さて、マイケルポーターのファイブフォース2つ目の競争要因である「業界内の競争」です。同じ競争であっても、業界によって競争の仕方は異なる!とポーターは指摘しました。まさにその通りですね。
製造業であれば製造業の特有の競争があって、IT・WEB・コンサルティング企業とは違った形で競争をしている、なんて感覚を最後に持ってもらえればと思います。
はじめに
1.ファイブフォース(5つの競争要因とは)
マイケルポーターの競争要因の真ん中にある競争ですね。マイケルポーターについて解らない人は、「競争戦略の世界|マイケルポーターが提唱する業界内に潜む5つの脅威と3つの基本戦略」の記事を読んで下さい。
マイケルポーターの競争戦略論については一通り解説をしております。
2.競合他社の脅威とは
チェックするべきポイントは次の8つです。
- 1.同業者の数
- 2.業界の成長
- 3.コスト(固定・在庫)
- 4.差別化のしやすさ
- 5.個数の変動性
- 6.ライバルの動きの変動
- 7.戦略の選択肢
- 8.撤退コスト
ですね。では、一つずつ例を交えて学んでいきましょう。
2-1.同業者の数(多いと高い)
同じ市場の中にどれだけライバルが存在するかですね。多ければ多いほど、競争は激化します。
ある飲食店専門のコンサルタントの方はこう言います。「やっぱり食べ物は毎日食べるんだから、いちばん儲かるのは飲食店だよ」と。
なるほど!その理屈は一理ありますが、最も消費される業界だからこそ、最もライバルが多い市場でもあるのです。ですから、飲食店は顧客が多い市場ではありますが、競争が激化しやすい市場であることも覚えておいて下さい。
余談ですが、飲食店は多くても、飲食店専門のコンサルタントは、飲食店ほど多くはありません。これが何を意味しているかは解りますよね?
2-2.業界の成長(遅いと高い)
業界全体が成長しているときは、市場がドンドンと拡大していきます。すると、モノが売れます。
80年代後半の不動産バブルの時は、土地が高値でもドンドンと売れていきました。ITバブルのときも、企業がここぞと社内のシステム化やHP製作会社に仕事を発注していきました。この後に、参入する企業が多くなり過ぎ、市場は飽和しました。
業界の成長が遅い、もしくは縮小してくると、企業間で限られたパイの中で一定の利益を確保しないといけません。
少ない椅子を皆で奪い合う結果になります。
いつの時代になっても、外食産業が廃れないのは、人はいつでも食べ物を欲するからですね。
だから、同業者の数が多くなるんですね。
2-3.コスト(固定・在庫)の高さ
コストがかかる業界ほど、そのコストを回収しようとして競争が激化する傾向にあります。
固定コストと在庫コストとは、企業にとって簡単に下げられないコストのことを指します。2大コストと勝手に呼んでいます。
家賃や人件費は、まさに固定コストですよね。売り上げがどうであれ、毎月当たり前のように発生するコストです。利益が出なければアウトなので、固定コストが高い事業ほど沢山売り上げを上げようとします。
製品が売れないとそれだけで事業の経営を圧迫しかねないということです。
次に、「在庫コスト」ですね。モノを販売したことがある人なら解ると思いますが、在庫がたまると本当に辛いです。管理するだけでも、人件費がかかりますからね。
アパレルショップなので、今まで数万円で販売していた商品を、80%オフにして売ろうとするのは、この在庫コストを抑えたいからです。服は食べ物と違って腐らないだろ!と思いますが、倉庫に入れておくだけでも管理しなりません。すると、余計に人件費がかかるのです。
それが、予想以上のコストを発生させるのです。
だから、企業は1日でも早く在庫を減らそうとして、過剰な広告を打ったり、あり得ないくらいの価格で販売したりします。
一方で、DeNAやGreeのようなデジタルコンテンツを配信している企業であれば、このような悩みは少ないかもしれません。
商品もデジタル、管理もデジタルです。
コストの80%は、人件費ですからね。。。
お金をかけて、内部ががっちりと固まっている企業ほど、環境の変化に弱くなります。
2-4.差別化のしやすさ
製品やサービスの差別化がしにくいとは、言い換えればどの企業も似たような商品・サービスしか扱っていない状態のことを指します。
「どうせどれも同じ商品なんだから、一番安いのでいいじゃない?」と価格が基準になってしまいます。すると、価格競争の始まりです。
例えばバナナを買うとします。八百屋で買っても、スーパーで買っても、コンビニ買っても同じですよね?
