最近、即興ディベートワークショップをしていて思ったことを赤裸々に書きます。
ディベート=人前で堂々とカッコよく話す場、発表の練習をする場と思い込んでいる人がいますが、これは誤解です。
スピーチの上手さを競うのではなく、説得力を競う場です。スピーチ力で問われるのは、表現力です。ジャッジによって言葉を使い分けるスキルですね。
まずはじめに
ディベートは、大きく分けて2つあります。ひとつが論証重視のアカデミックディベートともうひとつがスピーチ重視の即興ディベート。
アカデミックディベートの場合は、証拠資料を使ってひとつひとつを論証していくのに対して、即興ディベートは証拠資料を引用せず、自分の言葉で論理を作ります。
証拠資料を使わない分だけ、即興ディベートの方が簡単にできるイメージがありますが、これは誤解です。
もくじ
1.論理・論証力は必要
1-1 経験知が証拠資料になる
確かに、データや資料は必要ない分、今までの人生を通して見てきたこと、聴いてきたこと、ストックしてきた知識や経験を第三者に解るように伝えなければなりません。
例えばマクドナルドの売上が下がった、ということを証明するとします。アカデミックディベートの場合、ネットや雑誌からマクドナルドの売上が下がったことを説明している記事をもってくれば一発で伝わります。
「ほか、ここにデータがあるでしょ!だから、マクドナルドの売上は下がったんだ!」と言えばよいわけです。アカデミックディベートは、基本この繰り返しです。ところが、即興ディベートでは、データが使えないため、マクドナルドの売上が下がったことも自分の言葉で説明しないといけません。
1-2 では、どうやって証明するのか?
結論からいうと、数字やデータで証明をすることは不可能です。なので、数字以外で証明をしなくてはいけません。言葉だけで皆から解ってもらう必要があります。
そこでお勧めなのが、次の3つです。
- 経験的事実-自分が知っていることを伝える
- トレンドニュース-みんなが知っていること
- 不変の真理や世論
経験的事実とは?
あなたが知っていることです。もしくは、あなただけが知っていることです。
例えば、あなたがマクドナルドに行って、数年前と比べてお客さんが少ないと思ったら、「以前マクドナルドに行ったのですが、満員ではありませんでした。数年前は行列だったのに。」と言えばOKです。
え・・・これで事実として認めてもらえるのか?と言われたら、事実としては弱いですが、「マクドナルドの売上が下がっている」と一言述べるだけよりも、十分に説得力があります。
トレンドニュース
1-2 スピーチ力=人生経験×想像力×表現力
これまでにあなたが人生を通して経験してきたことです。結局人は、自分が経験したことしか言葉にできません。贅沢を言うなら、普段から他の人が心の中でどのように世界を見ているのだろうか?頭で何を考えているのだろうか?と想像して、人の経験も言葉にしてみて下さい。方法はワークショップで教えます。
目の前の相手に合わせて、柔軟に言葉を変えてたり、伝える前に言葉をチョイスしたりします。そこら辺が表現力になります。
2.スピーチは下手でもよい
いきなり上手に話そうとしても難しいと思うので、無理をする必要はありません。試合で勝つために必要なことを伝えればよいし、きれいに話そうとしてまとまらなくなるのなら、その場で思いついたことを少しでも多く伝えて下さい。下手でもいいです。
2-1 上手く話そうとすると失敗する
スピーチが上手なら即興ディベートはカンタンと思わない方がよいです。時々、トースト●スタ●ズでスピーチを鍛えている人が即興ディベートワークショップに参加をします。
そこで日々気付くことは、スピーチが上手な人ほど、いざディベートの試合となると上手に話せません。鮮やかに楽しませいようと話したり、感情に訴えかけるような言い回しをしようとして、大切なスピーチ時間を無駄にしています。
2-2 結果、初心者・未経験者に負ける
一方で、全くスピーチのトレーニングを受けていない人の方が試合では勝つことの方が多いです。どこかで開き直って、キレイにしゃべることを放棄して、必要なことだけを淡々と伝えているからだと思います。
繰り返しになりますが、ディベートはスピーチの上手さを競うのではなく、説得力や論証力を競います。
3.カッコつけず自然な言葉使いでOK
アカデミックディベートの場合は、ディベートのルールを全て知っていて、過去にディベートのトレーニングを受けたディベートの専門家達がジャッジを担当します。だから、ディベートっぽい話し方になりますが、即興ディベートは逆です。
普段通り話していいかも。
3-1 話そうとすると失敗する
どうしても人前に立って発表をしようとすると、かしこまったり、ちょっと構えたりしますが、その話し方をして失敗するくらいなら、その場に座って話しても大丈夫です。いちばん話しやすい状態でスピーチをして下さい。
フローシートを読みながら、下を向いて話しても大丈夫です。私がジャッジのときはそんなに気にしません。ボソボソと話しても聴くことはできますから。
正直、試合中はあなたのスピーチ内容をフローシートに書くことで精一杯です。声のトーンや抑揚を気にしているヒマがないのが本音です。もちろん、立ってスピーチをしてもOKです。そこら辺は自由に。
3-2 報告・連絡をするノリでOK
ぶっちゃけ、普段の話し方で大丈夫です。上司やお客さんに何かを伝えるような感覚です。スピーチ前に考えていたことを淡々と報告するようなイメージで全く問題ありません。
但し、ジャッジに相談をされても困ります。流石にアドバイスはできないので。
これは当ワークショップオリジナルかもしれませんが。ディベートの専門家(教授ディベーター)を説得できても、一般人を説得できないと何の意味もないですからね。ある意味日常の延長戦かもしれません。
アカデミックディベートと即興ディベートの違いについて詳しく知りたい方は、「アカデミックディベートと即興(パーラ)ディベートの違い」の記事をお読みください。取り組み方から学べるものなど赤裸々に書いています。
※別WINDOWが開きます。
・・・・ハードルを上げすぎたら申し訳ございません。即興ディベート=お手軽なディベートとは思われたくないだけです。ゼロの状態から自分で考えて、自分の言葉で伝える!心構えができているかどうかです。
以上です。