経営学って面白そうですよね。
経営戦略論はどんなことを勉強するのですか?
社会人になると経営学に興味を持つ人って多いんですよね。大学生時代は、経営組織論や経営戦略論にハマり、ゼミだけはマジメに出席していました。
今思えば、しょうもない議論をしていたかもしれませんけれどね。
会社に入って役に立ったかと言われるとあんまり。
社会人ディベートCafe☆や即興ディベートワークショップでは、まぁまぁ役に立ちましたね。その手の話題に興味がある人が多かったので。
そんなわけで、本日は、「経営学(経営戦略論)」って何ですか?って質問にお答えしようと思います。
はじめに
1.経営学・経営戦略論とは?
パット思い浮かぶのが、「どうやったら企業は、儲かるんですか?」という質問にお答えしたものですかね。
もしくは、経営の方法ですかね。企業が高い行政気を出す方法を学問にしたものと言えるでしょう。
さて、その正体は?
1-1 学者が作ったコンテンツ
経営学を突き詰めると、学者が創ったコンテンツなんだな、と思えるようになりました。学者たちが研究を重ねて、経営学のノウハウをわかりやすく本にまとめただけなんです。ところが、学術的な経営と実務が段々と離れていって、段々と机上の空論なのでは?という疑惑が生まれた。
経営を学びたくて、大学やビジネスクールを志す人達がいるとします。それもかなり高額なお金を払って。
そこで、歴史に名高い企業の活躍事例を見ながら、なぜこの企業は成功したのかと、その法則を学ぶ学問だと思えばよいでしょう。
プロジェクトXを見ているときのワクワク感がありましたね。(プロジェクトXは見たことがありませんが・・・)
1-2 実践で使えるかは微妙
もちろん、経営学を学んだからといって、実務で役に立つかと言われたらNOです。この本を読んだら、翌日から大もうけできるわけでもありませんよね。つまり、そういうことです。
やっぱり、学問としての経営学と実際の経営は違うよね!という批判はあらゆるところからあります。
1-3 何が優れた戦略かで日々議論をしている
先ほど、経営学は『コンテンツ』だといましたね。経営学部やビジネススクールの教授たちは、コンテンツビジネス(情報ビジネス)をしているわけです。
だからこそ、自分たちの情報が優れていて、他の情報は役に立たないとディベートをしています。これも全てお客さんである企業や学生から自分たちを選んでもらうため。
ハーバードビジネスレビューなんかを読むと何となく見えてくると思いますが、本当に生々しいディベートをしています。
1-4 王道はポジショニング?
経営学でお勧めなのは、やっぱりマイケルポーターの競争戦略論だと思います。恐らく、あなたが経営学や戦略論と聞いて真っ先に知りたいことは、ある会社がライバルを出し抜いて勝ちに行く方法だと思います。
マイケルポーターの競争戦略論では、そこら辺が網羅的に解説されています。
ただ、この記事で紹介したのは、マイケルポーターではなく、ヘンリーミンツバーグの戦略サファリです。そして、ミンツバーグは、マイケルポーターをボロクソに批判してのし上がりました。
2.ミンツバーグの『戦略サファリ』とは?
戦略サファリとは、経営【学】・経営戦略【論】の指南書です。実務で役に立つネタは一切書かれていませんね。学問として経営学を学びたい人にはお勧めですが、実務に活かしたいと思っている方にはお勧めしません。
それでも、経営【学】・経営戦略【論】を極めたい人にとってはバイブルのような本であることは確かです。
2-1 ミンツバーグとは
マイケルポーターやドラッカーほど知られてはいませんが、カナダのマギル大学デソーテル経営大学院の記念教授です。
- 経営学者にして、『学問としての経営学や役に立たない!』と真っ向から批判した
- 「経営はアートだ。」「経営はクラフトだ」と妄想に近い発言をする凄くクリエイティブな人。
- ビジネスは学会で起きているんじゃない!現場で起きているんだ!と決め台詞を残した
- どっかの企業に居座り、マネージャーの仕事の仕方を観察していた人
Wikipediaで調べる限り、民間企業で働いた経験は殆んどありませんでした。働けばいいのでは?と思うのは私だけでしょうか?