なので、同じ商品を販売しているのなら、
- 八百屋さん→お客さんとコミュニケーションをとる
- スーパー→ポイント制にして囲い込む
- コンビニ→多数のラインナップで来店数を上げる
商品以外のところで差別化をしています。価格だけで判断されないような販売戦略が本当に必要です。
DOCOMO、AU、ソフトバンクも同じような販売戦略を採用しているのですが、牛丼チェーン店並みにまねされていますね。
一方で、クレジットカードや金融サービスのキャンペーンのように、一見差別化しているつもりでも、どこが決定的に差別化されているのかが解らないケースもありますよね。選ぶ基準がCMや芸能人だったりします。
2-5.個数の変動性
生産個数を小刻みに増やせるか、どうかです。柔軟かどうかですね。
企業の利益を安定させるためには、毎年同じ製品を生産して、同じ数だけ提供することです。
製造業であれば、目標販売個数が決まっていて、それを前提に工場を稼働させています。
極論に聞こえるかもしれませんが、ある工場で1カ月で生産できる製品の数が1000個だとします。
もしもこの時に取引先から、「すみません、あと200個追加してくれますか?」と注文が入ったときを想像してみてください。
「解りました。200個追加ですね」で済めば、それに越したことはありません。
ところが、200個だけ製造ですまないこともあります。200個の製品を追加生産するだけでも、一度でも機械を動かしたら、もう1000個程を製造しなければならない状況になることもあります(みたいです)。
「いやー、厳しいです!」と断るなら、「あ、じゃあ、他に行くよ!」と言われて、お客さんを失うかもしれません。
スケールメリットを武器にしている企業であれば考えられますよね。
すると、無駄に製造した分も無理して販売せねばならず、供給過多になり、競争が激化する可能性がでてきます。
2-6.ライバルの動きの変動
ライバルがいきなり何を仕掛けてくるかわからなければ、競争が大変になります。
IT・WEBは、まさにこの競争要因が強く内在しています。
過去のソフトバンクがそうでしたね。ソフトバンクは、スティーブジョブズとi.phone販売のライセンスを結び、そこからi.phone販売代理店として一気に駆け上がりました。それまでのモバイル業界は、DOCOMOが1番、auが2番みたいな状態でしたが、状況が一気に変わりました。
今の時代ビジネスをする以上、このような競争要因は目の前にたくさんありますね。唯一少ないのがインフラ業界でしょう。
フットワークが軽ければ軽いほど、この競争要因が強くなりますね。
逆にいうと、変化の激しい業界に身を置いていると思っているのなら、腹をくくって自ら仕掛けていく姿勢が試されます。
一方で、このような業態はゲリラ戦を繰り返したり、他社にあっさり真似されるケースも相次いできます。
いずれにせよ、気が抜けませんね。
2-7.戦略の選択肢|一発逆転ができるか?
これも先ほどのソフトバンクと同じですね。上手くいけば、業界内で一人勝ちができる!と思ったら、必死になりますからね。
金融、コンサルティング、広告などの一攫千金ビジネスによくありがちです。企業というより、個人かもしれませんね。
薄利多売をしているところよりも、一度の取引で大きなお金が生まれる仕事ですね。
人材紹介業では、紹介した人の年収の1/3がエージェントに入ってくるので、一獲千金の要素が強い業態かもしれません。
2-8.撤退コスト
「参入障壁」については、ファイブ・フォース-競合他社-業界内の競争は8つ!でお伝えしましたが、逆の「撤退障壁」もあります。企業がある事業に失敗して赤字を垂れ流しているのになかなか撤退しないのは、撤退したらしたらでお金がかかるからです。
極論をいうなら、工場を一つ壊さなければなりませんし、これだけでもビックリするくらいのお金がかかります。
勿論、このような直接的な要因ばかりでなく、
- 他の事業にも悪影響が出る
- 会社の信用を失うかもしれない
- 失敗を認めたくない経営者
など、間接的な要因も沢山考えられます。逆に考えると、撤退コストが高いと思われている業界ほど、参入障壁が高いと考えられるため、そのポジションにいれば新手にプレーヤーにおびえることも少なくなります。
まとめ
以上が、マイケルポーターの業界内の競争要因-8つでした。
- 1.同業者の数
- 2.業界の成長
- 3.コスト(固定・在庫
- 4.差別化のしやすさ
- 5.個数の変動性
- 6.ライバルの動きの変動
- 7.戦略の選択肢
- 8.撤退コスト
どの業界にもライバルはいますよ。
ただ、「あーライバルが多いよね」の一言で終わらせるのではなく、具体的にどういうライバルがいて、業界内で競争をしているのか?とここら辺を見極められるようになってくれれば、これほどうれしいことはありません。
また、私たち自身が、相手から「脅威」だと思われるような存在にならなくてはですね。
報復は怖いですが・・・。