「デメリットは、●●。論点A、B、Cに分けて説明します。論点A-内因性・・・」
「論点1の『●●だから××になる』という議論。ここに反駁します。」
ディベート初心者・未経験者の方はあまり聴き慣れないかと思います。恐縮です。
今回は、ディベートの試合で必ず登場するであろう、「論点」について解説します。
先日、即興ディベートワークショップで議論全体は個々の論点の塊である、とお伝えしたのですが、今ひとつ解ってもらえなかったので、記事にしました。
はじめに
1.論点とは?
簡単に説明すると、議論全体を細かく分解したときにできるひとつのブロックです。即興ディベートワークショップでは、論理はブロックの集合体だと教えています。議論全体は個々の論点によって組み立てられています。
日本政府はタブレット授業を進めるべきである、というテーマを例に、議論全体と個々の論点の関係についてみていきましょう。
1-1 主張と理由の関係
いきなりですが、問題です。
日本政府は、小学校の教科書をタブレットにするべきである、というテーマがあるとします。以下の3つは主張でしょうか?それとも理由でしょうか?
- 紙媒体の教科書は使い勝手が悪い
- タブレット活用するとITや英語教育ができる
- タブレットを使った方が紙の教科書より安価になる
結論から言うと、「理由」です。なぜなら、「日本政府は、小学校の教科書をタブレットにするべきである」という命題に対しての答えだからです。
- 理由1-紙媒体の教科書は使い勝手が悪い
- 理由2-タブレットを活用するとITや英語教育ができる
- 理由3-タブレットを使った方が紙の教科書より安価である
と、このようにひとつの主張ととその議論を支える理由が複数組み合わさって、ひとつの議論ができあがります。今回でいうと、「小学校の授業にタブレットにするべき」という主張に対して、3つ理由を用意しました。
1-2 理由が主張にもなる
ディベートの試合では誰もが行うミスです。
テーマ:「小学校の授業にタブレットにするべき」の理由
- 理由1-紙媒体の教科書は使い勝手が悪い--その理由は?
- 理由2-タブレットを活用するとITや英語教育ができる--その理由は?
- 理由3-タブレットを使った方が紙の教科書より安価である--その理由は?
と、その理由そのものを支える理由が必要になってきます。
少なくとも、「紙媒体の教科書は使い勝手が悪い」「タブレットを活用するとITや英語教育ができる」「タブレットを使った方が紙の教科書より安価である」とポンと一言いわれても、聴いている側からしたら、
- 「えっ・・・その理由は?根拠は?そこのところを説明してよ」
となるわけです。
つまり、議論全体の理由を示したら、次にその理由に対して別の理由を示す、という動作がディベートでは必要になってきます。
- 説得力の高い議論=どれだけ理由の理由について深く掘り下げて説明できているか
だからです。
2 よくある失敗
ディベート未経験者の人が試合をするとよくやりがちなミスです。立論のタイミングで、たくさん論点をあげるのですが、その論点ひとつひとつの説明が十分にできず、結果として立論を聞いた時点でジャッジから論証が不十分だと判定されるケース。
これも先ほどの、「小学校の授業にタブレットにするべき」から見ていきましょう。
2-1 一見まともな議論
先日の参加者同士の試合をしていたときのことです。
「小学校の授業にタブレットにするべき」というテーマで肯定側はこのような議論を出しました。
教科書教育はダメである
教科書による授業を続けても、子供たち学習効果は期待できません。なぜなら、教科書には2つの問題があって、ひとつは学年が上がるごとに、使わなくなること。つまり、過去の復習ができないことです。次に、ITや英語等の先進的な教育ができないことです。
その後に同じように、タブレットにした方が教師の負担が減らせるなど別の論点を追加して、同じように100文字程度の説明を付け加えました。
さて、どうでしょうか?
何だかまともなことを言っていますが、実はこの議論にも落とし穴があります。
2-2 理由の深堀が全くできていない
先ほどの議論の作りを整理しましょう。
今回の立論で肯定側が本当に言いたかったことは、今の教科書教育には問題がある」ということです。それを示す理由として、
- 学年が上がるごとに使わなくなるから、過去の復習ができない
- ITや英語等の先進的な教育ができない
と話を2つをあげました。もちろん、この理由は間違っていません。少なくとも、この理由を聞いた時点で、正直「なるほど!よいアプローチ」だと思いました。
ところが残念なところに、この2つの理由をポンと添えただけで、その説明は終わってしまい、次の論点へ移りました。
2-3 ひとつの論点を徹底的に深掘りするべき
もしも、
- 学年が上がるごとに使わなくなるから、過去の復習ができない
という議論をしたければ、
教科書は紙で形があります。当然、ランドセルに入れるには限界があります。流石に、ランドセルの中に教科書を20冊入れるのはムリでしょう。重いから。更に、学年が上がればその教科書は授業で使わなくなります。そうなると、自然と子供達は過去の教科書をもたないのですが、もしも過去の授業で学んだことを完全に理解していなかったらどうでしょうか?例えば、これから分数を勉強するのに、実は掛け算や割り算を解っていなかった。そんなときに、小学3年生の頃に使っていた教科書が手元にあると助かるわけです。ところが、そんなことができないのが、現在の教科書教育です。教科書が重いからです。では何が問題かというと、一度授業に躓くとドンドンと落ちこぼれていってしまうわけです。それはやはり避けるべきです。よって、タブレット授業を取り入れましょう、というのが肯定側の今回のテーマを実行する理由です。いつでも教科書のデータをダウンロードできる状態が目の前にあれば、途中で躓いても過去の教科書を参照できるから子供たちは助かるわけです。
こんな感じです。文字数にすると、400文字ちょっとです。1分ちょっとあれば一気に発表できるレベルです。もちろん、ディベートに慣れていなければ、2分くらいで伝えても構いません。
- 学年が上がるごとに使わなくなるから、過去の復習ができない
とポンと伝えるよりも、何が言いたいのかは伝わるはずです。情報量が圧倒的に多いからです。
逆にいうと、ひとつの論点で、少なくとも400文字の情報量がないとカウントしてもらえません。いや、400文字でも足りないくらいです。もしも、スピーチ時間が2分なら、その2分を使ってひとつの論点を全部説明するべきです
これはどこのディベート団体に参加をしても同じです。
2-4 議論の数は少なくてもよい
ディベートはたくさん議論を出せば有利だと勘違いしている人がいます。
逆です。
議論は1つで構いません。その代わりに、その議論の中にある論点を細かく分けてトコトン深堀して下さい。特に立論ですね。
メリットは1つで構いません。デメリットは多くて2つです。
中には、メリットを3つも4つもメリットを出す選手もいますが、ひとつひとつの説明が先ほどの400~500文字スピーチのようにされていなければ、ジャッジはその議論をカウントしてくれません。