皆さんも、「論理」と聴いて真っ先に思いつくのが、三段論法かと思います。
中学か高校のテストに出てきましたよね。
人は死ぬ、私は人である、よって、私は死ぬ
って問題。
三段論法は、論理的に物事を分析する点では非常に優れているツールです。ところが、議論や討論を三段論法で考えてしまうと、相手の主張に対してケチをつけて終わり、そこから発展しません。ディベートをしているときも同じです。
はじめに
1.三段論法とは?
出だしから、三段論法は使えない!と言いましたが、そもそも三段論法って何?ってお話ですよね。
簡単に説明だけしておきます。そんなに難しいものではありません。
1-1 三段論法とは?
先ほど、人は死ぬ、アリストテレスは人である、よって、アリストテレスは死ぬ、という論法のことです。アリストテレスさんという古代ギリシャの哲学者さんが作った論法ですね。
「推論」の方式の1つで、最初に「大前提」を用意して、次に「小前提」を用意します。最後に「結論」を導きます。
「全ての人は死ぬ」という大前提を用意して、次に「アリストテレスは人である」と小前提を出します。
アリストテレスが人なら、人は死ぬんだから、アリストテレスは死ぬよな、的な論法ですね。全くその通りです。
何とも美しく完璧な論法。
ツッコミどころがないですね。
絶対に正しい【大前提】【小前提】を用意して、
三段論法を組み立てて下さい。
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できましたか?
恐らく、「人は死ぬ」「●●は人である」ぐらいしか思いつかなったのではないでしょうか?
これこそ三段論法の欠点です。教科書的で、100人いたら100人が正しいと答えるような大前提しか用意できないのです。重箱の隅を突っつかれたら即アウトです。
アリストテレスさんという古代ギリシャの哲学者さんが作った論法ですね。
1-2 三段論法の例
大前提→前提、小前提→事実、結論の3つで三段論法を組み立ててみました。
<例1>
- 大前提-全てのカラスは黒い
- 小前提-目の前にカラスがいる
- 結論-目の前のカラスは黒い
さて、どうでしょうか?
「全てのカラスは黒い」が大前提ですから、目の前にいるのがカラスなら、大前提の全てのカラスが黒いに従って、そのカラスは黒になります。(ならなくてはいけません)
ちなみに、ディベートの試合では全てのカラスは黒い、なんて議論はしません。教科書で紹介されているような三段論法は、テストの●×問題を説くためであって、議論や討論をするためには作られてはいません。
なぜなら、日常の議論や討論を想定して三段論法を組み立てたら、100%正しい大前提や小前提が作れなくなるからです。
1-3 大前提も小前提も簡単に崩れる
さて、視点を変えて、次は、こお「全てのカラスが黒い」と「目の前にカラスがいる」という前提を崩してみましょう。意外と、簡単に崩すことができます。
ではまず、大前提の「全てのカラスが黒い」から・・・・。
- 「本当に全てのカラスが黒いのか?」
- 「黒以外のカラスは存在しないのか?」
- 「あなたは、全てのカラスを見たのか?」
弁護士の先生・論理学の先生は、本当にこんな質問(ツッコミ)をしてきます。
「いやー、カラスって普通に黒いでしょ。一般的にカラスは黒いでしょ。だから、全てのカラスは黒いといっても問題ないでしょう」と言っても通じません。
- 「本当に全てのカラスが黒いのか?」
- 「黒以外のカラスは存在しないのか?」
- 「あなたは、全てのカラスを見たのか?」
と、諦めません。本当に全てのカラスが黒いと証明できない限り、成立しないのです。
<まとめ>
- 特徴1.前提が異なる-「全てのカラスが黒い」という前提が成立しない
- 特徴2.事実が異なる-目の前にいるのがカラスかどうかわからない
2.三段論法は、100点主義
三段論法は、プログラミングと一緒です。プログラムは、ひとつでもコードが間違っていれば正常に動作しません。
同じように、【絶対に】、【確実に】、【例外なく】、【100%】といえる命題でなければならないのです。
もうひとつ問題を作ってみました。
ちょっとネタです。お友達と一緒に考えてみて下さい。(会社の同僚でもいいですが、経験上「ヘンなヤツ」と思われるので、お勧めしていません)
2-1 問題 アメリカは悪か?
<例2>
- 大前提-戦争をするのは悪である
- 小前提-アメリカは戦争をしている
- 結論-アメリカは悪である
さて、この論理はどうでしょうか?完全に三段論法のルールで作りました。
2-2 【大前提】は絶対に正しいか?
キーワードは絶対です。
「戦争をするのは悪いこと」は、一般的には正しいです。ただ、必ず戦争が悪なのかと言われたら、絶対とは言い切れません。
ところが、三段論法の世界では、「戦争をするのは悪である」という前提が成立しない限り、この論理は正しいと言えなくなるのです。そういうルールだからです。
2-3 【小前提】はどうなのか?
次の、「アメリカは戦争をしている」も同じです。確かに、アメリカは中東の方に軍隊を派遣しています。但し、飛行機から爆弾を民家に落としているわけではありません。また、罪のない人達に残虐な行為を加えているわけでもありません。
それでも、三段論法の世界だと、「戦争をするのは悪である」という前提が成立している以上、アメリカが少しでも戦争に関わっていれば、アメリカは悪である、という結論が自動で導かれます。
「いやー、一概には言えないよね。
国には国の事情があるよねー」が本音ですが、
その本音は論理的ではありません。三段論法の世界では、0点です。
つまり、そういうことです。今回の場合であれば、戦争は悪である、という大前提を崩せばよいわけです。
3 論理の不完全性を認めること
そこに気付いたイギリスの哲学者スティーブントゥールミンは、「三段論法で人間は物事を考えないだろう!」と異を唱えたわけです。人は機械のように情報を処理しない、ということですね。