そろそろポーターにも飽きたので、そろそろ知識創造企業について解説。知識創造企業とは、三人集まれば文殊の知恵を体現したような経営の学派スタイルです。
今回は、野中郁次郎氏が考案した知識創造経営と具体的に実践する方法について解説をしていきます。ここだけのお話ですが、即興ディベートワークショップにも、これから解説をする野中理論が使われています。
はじめに
1.前提:知識=競争力の時代
マネジメント業界の教祖・ドラッカーは、ネクストソサィティーで、「21世紀において重要になる資源は、知識じゃー!!!!」と叫びました。知識こそが企業の競争力を左右する経営資源であり、21世紀の産業社会はナレッジワーカー(知識労働者)の時代だと予言しました。
これを知識社会と呼びます。
1-1 「知識社会」って何だよ?
知識社会:生産手段が資本や労働力から知識に入れ替わった時代。ドラッカー曰く、知識社会は、資本主義社会の次にくる社会のようです。本当かよ!と思いますが。
1-2 資本主義社会から知識社会へ
資本主義社会が出来上ったのが、18世紀末。この時代は、資本家が生産手段を持っていて、労働者たちは資本家のもとで黙って働くしかありませんでした。「お金を持っているものが強いんだぜ!」の時代です。マルクスは、この社会を批判しました。
対して、知識社会とは、個人の持つ「知識」が資本の役割を果たすようになり、相対的に資本の力が弱くなっていく社会です。
それを象徴しているのが、大資本を保有しているビッグスリーがヒーヒーなのに対して、小資本のGoogleやAMAZONがイケイケだったということ。
生産手段がモノから情報へシフトして、その情報は人材が持っている知識にあるという考えが広まりました。
1-3 ジャイアン→スネオ→出来杉くんで考えてみる
資本主義が確立するまでは、ジャイアンがいちばん力を持っていて、資本主義が確立してからはスネオが力を持った。そして、知識社会では、出来杉くんが力を持つようになった、ということです。
アメリカ的な考えだと、出来杉くんのような優秀な人がリーダーになって、素晴らしい戦略を策定すれば、企業の競争力は向上すると信じられてきました。ところが、そうはいきませんでした。
2.従来型経営戦略論の欠点を指摘
2-1 従来の競争戦略論とは?
90年代の米国の経営学では、競争力の根源は組織の外部にあるか?それとも、組織の内部にあるか?という議論が活発にされてました。
■問題
果たして、i.phoneやi.padがヒットした理由は何か?みんながパソコンを使っている時代に、小型デバイス市場ががら空きであることを知り、(1)その市場に上手く入り込むことに成功したから?それとも、(2)直感で操作できる小型デバイスを作る力を自社内に保有していたから。
(1)は、ポジショニング論者の主張です。儲かりそうな市場を見つけて、陣取りをして、市場を固める作戦です。マーケッターが好きな議論ですね。
対して、(2)は、ケイパビリティー論者の主張です。陣取りが上手く行ったわけではなく、その市場で勝てるような製品を生み出す原石がその企業にはあったんだ!という考えです。
では、知識経営論者は、ポジショニング派とケイパビリティー派の議論を見て、どのようなアンチテーゼを放つでしょうか?
2-2 「競争」という発想がそもそもダメ
知識創造論者は、マイケルポーターの競争戦略論について以下の前提を否定しました。
- 企業の目的は競争をすることではなく、価値を生み出すことだろ!
- 狭いパイを奪い合うのではなく、付加価値を生み出すことを考えるべきだろ
- 産業の特徴や収益構造を分析するのではなく、社会全体にフォーカスするべきだろ
- 分析から行われる意志決定は過去の最適化!新しい未来は創れません
ポジショニングが決してダメなわけではないのですが、本質が焼き畑農業なのです。宇多田ヒカル、浜崎あゆみ、モーニング娘は、CDの売上を競っていましたが、年々とCDの売上は減少するばかりです。
3.知識(ナレッジ)は2つ-「暗黙知」と「形式知」-
ナレッジマネジメントとググってみて下さい。
横文字のついたサービスがズラズラと紹介されていますが、
とりあえず無視して下さい。混乱するだけです。
ここで覚えてほしいのは、
- 「暗黙知」・・・言葉にできない知識(アナログ)
- 「形式知」・・・言葉にできる知識(デジタル)
の2つの知識を野中郁次郎氏は考案しました。
ナレッジマネジメントを知る上で、行う上で、キモとなる概念です。
3-1 「暗黙知」言葉にできない知識
自転車の乗り方や絵の描き方、職人が長年の修行を重ねて体得してきたスキルです。これらの知識は、他人に教えたくても教えられない知識です。
例えばあなたが心の底から美味しいと思っているラーメン屋のレシピゲットしたとします。ところが、そのラーメン屋と全く同じ味を再現するのはムリです。
微妙な塩加減やお湯の切り方など言葉では説明できない部分がたくさんあるからです。このような経験値を習得するためには、時間をかけても同じ経験を共有するしか方法はありません。
ナレッジマネジメントの世界では、このような知識のことを暗黙知と呼びます。
3-2 「形式知」言葉にできる知識
形式知は暗黙知の真逆の知識(ナレッジ)です。しっかりと明文化されていて、他人に教えられる知識のことです。教科書、説明書、マニュアルなどで説明されていることは全て形式知になります。
WEB上の紹介されている情報のほとんどが形式知と言えるでしょう。
WEB・IT系やその他ノウハウ系の本を複数読んでも全く同じことしか書かれていないのは、元ネタが全て同じ形式知だからです。
形式知は、誰もがアクセスでき、組織内で共有ができます。欠点があるとしたら、スグにマネされることですかね。
3-3 まとめ 暗黙知と形式知について
暗黙知と形式知・・・どちらも一長一短です。
但し、ここで問いたいのはどちらの方が知識として優れているか、ではありません。
異なった2つの知識を上手に統合させて新たな知識を創造する。その新たな知識を組織力につなげるのが、ここでお伝えしているナレッジマネジメントの目的です。
日本の職人の技術(暗黙知)とアメリカのデジタルの技術(形式知)を統合させて、今までにないものを創ろう!そんなノリです。
2つが上手に混ざったときが最強なのです。そんな理論があるので紹介します。