-知識創造経営実践編-
まず、こんなマニアックな記事に訪問していただきありがとうございます。
この記事では、野中郁次朗さんが提唱するナレッジマネジメントを実践する方法について解説をしています。
野中郁次朗が考案した知識創造経営に欠かせないSECIモデルについての紹介です。前回の記事では、企業が保有する知識は2種類あり、ひとつが「暗黙知」、もうひとつが「形式知」であるとお伝えしました。
今回の記事では、SECIモデルの概要を説明して、その後に暗黙知の活かし方についてお伝えしていきます。記事の最後で、個人でSECIモデルを回す方法を実体験に基づいて書いてみました。
はじめに
1.知識創造経営とは?
一橋大学名誉教授野中郁次朗氏は、知識こそが企業の競争力であり、この知識を武器に変えることができる企業こそが21世紀に活躍する企業であると提言しました。
参考記事:ナレッジマネジメント(知識創造経営)とは?事例を4つ紹介
1-1 情報と知識の違い
料理に例えると、情報とは「材料」であり、知識とはその材料によって作り出された「料理」です。
野中郁次朗によると、情報とは目の前にある「ノウハウ」であり、それ以上でもそれ以下でもありません。対して、知識とは企業の競争力に直結する大切な資産になるのです。
とはいっても、企業の競争力に直結する知識は存在しているわけではなく、これ自体は組織が学習することで生み出すものと野中郁次朗氏は論じています。
1-2.暗黙知と形式知の違いを知る
野中郁次朗氏の本を手にすると必ず紹介されているのが、「暗黙知」と「形式知」の2つです。
- 「暗黙知」・・・言葉にできない知識(アナログ)
- 「形式知」・・・言葉にできる知識(デジタル)
この2つの長所と短所を補い双方の良さを最大限生かすことがナレッジマネジメントの真骨頂なのです。
2.SECIモデル-暗黙知と形式知を統合させる
SECIモデルとは、暗黙知と形式知の両方を上手に回しながら、いかにして組織の知識を最大限高めるかというところに焦点を当てています。
- 共有化:暗黙力→暗黙知
- 表出化:暗黙知→形式知
- 連結化:形式知→形式知
- 内面化:形式知→暗黙知
この4つの頭文字をとってSECIモデルと呼びます。これを数人でぐるぐる回そうというものです。
図と文章だけだとイメージがつかめないので、ここからは4つのステップに分けて考えてみましょう。
2-1 共有化:暗黙力→暗黙知
2人の職人が黙々と仕事をしているシーンです。お互いに会話らしい会話はしていませんが、同じ経験を共有しています。
この時は、まだ2人の経験で終っています。
2-2 表出化:暗黙知→形式知
翌日の朝礼です。昨日の仕事の報告をします。お役所的な事務作業ではなく、何を考えて何をした、結果どうなったか?など言葉にして伝えます。
黙っていれば、あなたと上司だけの共有体験で終りますが、全員に伝えることで、その経験がチーム全体に広がります。
2-3 連結化:形式知→形式知
なんと嬉しいことに、その話を聞いた同僚の方があなたにアドバイスをしてくれました。
「この道具を使ったら、昨日の業務のこの部分がもっと効率化できるよ」と。確かにその通りでした。
昨日必死になって入力をしたあの苦労はなんだったのか!と・・・しかし、このやり方は便利だ。
こうやって既存の知識に新たな知識が加わり業務が改善する兆しが見えてきました。
さて、ここでラッキーと思うか、それともしっかりと自分のものにするか?最後の内面化に入りましょう。
2-4 内面化:形式知→暗黙知
頭で解ったことをちゃんと体にしみこませるプロセスですね。「わかる」と「できる」は違います。しっかりと反復練習をすると形式知は暗黙知になります。
言い忘れましたが、暗黙知は感覚できるようになるため、形式知のままでいるよりも精度がグンと上がります。
暗黙知の「大きさ」「濃さ」「深さ」こそがあなたの能力でもあるのです。そして、形式知とは一人ひとりの能力が表出化して組織全体にストックされている能力です。
SECIモデルの本質は、個人が組織に教えながら、そして組織を通じて学ぶ、という一連のプロセスであることがお分かり頂けるでしょう。
3.SECIモデルの本質:目に見える価値だけで人を判断しないこと
SECIモデルの本質は、私たち一人一人が持っている暗黙知に対してどれだけ関心を寄せられるか?にかかっています。
例えば、
- プログラミングができます!
