ケビンクローンはディベートで負けなし?嘘か本当か?

2017年4月20日

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もう今から10年前のお話。
「木村ってケビンクローンにソックリだよね!」とある人から言われて、
みんなに笑われて、その場で沈殿したことがあります。

ムキになったり、反論したら、余計からかってくると思うので、
その時はグッと耐えました。今思うと、本当に嫌な思い出ですね。

で、2017年3月頃にあるテレビ番組で
橋下氏とケビンクローン氏のディベートが話題を呼んでいることをYoutubeで知りました。

こちらの番組で自称ディベートで負けなしの論客として、橋下へとテレビ討論をしていました。

ディベートの誤解を解く意味でも、ケビンクローン氏についてお話をします。

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はじめに

1.ケビンクローンって誰?

ケビン・クローンはアメリカ合衆国 シカゴ生まれの国際コラムニスト、人類学者、映画監督、プロデューサーでありタレント。 所属事務所はサイン。

ケビンクローン氏の肩書は国際コラムニストですね。キャラクターからしては、タレントに近いかも。『ここが変だよ日本人』で凄く目立っていましたね。たぶん、この番組がケビン氏が知られるようになったいちばんのキッカケかと。

あまり知られていないかもしれませんが、本も出版しています。

1-1 ケビンクローンの空爆式ディベート革命-日本人が死んでもアメリカ人に追い付けない理由

あー、どれだけ日本人にけんかを売っているのだろう?

この人・・・ディベートのイメージが悪くなるからやめてくれーと思ったりしたこともありました。

そんなことを考えているうちに、この本を持っていることに気付きました。

とりあえず、「ディベート」に関連する本は、自分の好き・嫌い問わず目を通すようにしているので、今回はこの本とケビンクローンが語っているディベートについて紹介をしたいと思います。

1-2 著書の感想

ディベートの本というよりは、本人のディベートに関する考え方で終始していましたね。ディベートのテクニックに関しては言及されていましたが、本人のディベートに対する思想や考え方はバンバン発信していましたが、ディベートの専門用語はほとんど出てきませんでした。

他には、日本人や日本の文化のダメなところを指摘しするケビン節はこの頃から健在。

一方で、アニメやマンガをネタにしているところから、実は日本のことをよく調べています。案外と、日本のことが好きなのかもしれませんね。(笑)

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2.ケビンクローンはディベート負けなしなの?

さて、ここからが本題です。

ケビンクローン氏のディベートQ&A

  • ケビンクローンが行っているのはディベートなのか?
  • ケビンクローンはディベートが強いのか?
  • Youtube動画の決着はどうなのか?

 

【質問1】ケビンクローンが行っているのはディベートなのか?

結論からいうと、ケビンクローンが行っていることは、間違いなくディベートです。

  • 競技ディベートではない
  • ゲームとして行うディベートではない

テーマこそありましたが、ルールや勝敗の基準がないため、競技やゲームとしてのディベートではないんですね。そして、ルールや勝敗の基準が明確でなければ、今回の橋下氏vsケビン氏のようにメチャクチャになります。

  • 相手の話を遮る
  • 延々と話し続ける
  • 人格批判に走る

これはディベートの試合では全部反則行為に当たります。減点どころか即失格です。

じゃあ、ケビンクローンがしているのはディベートではないのか?と質問されたら、間違いなくディベートです。ケビン流にいうとストリートディベートというジャンルのディベートです。

ケビン氏は競技ディベートを否定している

著書からそんなストリートディベートがどんなものかを伺える一文があったので引用します。

ディベートがゲーム性を帯びてきて、解釈論に制限が加えられたときです。たとえば、法廷論争。裁判は法解釈を巡る解釈論の争いです。「審判員を如何に納得させるか?」「裁判員をどのように説得するか?」を競うゲームです。法典というルールブックが与えられ、その制限内でしか解釈論は展開できない」そこから逸脱されることは許されません。

ケビンクローンの空爆式ディベーと革命-日本人が死んでもアメリカ人に追い付けない理由 p29-30

これは正解。競技ディベートというのもゲームで、いかにテーマや証拠資料、相手の言葉を解釈するかで行われますが、そこには何らかの制限があります。

この制限を4つにまとめました。

 