ポーターとは仲が悪い。野中郁次郎からも嫌われていそう。
2-2 戦略サファリとは
ミンツバーグの名作。経営戦略論を10の学派に分けて、経営戦略とは何ぞや!と読者に問いかける本です。
- 『経営学はジャンルだぜー。さぁ、冒険の旅に出よう』とハジけている
- 『プロセス』『パースペクティブ』など凄く難解な言葉を沢山使っている
- 各学派を動物に例えて解説するなど遊び心にあふれた本
ミンツバーグは学者というより、アーティストに近いです。もしかしたら芸術家になれば成功したかもしれませんね。
いや、経営学会では本当にアーティストなのかもしれませんね。
では、いよいよ次章です。戦略サファリの旅に出ましょう。
3.戦略サファリ10の学派について紹介【前半戦】
戦略サファリでは、経営学を10の学派に分類しています。はじめの3つは、私たちにとって凄くなじみ深い経営学です。
経営戦略を策定する主人公は
- デザインスクール-経営者(CEO)-戦略を組み立てる人
- プランニングスクール-プランナー-戦略を計画・遂行する人
- ポジショニングスクール-アナリスト-市場や事業を分析する人
になります。では、それぞれを見ていきましょう
Ⅰ デザインスクール-動物:クモ/主体:CEO-
いきなり『クモ』って悪趣味だな!って思いますよね。WEBもクモの糸が語源ですよ。気にしないでくださいね。
まるで、クモが自分たちの巣を作るように、経営者(CEO)は、事業の戦略を設計しているというコンセプトです。
10の中で最もベーシックな経営戦略ですね。主にSWOT分析を用いて内部の経営資源と外部環境を連結することをモットーとします。トップが完璧な戦略を策定して、それを下に落とすようなイメージです。トップダウンといえばトップダウンですね。
代表的なのは、マイクロソフトや昔のIBMですかね。ソフトバンクもそうですね。
戦略を策定するのは、トップのみで現場は従うのみ!
「規範的な戦略マネジメントの中心的概念」とも呼ばれています。
戦略はトップが一人で組み立てて、他は手足なの?そんなことはないよね、と至る所から批判を受けて、時代はプランニングスクールに移りました。
Ⅱ プランニングスクール-動物:リス/主体:プランナー-
戦略は、はじめから完璧な設計図の元、トップダウンで行われるのではなく、現場や市場の流れを読んで、柔軟に進めていくものだろ!とアンゾフが唱えました。
例えば、ユニクロやアップルです。
当初決めた戦略設計書の通りに淡々と実行しているわけではありません。
ユニクロでいえば、狙えそうな国には積極的に進出しています。アップルの場合、パソコンのみならず、i.podやi.phone等の新製品を開発しました。
ユニクロやアップルの例から見ても解るように、戦略とは、設計書の通りに進めるのではなく、企業の成長過程や市場の動向をチェックしながら、トップではなく市場動向や企業の強み・弱みを現場レベルで見れる人が行うべきだとアンゾフは主張ししました。
こうして、時代はデザインスクールからプランニングスクールに移ったのですが、ついにマイケルポーターが登場しました。
「確かに、市場の動向を見て動くのは大事だけれど、ちょっと行き当たりばったりすぎないか?戦略はもっと定量化できるぜ」
これから始まる新しい時代の幕開け。マイケルポーター無双です。
Ⅲ ポジショニングスクール:動物:水牛/主体:プランナー-
アップルやユニクロの場合は、戦略家の腕次第です。凄く仕事熱心で実力のある人が行ってはじめて高い成果が出る戦略です。逆に考えると、戦略家の実力が伴わなければアウトです。
そして、戦略家も、来年は自分たちのクビが繋がるのか物凄く不安でした。そんなときに登場したのがマイケルポーターです。
「いやいや、プランニングなんて面倒なことせずに、はじめから狙えそうな市場で陣取りさえすれば、あとは自動的に儲かるんだよ。大事なのはリサーチだよ。」
凄く株主っぽいことを言いますね。そこで、ポーターが開発したのが、ポジショニングです。ファイブフォースと3つの戦略。それとバリューチェーン。
代表的な企業をいうなら、やっぱりインテルですね。アップル、IBM、富士通などのPCメーカーのようにあえてハードウェアを販売せずに、CPUに市場を絞り、『インテル入っている!』というキャッチコピーでひとり勝ちしました。
「PC販売だったら勝てないけれど、CPUで勝負をすれば、下請けでも強気に出れるだろうなー」という戦略。事前にキチンとリサーチをしてスマートに決める!
