うかもしれませんが、仕方ありません。実際にそうですから。真剣に働こうが、サボろうが、誰も監視していなければ賃金は同じです。「だったら、サボったほうが無駄なエネルギーを使わないから得じゃない?」というのがテイラー主義です。徹底とした性悪説に基づいて設計されていますね。
もちろん、テイラー主義はヒットしたのですが、ガチガチの管理社会になり、みんな嫌になって仕事を辞めてしまいました。
気付けばテイラー主義は、人をロボットのように扱う人間味のないシステムだと批判されるようになりました。
とどめを刺したのはフォードモーターです。嗚呼チャーリー。
1-2 メイヨーの疑問-人間は合理性だけを追求しないだろ!
1880年に医師の子として生まれたエルトンメイヨー!生まれも育ちもオーストラリア。
アメリカとは季節が逆だったこともあり、アメリカ生まれアメリカ育ちのテイラー主義とは逆の考えを持っていました。
医学!心理学!哲学を極め!42歳でアメリカにわたり、ウォールトン・スクールに乗り込みました。
そのときは、1923年です。アメリカが大恐慌を迎えるちょっと前の物語です。アメリカ国内はフォードモーターが大暴れして、みんなが車をノリわしている時代です。
メイヨーは、フィラデルフィアの紡績工場の調査を社長からジキジキにお願いされました。
社長
「ミュール功績部門の離職率が年250%なんです。
その他の部門は年5~6%なのに。
ぶっちゃけ超困ってます!」
メイヨー
「おいおい!毎月2割がやめていく計算じゃねぇか!
どんだけエグイ労働環境なんだよ?」
社長
「いやー、うちらそんなエグイことしてねぇっす
1920年代のアメリカ産業水準だと、完全にホワイトっす。」
メイヨー
「じゃぁ、なんでみんなやめるんだよ?」
社長
「それがわからないから聴いてんだろ!
こっちは客だ!ゴタクはいらないから調査してこい!
って言ってんだよ。」
このとき、メイヨーははじめてアメリカ人の怖さを知ることになりました。
2 ミュール工場に入ってメイヨーが見たものは?
カオスナまでの労働環境。な・・・なんだこの労働環境は!!!!
アメリカ人の辞書には、「ゆとり」という言葉がないのか?
メイヨーが見たのは、休む間もなく目の前に仕事に没頭する従業員たちです。オーストラリアの大地でサーフィンと研究に明け暮れていたメイヨーにとって、ミュール工場で食事もする間もなく働く工員たちは、クレイジーにすら思えたのでしょう。
仕事・・・というより、これじゃまるで軍隊じゃねえか。
このときのアメリカ人は、日本の戦後のようにメチャクチャ働いて、豊かになりましたが、物理的に豊かな生活をするだけではなく、精神的な豊かさを含めて、全てが欲しかったのです。
GIVE ME EVERYTHING ME-YO
訳:仕事が大変だ!やってられっか! by Pitbull
ヘトヘトになるまで上手馬車のように働いて夜にはっちゃけるだけではなく、仕事中に休憩も必要です。
そこでME-YOの提案です。
離職率が高い原因は、仕事の単純さと孤独からくる精神的疲労。仕事の合間にリラックスできるように休憩でもとらせればいいじゃないですか?オーストラリアにはこんな諺があります。
休むのも仕事のうち!
Break! time after time before you break your heart!
(繰り返し休め!心を壊す前に!)
と叫んだ、ミュール工場の工場長たちでした。
このときに生まれた曲がこれだったのかもしれませんね。
↓
ただ、どのように休憩をとるかはみんなで考えてね♪と一言残してその場を去りました。
・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
そのとき、バラバラだった工場のスタッフはひとりつになり、みんなでどれくらい休憩をとるかについて議論を繰り返しました。
結果・・・・
従業員たち
1日4階10分ずつの休憩を交代でとります!
誰がいつ休憩をとるかはみんなで決めますね。
数カ月後の結果・・・
離職率は、250%→5%へと劇的ダウン!
おまけに、生産性もUP
メイヨー・・・・
「マ・・・マジッすか!?」
「いいや、休憩を与えただけで、
ここまで大きな変化があるとは?