ディベートの制限

  1. ルールの制限-ディベートの教科書に明記されているいくつかのルールそのもの
  2. 証拠資料の制限-データとして証拠資料を引用するときの制限
  3. スピーチの時間制限-限られた時間の中でスピーチをしなければならない制限
  4. ジャッジの制限-ディベートのセオリーを知っている人に対して説得を試みる

 

もちろん、この制限が決して悪いわけではありません。ゲームとして競技を行う以上、絶対に必要な制限ですし、この制限がなければ、各自が好き勝手に自分の意見を述べるだけの場になってしまいます。

逆に、橋下氏とケビン氏は、制限のないディベートをして、少なくともケビン氏は不完全燃焼気味でしたよね?逆に、制限がある中で討論をすれば、ケビン氏は本当に訴えたいことをキチンと伝えられる場がありましたよ。

制限があるディベートは実践で役に立つのか?

この点に関しては、価値観の違いかもしれませんが、ケビン氏の指摘に納得できた部分もあるので、お伝えします。

ディベート講師達は、制限のない議論をすることこそが問題だ!と指摘しているわけですね。

一方で、ケビン氏は、この制限の中で行われるディベートはリアルの議論では全く役に立たないと指摘をしているわけです。同書を引き続き引用します。

ゲームの一種だからルールだらけ。一面、サッカーや野球に似ているわけです。だから、決められた制約の中で解釈論を展開する弁護士は、格闘技でいえば、ルールだらけの柔道選手みたいなもんです。実践に強いかどうかは定かじゃない。これに対し、ディベートはバーリ・トゥード(フリーファイト)そのもの。ルールがない。解釈論も一切自由なのです。だから、そこには独創性があり、学問や文明への寄与も出てくるわけです。よく弁護士がさぞかしディベートは強いだろうと勘違いしている人が多いようですが、弁護士がオープンディベートに参加することは、柔道の選手がバーリ・トゥードに参加をするようなものなのです。

ケビンクローンの空爆式ディベーと革命-日本人が死んでもアメリカ人に追い付けない理由 p30

この言葉を聞いて、ディベーターはギクッ!とイラッ!と思ってしまうかと・・・

何が言いたいかというと、いくらディベートの訓練をしても、それは競技ディベートで勝つためのスキルを身に付けられるだけ。もしも現実の議論や討論がストリートファイトのように制限のない世界であれば、ディベートはそこまで役に立ちません。

決められたルールの中でディベートができても、リアル議論で相手を論破するスキルを身につけることはできなければ、ジャッジこそ説得できても一般人は説得できない人になります。

この点、ケビン氏の指摘は、競技ディベート関係者が抱えている自己矛盾をついていますね。

論理だけでガチガチに攻めても、説得されるのはディベートのルールやセオリーを理解しているジャッジだけであり、一般の人は説得できないわけです

ディベートが日本であまり流行らない理由は、日本人の文化にディベートが合わないのではありません。ディベーターが、人を説得できないだけです。それが悔しくて、私はマーケティングを勉強しました。

備考1

私は誰かをディベートに誘うときは、ディベートのテクニックは使っていますが、30%程度です。ディベート以外のコピーライティングやマーケティングで学んだ技術の方をメインに使っています。何よりも、あまり説得をするという意識はなく、相手がディベートに興味を持つような理由を伝えて、する・しないは相手に委ねます。

備考2

また、ディベートは相手を説得技術だと考えている人もいますが、相手を説得する以上に、自分が相手から上手に説得される技術の方が身につきます。「騙されやすくなる」という意味ではありません。どの部分に納得できて、どの部分に納得出いないのか自身で取捨選択をして、自身で判断ができるようになります。

さて、ケビン氏のストリートディベート説を一部認めたところで、いくつか納得できないところがあるので、反駁をしますね(笑)

2点です。

ケビン氏のストリートディベートに2点反駁

これに対し、ディベートはバーリ・トゥード(フリーファイト)そのもの。ルールがない。解釈論も一切自由なのです。だから、そこには独創性があり、学問や文明への寄与も出てくるわけです。

以下の点に関しては、やや疑問です。

  • ルールがなければ解釈論が自由なのか?
  • 自由だから独創性があるのか?
  • 結果、学問や文明への寄与も出てくるのか?