こんな感じで、80年代はポジショニング戦略がヒットして、ポーターは経営戦略界のスーパースターに昇格。誰もが、戦略=ポジショニングだろ!という時代になりました。
ところが、そんなポーターに対しても、新たな脅威が忍び寄ります。
4.戦略サファリ10の学派について紹介【後半戦】
ウハウハだったポーターにも落とし穴がありました。それは、ポジショニングは思ったより実践するのが難しいということでした。
というのも、ポジショニングを実践した戦略家たちが尽くしくじり、本当に成功したのはポジショニングをガン無視した無鉄砲なリーダーたちだったからです。
そこで、結局、デザイン、プランニング、ポジショニングは、机上の空論なんじゃない!と言い始める人達が登場しました。ミンツバーグもその一人です。(『戦略=机上の空論』と言いたいがために、戦略サファリを書いたような物ですからね。)
Ⅳ アントレプレナースクール:動物:狼/主体:アントレプレナー-
結局、戦略よりも大事なのは、「圧倒的な実績をあげている個人が何を考えて、どのように動いているかを研究することじゃない」と言い始める人達が出てきました。
エクセレントカンパニーを研究したトムピーターが有名ですね。ここら辺で、戦略・組織・システムといったハードの研究から人・技術・働き方・価値感などソフト的な側面の研究にスポットがあてられるようになりました。
本当に価値があるのは優れた戦略ではなく、チャレンジをする起業家精神だ!という思想が色濃く出ます。
ところがどっこい!どうやって優れた起業精神を研究するんだ!という壁にぶち当たります。例えば、スティーブジョブズは起業家として、卓説した才能を持っていました。(一部では批判もありますが)
では、どうやったら第二のスティーブジョブズを生み出せるのか?この壁にぶち当たり、このタイミングで攻めてきたのが、認知心理学を研究していたコグニティブスクールです。
Ⅴ コグニティブスクール-動物:狼/主体:アントレプレナー-
「コグニティブ」とは、聞き慣れないかもしれませんが、【認知】のことです。認知心理学といえば解りやすいかもしれませんね。
カーネギーメロン大学では、人間の認知構造や心理の研究がなされていて、アントレプレナースクールがこけたあたりで、経営学会に乗り込んできました。
ところが、コグニティブスクールが着手していたのは、やっぱり個人の心の中の研究です。企業が業績をあげるには何が必要か?というキーワードには結びつかず、人間の研究をしながら、独自の方向を目指していく形になりました。
コグニティブスクールは、解りやすくいえば苫米地英人さんです。あの人もカーネギーメロン大学ですよね。あんな感じです。
Ⅵ ラーニングスクール-動物:サル/主体:従業員たち
アントレプレナースクールやコグニティブスクールは、個人にスポットを当てすぎて壁にぶち当たりました。
このタイミングでこんな議論が出てきました。
「組織に天才はいらない。ひとりひとりの志とチームワークだ」という日本的な経営。90年代のジャパンアズナンバーワンの時代のことです。
このときに活躍していた日本企業を見ると、デザインスクール、プランニングスクール、ポジショニングスクールのように教科書通りの戦略は行われていませんでした。代わりに、無鉄砲な日本企業と揶揄されるように、海外に乗り込んでプロジェクトXプレイをしていました。
アントレプレナースクールやコグニティブスクールに代表されるような、優秀なリーダーはいたのかもしれませんが、リーダー以上に組織が一丸となり動いていたことが業績に直結したいう調査結果になり、本当の戦略は「強い組織を作ること」にスポットがあるようになりました。
では、強い組織とはどんな組織かというと、従業員ひとりひとりの知識や経験を有効活用にする仕組みや文化がある企業。野中郁次郎さんのナレッジマネジメントにスポットが当てられた時代でした。
こうして、野中学派が天下を取ったのかと思ったのですが、2000年代を迎える直前に大きな変化がありました。
業界が段々と固まり、IT主体の時代なり、市場環境のスピードが物凄く速くなった2000年代直前。ナレッジマネジメント特有の、冗長性(無駄)を大切にするようなマイペースな組織は淘汰され、強い組織の定義が「業界内の影響力」に突入します。
Ⅶ パワースクール-動物-ライオン/主体:力
Googleが天下を取る直前。ビジネス環境は、アイディアや商品力勝負ではなく、弱肉強食の時代になっていました。ここら辺で、業界内の政治力や影響力が幅を利かせる時代になりました。恐らく、アメリカが仕組んだのでしょう。
モノ作りでは、日本に負けたから、第三次産業を主体とする時代を猛スピードで創り上げ、市場のルールを変更します。
ここら辺で、製品力で他国を圧倒していた日本企業はドンドンと淘汰されます。ナショナル、ソニー、シャープのように。
一方で、Google、Amazon、Apple、Microsoft、オラクルといった第三次産業型の企業はドンドンと力をつけてきました。例えば、GoogleやMicrosoft等は、自分たちで物を作らず、優れたコンテンツがあれば迷わず買って、それを大きくさせることを得意としています。
