新卒の頃に入社した会社がITの客先常駐でした。「システムコンサルタント」というカッコいい肩書の仕事でしたが、何をするのかというと、従業員をお客様先に常駐させて、利ざやを稼ぐビジネスモデルです。
IT業界では一般的かもしれませんね。いわゆる、「客先常駐」です。
もはやIT業界では常識になっていますが、IT業界をよく解っていない人のために、簡単に解説をしますね。
それから、10のリスク、そして、もしもあなたがこのリスクにヒットしたらどうするか?などをお伝えしていきたいと思います。
はじめに
1.客先常駐とは?
客先常駐とは、正社員・非正規社員に問わず、お客様先で派遣社員として現場の作業に従事する働き方です。技術は県と考える方が解りやすいですね。
2.クライアントにとってのメリット
IT業界では、仕事がプロジェクト単位で動いているため、忙しいときは忙しいし、仕事がないときは本当にヒマです。加えて、技術はものすごいスピードで変化をします。
2-1 必要なときに人を確保できる
プロジェクトが繁忙になり、人手が足りなくなれば、外から人を呼ぶことができます。自社で人を採用すると、人事部を動かしたり、また採用するために広告費も発生します。そして、条件にマッチした人が申し込んでくれる保証はどこにもありません。
であれば、必要なときに、必要な人材を必要なだけ、用意してくれる客先常駐型企業は、クライアントにとって便利な存在です。
2-2 不要になれば離任することもできる
ここもポイントですね。プロジェクトが終わって、ヒマになったからと言って解雇ができるかと言われたら、日本では無理です。この辺は、解雇要件を参照してください。ところが、仕事もないのに人材を社内に置いていると、人件費だけが発生します。
丁度リーマンショック直後でしょうか?ソニーが中高年を対象にしたリストラ部屋の問題。仕事がない人達を、リストラ部屋という場所において、社内で転職活動をさせるという精神的にプレッシャーをかけながら、自ら転職をするように仕向けたのです。
もちろん、大企業がこのようなことをしたら、一発でコンプライアンス違反になります。そして、叩かれるのは経営サイドの人達です。また、仕事がないとはいえ、いつまでも会社に置いておけば、やはり会社のコストを圧迫します。
何が原因かというと、日本の解雇要件が厳しいことから起因する逆転現象とも言えるでしょう。
だから、必要なときに外から自分たちの要件にマッチした人材を呼べて、仕事がなくなれば離任させることができる客先常駐型企業は便利な存在なのです。
ちなみに、この制度をいちばん利用しているのが、政府や行政機関だったりします。例えば、国家が運営しているWEBサービスやシステムの開発や運用は大企業に発注していますが、その大企業はシステムの設計や管理をするだけです。現場の業務に実質しているのは、無名の客先常駐の人材派遣会社だったりします。
時々、大企業や行政機関の情報流出が問題になっていますが、現場で言われているのは、「実はあれねー。派遣さんがやっていることなんだよ」とプロジェクトマネージャーの方がぼやいていましたね。
3.派遣会社のメリット
クライアント先に社員を常駐させれば、お金が入ってくるということですね。何よりも大きいのは自社のコスト負担がかからないところでしょう。クライアントから業務を委託することで、以下3つのコストが発生します。
3-1 会社が負担する固定費
例えば、自社で業務を請け負うには、それなりの設備投資が必要になります。従業員の数だけパソコンやデスクを用意するのはもちろん、セキュリティーを強化する必要もあります。
それ以前に、社員が600人なら600人が働ける物件を探さなければなりません。ひとりが働くスピーすが畳み2畳分だとして、100人いれば200畳のスペースが必要になります。新宿駅付近だと、家賃が200万を超えるところがありました。
人を一人雇うのに、会社は採用や教育費などで、その人に支払う給与分の3-4倍を支払っていると言われます。給与+仕事に必要な設備+採用×教育という内訳になるからだと考えられますが、社員をクライアント先に出向させることで、必要な設備や教育費がかなり浮くと考えられます。
3-2 日々の業務で発生するコスト
次に、クライアントから業務を請け負うと、営業や打合せをするのに、移動コストがかかります。クライアント先までの移動するのに、都内だと片道30分。往復で1時間とします。もちろん、手ぶらでクライアントに出向くわけには行きませんから、資料の準備やスケジュールの調整もします。その時間が1時間とします。
上司と現場の社員が一緒に移動すると2人分のコスト。ひとりあたりのコストを3000円として、2人で6000円。
6000円×2時間×2人=24000円
案件の数だけ、移動の工数はコストとして、企業にのしかかってきます。
3-3 管理職のコスト
管理コストとは、言ってみれば、上司の上司が仕事を管理するコストのことです。例えば、あなたは現場の社員だとします。課長の指示の元、その仕事を進めているとします。先ほどの、24000円/2時間をあなたと課長の工数だと考えて下さい。
ところが、その上に部長がいます。部長は、その案件を統括している立場です。自社で仕事を請け負えば、その仕事全体の進捗を管理しなければなりません。もしも、部長が仕事の進捗を管理するのに、1日平均して1時間割いているとします。加えて、部長のコストを1時間で換算すると4000~5000円。
結果、部長が案件をひとつ管理するのに、月で10万円以上かかる計算になります。
だから、いっそのことクライアントから仕事を引き受けるのではなく、社員ごとクライアント先に常駐させた方が、会社はコストの負担を負うことなくなるということです。
このように、日本の解雇に対する規制が厳しい中、クライアントと派遣会社の双方がwinwinになれるビジネスモデルとして出来上ったのが、顧客常駐型技術者派遣です。
4.ITエンジニアの相場(単価)はいくらくらいか?
ITエンジニアの相場というのは、クライアント先の企業から頂いている単価のことです。ITエンジニアが会社から直接頂いている給与のことではありません。金額については、お客さんや上司から聞き出しましたが、あくまで個人的な経験です。どの程度信ぴょう性があるかはわかりません。
ITキャリアオンライン様のページで興味深いデータがあったので、引用します。
客先に常駐して仕事を行うITエンジニアの場合、派遣先の企業から人月単価という形で代金が支払われます。
ある大手システム開発会社が設定している人月単価は下記のとおりです。
システムエンジニア(SE):800,000円
ネットワーク技術者:800,000円
システム運用管理者:700,000円
プログラマー(PG):600,000円
ヘルプデスク:480,000円
オペレーター:450,000円
Web監視担当者:650,000円これが、中小のシステム開発会社だと足元を見られるせいか、かなり金額が抑えられます。
クライアント先にとって、この金額が高いか安いかは、先ほどのこれまでのコストの議論を参考しにして下さい。少なくとも、クライアント先にとって、時給3000円を払って、現場の作業をさせるのなら、いっそのことルーチンな部分は派遣さんに任せて、自社の社員にはもっと高度で創造的な仕事をさせよう、というロジックです。
5.まとめ
さて、ここまで読んで頂きありがとうございます。近年、技術は売り手市場だと言われていますが、技術が売り手市場なのは、技術者を採用して、現場に派遣して、利ざやを稼ぎたい企業がいるということです。