- 英語が話せます!Toeic900点をもっています
- 弁護士として裁判では負けなしです
- 本を出版しています
これらは間違いなく能力でありスキルです。しかし、SECIモデル的にいうなら、これらの知識は「形式知」という知識全体の半分なんですね。形式そのものは素晴らしいのですが、そこだけに注目をすると、目に見えない知識を無視することになります。
結果、お互いにとって損なんですね。特に、WebやIT業界では、この形式知に焦点が置かれがちですね。結果、個人個人が持っている内包的なセンスや資質を十分に生かせていない気がします。
もちろん、この問題を証明して、改善するのはこれからのことですね。
4.暗黙知を活かす4つの方法
これはインプロ部のページを立ち上げたときの構想でした。「即興」を通じてひとりひとりの暗黙知を活かすために実践してきた3つのことです。
SECIモデルやナレッジマネジメントに興味を持って頂いたあなたにだけこっそりと教えます。SECIモデルには興味があったのですが、高いお金を払って休日に大学院に行きたくなかったので自力で環境を作りましたね。
4-1 即興ディベート
当講座では、即興ディベートワークショップという即興型のディベート講座を運営しております。ディベートは、論理的思考力やプレゼンテーションスキル、交渉スキルを鍛えるのに適している議論の方法だといわれています。これは間違っていません。
しかし、本質は即興形式で議論をする環境そのものなんです。アドリブな対応が求められるため、暗黙知が自然と引き出されるように作られています。論理的思考力やプレゼンスキルはその次です。まずは「暗黙知」を引き出すこと。これに尽きます。
行き当たりばったりの議論を攻略するには、外から知識を求めるのではなく、今までの経験の中から知恵を振り絞って、それを言葉にすること。これこそが暗黙知を引き出す最適なトレーニングです。
SECIモデル、暗黙知、野中郁二郎さんは、MBA界隈ではあまり有名ではないので、マーケティング的な理由で大々的にアピール排していませんが、意外とインプロや即興ディベートの本質は暗黙知を引き出すことだったりします。
興味を持って下さりありがとう。
4-2 エニアグラム(9つの性格診断)
エニアグラムとは、9つの性格診断のことですね。スタンフォード大学でその効果が検証され、IBMやAppleなどでリーダーシップ育成や従業員研修で使われている性格類型です。
暗黙知は、結局のところ、個人の性格や気質の中に眠っています。
例えば、あなたが負けず嫌いな性格で、勝負事で負けたら悔しがるのは、あなたに統率者としての資質があり、その資質から勝つための戦略を常に考えているからでしょう。逆に、勝負事で勝ち負けは気にせずに、「楽しければOK」と考えられるのであれば、あなたには「楽天家」としての暗黙知があるはずです。
ひとりひとりの性格を暗黙知に転嫁できないかを検証中。それをしたいがために、2017年に一般社団法人コーチング心理学協会様のところで、エニアグラム心理学コーチの認定資格をとり、エニアグラム専門のコーチとして活動しております。
エニアグラムを活用して、自分の性格や資質に気づくことにより、目標や行動に対しての焦点が定まり、ひとりひとりの中で暗黙知が作られていく、というのがエニアグラム講座の裏レシピですね。
まずはクライアントの考えや価値観を聴くこと(共同化)次に、暗黙知を言葉にすること!(表出化)、さらに色々な切り口から診断を試す(連結化)と最後にお互いの気づきを振り返る(内面化)などエニアグラムを通じてSECIモデルは回せる足りもするんですよね。
SECIモデルは、少しファットしていますが、暗黙知と形式知の違いを理解して、SECIモデルを意識しながら、対話を進めていけば、コーチングツールとしても十分に機能するわけです。
4-3.コーチング
先ほどのエニアグラムと同じです。コーチの役割はクライアントに対して何らかの「気づき」や「視点」を与えて、クライアントが自ら目標に向かって動けるように施すこと。このコーチングを攻略する方法は、いかにしてクライアントから暗黙知を引き出すか?それに尽きますね。
コーチの役割は、クライアントの暗黙知を形式知に変えていくことかな???
※これ自体が暗黙知なので確信がないですね。(笑)
宣伝になりますが、このコーチングの技術を学ぶのなら、コーチング心理学協会様のサイコロジカルコーチングの講座がお勧めです。コーチング心理学協会様のページはコチラから。
4-4.ホームページ制作
ホームページ・ブログ何でも構いませんが、自分が知っていることを人に見せるために形にしていくのは、SECIモデルを回すよいトレーニングになります。
- 共同化→とりあず、ネタや方向性を考える
- 表出化→アイディアをメディアにする
- 連結化→自分のメディアを客観的に検証する
- 内面化→気づきを得たら愚直に繰り返す
と、このようにブログやホームページを作る過程でも、暗黙知を引き出すトレーニングができます。これはひとりで行うのが望ましいですね。
ひとりで回したらSECIモデルの意味がないじゃないか!?
と思うかもしれませんが、はじめはひとりでもいいんです。そのうちたくさんの人を巻き込んでいけばよいわけです。
私も、はじめはこのブログからスタートしました。そこからコツコツと改善を繰り返して、ディベート、エニアグラム、コーチングなどを通じてみんなを巻き込んでいきました。
野中幾二郎さんが著書で述べているナレッジリーダーもはじめはそんなものかと思います。
まとめ:SECIモデルは実践できる
ナレッジマネジメントは経営学の理論の中で最も実践しにくい理論のひとつだとお考えの方も多いのかもしれません。でも、意外とそんなことはないですよ。
本質がPDCAと同じで、まずは考えたことを実践してみる!に尽きますよ。あとは結果に身を委ねます。
是非とも実践してみて下さい。お金をもらってナレッジリーダーになるほうがやっぱりいいですね。
即興で。