いわゆる、第三次産業型の超肉食ビジネスモデルが力を持ち、影響力を行使できる状態こそが戦略ではないかという議論が生まれるようになりました。
ところが、このパワースクールの考え方も問題になり、影響力や政治力の思想が組織内部でも発生するようになりました。ちょっと、ドロドロした組織になり、色々と問題が勃発した頃に登場したのが、次のカルチャースクールでした。
Ⅷ カルチャースクール-動物:クジャク/主体:文化
カルチャースクールでは、よい企業文化を作ることが強い組織を生み、それ自体が戦略になるんだ!という考えです。
わかりやすいのが、リクルートやリンクアンドモチベーションです。コミュニケーション能力や企業風土にスポットが当てられたタイミングで誕生しました。
まさに、パワースクールに対するアンチテーゼです。ラーニングスクールと仲が良かったです。
勤勉に学習する組織+みんなで楽しく働く組織とまさに勉強会をモデルにした学派が完成しまたが、やっぱりここでも失敗。
よい組織とは何なのか?それはコントロールできるのか?ニワトリと卵じゃない?という議論が生まれて、ちょっと内部崩壊。
そして、一時的には良くても、時代やマクロ環境かが変われば、文化も変わるよね、ということで、今度は、「時代」「マクロ環境」にスポットが当てられます。
Ⅸ エンバイラメントスクール:動物-ワニ/主体:環境
「生き残る組織とは環境に適応した組織である。」という議論が盛んにおこなわれるようになりました。過去に成功した戦略が、今の時代には成功するとは限らないから、過去の実績と未来は分けて考えるべき。
本当に大事なのは、
- 内部から強い組織を作ることでもない
- 自ら市場を作りだすことでもない
- 環境の変化に対応すること
- 我々ができるのは、『従う』こと
アップルは、i.phoneを生み出し、私たちの生活を大きく変えました。他のスクールでは、アップルは、自ら市場を変えたという考えるのですが、エンバイラメントスクールは違います。、i.phoneのような新しい商品を生み出すことは、時代や環境が求めていることであり、アップルは時代の流れに従ったと解釈をするのです。
「従う」というとネガティブなイメージを持つかもしれませんね。補足をすると、以下の解釈もできます。
今の時代は、英語を勉強した方がよいでしょうか?英語は話せた方がよいでしょうか?
もしもこの先グローバル化がドンドンと進展していくのなら、答えは間違いなくYESです。英語を習得すれば有利だといます。
ところが、この考えは裏を返すと、私たちは、【英語の圧力】【グローバル化】【IT・WEBの世界】の時代に屈したことにもなるのです。
つまり、環境という絶対的なものがあり、そこに従う術として、誰かは忘れましたがカオス理論やコンティンジェンシー理論を唱えました。
こうして、環境や時代という絶対的な力のもとに、結局従うしかないのか?企業固有の意志はどうなる?いや、待てよ。逆に環境を作った企業もあるのでは?イノベーションを起こした企業もあるよな
といった、反勢力が生まれ、カルチャースクールとその他のスクールが更にディベートを展開しました。
そこで登場したのが、ミンツバーグのコンフィギュレーションスクールでした。
Ⅹ コンフィギュレーションスクール-動物:カメレオン/主体:不明
「どの戦略論が正しいかなんて答えはないさ!全ては状況次第さ。
必要な時代に応じて必要な戦略を選べばいいだけじゃない!」
とミンツバーグは言い切りました。
- 何が起きるかわからないときは、エンバイラメント
- リーダーが必要なときは、アントレかコグニティブ
- 組織内部を強めたければ、ラーニングやカルチャー
- キチンと考えて、戦略を組み立てたけば最初の3つ
- 力技で勝っていきたければ、やっぱりパワースクール
と、ひとつひとつの特徴を見極めて、ドラえもんの道具のように器用に使いこなせば優れた戦略は誰でも実行できると言い舞いsた。
めでたし、めでたし!と言いたいところですが、
「そんなの無理!」
というのが正直なところですね。(笑)
こんな天才技ができるのは、やっぱりミンツバーグぐらいなわけです。
コンフィギュレーションスクールの本質は、
- 空手の達人と戦うのなら、ボクシングで対抗すればよい
- 相手がボクサーであれば、カポエラで勝負をすればよい
- 相手がカポエラ使いなら、プロレス技をかければよい
と言っているようなものです。
こうして、グダグダになりつつも、10のスクールのコンセプトは固まり、戦略サファリという本が世に出ました。
色々と面白かったでしょ(笑)
5.戦略サファリのホントの狙い
この本は、経営戦略や戦略論は10の学派に分類できるんだぜ!とミンツバーグは説いていますが、少し違います。
ミンツバーグが本当に言いたかったことは、「オレのスクール(コンフィギュレーション)がいちばんすげぇ!」ってことですね。
格闘技の中で何がいちばん強いんですか?という質問に対して、「どれも一長一短だから、総合格闘技を学ぶべきなんだ。さぁ、コンフィギュレーションスクールにおいで」というミンツバーグのマーケティングでした。
お見事
最後に勝ったのは、ミンツバーグのコンテンツなのかはわかりませんがね。。。。