カウンタープランとは、言ってみれば代替案のことです。否定側も肯定側と同じように、代替案としてプランを打つことができます。ディベートでは、これをカウンタープランと呼びます。
少しディベートを覚えてくると、ちょっと試したくなるのがこのカウンタープランだったりします。
但し、いくつかの条件を満たす必要があります。その条件について解説をしていきます。
はじめに
1.仮テーマ|「Appleは、i.phoneの価格を上げるべきである」
実際に、appleがi.phoneは値上げするわけではないのでご安心ください。
あくまで、今回紹介するカウンタープランを理解して頂くために作った思いつきのテーマです。もちろん、このテーマでディベートをしたい、という要望があればオッケーですが。
「値上げをする」という命題をクリアすれば肯定側は自由に価格を決めることができます。
ただし、絶対に値上げをすることが条件ですね。(詳しくは、トピカリティーをご覧ください)
テーマよりプランを設定
今回のテーマ:i.phoneを値上げするべき、より以下のプランを作ってみました。
- 1、新シリーズの単価を198,000円にする
- 2、旧シリーズの単価を既存の1.5倍にする
- 3、Macユーザー限定で20%offにする
- 4、その他必要な措置をとる
肯定側はテーマの範囲以内であれば、プランを自由に設定することができます。今回であれば、i.phoneの値上げさえすれば、価格をいくらに決めても自由ですが、その価格が有効であるという一定の論証責任を負うことになります。
調べたところ、既存のi.phoneの価格が一番高いシリーズで86.800円だったので、値上げの命題は満たせています。
Appleが、いきなりi.phoneを198.000円で販売したら、誰も買わないことは容易に想像ができますね。(私だったら買いません)
2.非命題性、競合性、優位性の証明とは?
カウンタープランを放ったら否定側は以下の3つを証明しなければなりません。
- 非命題性(P≠CP)
テーマを肯定していないこと。(否定をするわけではない) - 競合性(CP+P<CP)
プランとカウンタープランを同時に採用できないこと。 - 優位性(CP>P)
プランよりもカウンタープランの方が優れていること
ひとつひとつを見ていきましょう。
条件1 非命題性
198,000円は高いから、せめて128,000円にするべきだ。198.000円は高すぎるため、購入者が減ってしまう。128.000円は何とか手が届く範囲である。
さて、これはどうでしょうか?結論からいうと、NGです。プランに対して反論はできていても、テーマそのものを肯定しています。
- プラン|198,000円で販売する→否定できている
- テーマ|i.phoneの価格を上げる→肯定している
「否定側のカウンタープラン・・・i.phoneを128.000円で販売するべき、はテーマを否定していません。むしろ、肯定しています。」と反論をされてお終いです。
もしかしたら、肯定側がプランとして「i.phoneの価格を128.000円にする」と提示をしてくるかもしれません。
現時点でi.phoneの定価が128.000円以上であれば、話は別ですが・・・。
条件2 競合性
他の商品・・・例えば「i.pad」や「Mac」など他の商品を198,000円で販売をするべきである。i.phoneを高くするのはリスクが高い。関連商品を高額で販売する方が高収益を上げられるのでは?
i.phoneの価格については触れていないので、非命題性の部分はクリアしていますね。ところが、このカウンタープランにはひとつ致命的な欠点があります。テーマと全く関係がないのです。
競合性がない
このテーマで議論をしていることは、i.phoneの価格を引き上げるべきか、どうかです。
他の商品をいくらで販売するかについては一切触れていません。i.phone以外の商品の価格がいくらで販売をしても、肯定側は、i.phoneをプランで提示した価格198.000円で販売することが認められれば勝ちになります。
もちろん、全部の商品を198.000円にしたら、それこそ売れなくなるだろ!という反論は考えられます。これは否定側がキッチリと試合の中で証明をしなければならない部分です。
競合性を証明する方法
プランとカウンタープランが競合していると証明するためには、2つのうちどちらかを証明する必要があります。
- 物理的にプランとカウンタープラン同時並行は不可能である
- プランとカウンタープランを同時に採用するべきでない、必要がない
例えば、今回のi.phoneの価格を引き上げるべきである!というテーマなら以下のようになります。
- i.phoneの価格をあげてしまうと、他の商品の価格を引き上げることが不可能になる
- i.phoneの価格を引き上げずに関連商品の価格を引き上げた方が販売上有利である
恐らく前者の証明は不可能でしょう。対して、後者は何とかなりそうですね。
いちばん簡単なカウンタープランは、i.phoneの価格を下げるべきだ、と主張することです。どう考えても、「値上げ」と「値下げ」は同時に採択できませんよね?
条件3 優位性
i.phoneの価格を64.800円にしておいて、関連商品の価格を198.000円に引き上げた方が、トータルで売上が上がる!
そろそろこんなカウンタープランがイメージできてきますかね。
- 1.i.phoneの価格を64.800円で販売をする
- 2.i.padやI.padPro等の関連商品を198.000円で販売する
テーマそのものを否定していないため、非命題性はクリアしています。また、同じ商品を、64.000円と198.000円で販売するなんて考えられないので、競合性もクリアしています。最後にクリアするべき壁は、カウンタープランの方がプランよりも優れているという証明ですね。
優位性については、カウンタープランを示した段階で証明をしていきます。はじめの立論ですね。
否定側がカウンタープランを放った時点で、試合はメリット・デメリット方式から、プランorカウンタープランのどちらを選ぶか?という流れになります。
カウンタープランを打つときの注意点
さて、最後に今回紹介したカウンタープランですが、打つ前に次の2つのことを判断して下さい。
- 1.極力、余計なことをいわない
- 2.打つべきかどうかを事前に検討する
ちょっと見ていきましょう
1.極力、余計なことをいわない
先ほどのプランですが、試合ではいわない方がよいものがあります。どちらでしょうか?
- 1.i.phoneの価格を64.800円で販売をする
- 2.i.padやI.padPro等の関連商品を198.000円で販売する
正解は2です。なぜかというと、「関連商品を高額で販売した方が有効である」と証明しなければならなくなるからです。無駄に仕事が増えてしまいます。
今回の試合の戦略上、どうしても2の「関連商品を高額で販売する」という要素が必要なら、打つべきです。
もちろん、私は打ちません。
2.打つべきかどうかを事前に検討する
カウンタープランはもろ刃の剣だと思って下さい。本来であれば、否定側は肯定側のプランを攻撃するか、メリットをゼロにするか、強力なデメリットを打てば勝率はあがるわけです。
対して、カウンタープランを打つと試合の中で仕事がひとつ増えてしまいます。時間的なロスが大きい、という欠点があります。
カウンタープランを打つときは、本当に必要かどうかを冷静に考えてみて下さい。