別の要因があるはずだ!」
こうして、メイヨーは真実を探求しに旅に出て、ハーバード大学の研究員になり、職権をフル活用して、ホーソン工場で次々と実験をはじめました。
ここからメイヨー伝説のスタートです
3 ホーソン実験の目的
とりあえず、「人間関係」と「個人の感情」がどれだけ業務能率性にリンクしているのかを調べるために以下4つの実験を行いました。
ホーソン実験の中身
- 証明実験
- 組立リレー
- 面接実験
- バンク配線作業実験
それぞれについて説明していきますね。
証明実験
何人かの労働者に工場労働をさせて、工場内の照明を明るくしたり暗くしたりしました。物理的な作業の変化が作業効率にどのくらい影響を与えるかを調べたかったからです。
■仮説:部屋の照明と作業能率に影響を与える
- 工場内の照明を明るくすれば作業能率が高くなる
- 逆に照明を暗くすれば、作業能率は低くなる
ところが、結果は予想外でした。
■結果:作業条件と能率には相関関係はなし
- 工場内の照明を明るくした場合には、それまでよりも作業効率が高くなった
- その後、反対に照明を暗くした場合でも従来よりも作業効率が高くなった
確かに工場内の証明を明るくしたときは作業能率は高くなったのですが、照明を暗くしても作業能率は低くなることはありません。逆に、作業能率はドンドンとあがっていきました。
物理環境と生産は関係がないことが判明しました。
照明の明るさと作業能率は全く関係がない、が判明しました。
ホーソン実験の第二弾「組み立てリレー」です。ホーソン実験では最も有名な実験かもしれませんね。
組み立てリレー
大勢の従業員の中から6名の女性従業員を明るい光で照明で照らしました。「キミたちは選ばれたんだ!エリートなのだ!優秀なんだ!愛している!」とメチャクチャ褒めまくりました。とにかく、愉悦感をくすぐります。
そして、翌日、この6人に継電器の組み立てリレーをさせます。そこで、労働条件を色々といじるわけです。
- 部屋の温度・湿度を上げたり下げたりする
- 休憩を与えたり与えなかったり不定期にする
- 軽食を与えたり、与えなかったり
- 賃金を上げたり下げたりする
嫌がらせを受けているようにしか思えませんよね?
物理的な労働条件を悪くすることで労働者の生産性が落ちるのでは?が当初の仮説だったのですが、これも外れました。
部屋を明るくしようと暗くしようと、暑かろうが寒かろうが、休憩が多かろうが少なかろうが、給料をあげられようが下げられようが、生産性は一定のペースを保っていました。
どんなに労働条件を変更しても、彼女たちは生産性を落とすことなく、逆にお互いを褒め合い、励まし合い、過酷な労働環境を乗り越えたのです。
結果、6人の仕事の能率は、グングンと高くなっていったのです。
とりあえず、士気の高いチームを作ることに成功すれば作業環境の変化には全く影響されない、まで立証させることができました。
労働条件や作業環境に関係なく、彼女たちは自分たちが期待されている認識が作業の能率性に大きく寄与したものと考えられます。
面接実験
ここら辺で調子に乗ったメイヨーさん、今度は個人の感情が仕事にどう影響を与えるのか、について調べるため面接実験を始めました。
21126人の従業員に対して、「仕事は楽しいかね?」「この仕事を通して何をやりたいかね?」「あなたはこの仕事についてどう思うかかね?」と質問攻めにしました。
面接というよりは、お仕事についての楽しいお話ですかね。「何か不満があったら教えてくれ!」「キミには仕事を通してハッピーになってもらいたいのだけれどどうしたらいいかな?」みたいな労働者が喜ぶような話題を振っていました。
労働者達の労働意欲は、就業環境や物理的な賃金よりも、職場の人間関係や仕事に対する適正、興味、納得といった感情的な部分と切り離すことができないことが判明しました。
ここら辺からテイラー達が主張する客観的な労働条件よりも主観的な感情の方が生産性に直結すると考えられるようになりました。
バンク配線作業実験
ここら辺で一気に調子に乗るメイヨーさん。
最後に行ったのが電子交換機気の端子の配線作業実験です。従業員を職種ごとにグループ分けさせて、配線作業を共同で行わせて成果を調べたところ、以下2つのことが判明しました。
- 労働者は全ての力を出し切るのではなくどこかで手抜きをしている
- 時間あたりの生産性(能率)は、能力よりも意識によるところが大きい
- 上司と良好な人間関係を気付けている方がミスが少ない
ということが解りました。カンタンに言うと、職場の人間関係が悪いと人は怠ける!ということです。それだけです。
ホーソン実験で学んだこと
生産性の向上は、工場の設備や労働環境、物理的な働きやすさではなく、上司と部下の関係や同僚との人間関係に起因する部分の方が大きく影響する、ということでした。
特に興味深かったのは下記の部分でしょう。
ホーソン実験は、メイヨーと愉快な仲間たちが労働者に対してヒアリングや面談を通して行われました。ところが、ヒアリングや面談では有益な情報は一切得られませんでした。グチや文句を聴いていただけですからね。
ところが、このグチや文句を聴くだけの好意に意味があったのです。労働者たちは、話をすることでストレスを和らげ、心身ともにリフレッシュされました。生産性の向上につながった、とメイヨー先生がどこかの本で仰っていました。
まさに、現代のカウンセリング的なアプローチとも言えるでしょう。
ホーソン実験にはフリッツ・レスリーバーガーという人も研究のお手伝いをしましたが、この人はあまり知られていません。
残念ですね。