まず学問や文明に寄与している人達は、自由と独創性だけで物事を考えているわけではなく、決められたルールの中で議論をしています。そこで何らかの型(スタイル)を身につけて、ストーリーとファイトのようなディベートを行っています。いちばん解りやすいのが、橋下弁護士ですね。

ディベートがバーリートゥード(フリーファイト)そのものと主張していました。柔道の選手がバーリートゥード(ストリートファイト)では活躍できないという論調ですけれど、K1の大会でなどをみると柔道や空手の選手で活躍している人はたくさんいますよね?

では、弁護士がオープンディベートに参加をするようなもの。橋下さんはもと弁護士ですよ。もちろん、はじめは慣れないことがあり戸惑うかもしれませんが、時間が解決する問題です。「はじめてのことで慣れない」を「弱い」に結び付けるのは、角の一般化の典型例です。

補足をしておくと、実際に弁護士やその他人を説得する仕事に就いている人は、ディベートの学習スピードがそうでない人よりも圧倒的に速いです。ディベート業界にいる人なら誰もが知っています。

まとめると、2点です。

  • フリーファイト(バーリートゥード)に強い人の多くが、必ず何らかのルールある格闘技の中で基礎を積んでいる
    →ルールのある世界を否定するのは理由にはなっていない
  • ストリートディベート(バーリートゥード)で弱いのは、「慣れ」の問題。時間や学習サイクルなどの視点が全く論じられていない
    →物事を一般化しすぎ

上記の反駁に再反駁をしたいところですが、ひとりディベートを披露する場ではないので割愛します。

【質問2】ケビンクローンはディベートが強いのか?

自称ディベートで負けなし』の【自称】という部分に引っかかりますね。

明らかに、第3者から勝ちの判定を受け取った経験がないことも裏付けていますね。だから、勝ったこともなければ、負けたこともない、という意味で「自称ディベートで負けなし」なのでしょう。

 

【質問3】Youtube動画の決着はどうなのか?

恐らくこの記事を読んでいる人がいちばん気になるところかと思います。お互いグダグダになり、討論中は話が噛み合ってなくて、決着が尽きませんでしたが、最後のコメントが印象的でした。

ケビンクローン氏は、「具体的な話をする前に阻止された・・・」とやや悔しがっている表情を見せました。ここからはあくまで私個人の判断です。

これは私も誰かと議論をして論破されたなーと思うときがありまして、本当に議論が強い人は具体的な話事実を叩きつけて、そこから論理展開をします。そして、勝ち筋を見極めたら、その部分に一点集中します。本当にこのタイプの人は今でも苦手・・・。

なので、ゲームをディベートの文脈で判断をすると、あの議論は橋下氏ほうがケビン氏よりも優勢でしたね。よって、橋下氏に投票しました。

ただ、残念なことに、これからケビン氏が反撃をするかもしれないところで、コングが鳴ったので、本当のところはわかりません。(そこら辺がテレビ番組のひどいところ)

 

3.感想とまとめ

最後にケビンクローン氏の印象についてです。ディベートのイメージを下げるような言動や日本を批判するような態度にイラッとしたことがありましたが、ケビン氏の書いた本を読んだり、この記事を書いているうちに好感を持てるようになりましたね。

ストリートディベートに関しては、個人的には好みませんし、実際にやってみたいとも思いません。また、教える気はありません。

ただ、ゲームとしてルールの中で行うディベートもあってもよいし、ルール無用のストリートディベートがあっても何ら問題ないと思います。

結局のところ、誰がどんなディベートを必要としているか?究極的にはそれだけです。ケビンが行っているようなディベートを必要としている人もいるわけですし。

以上です。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

~最後にケビンクローン氏に~

空爆式ディベート革命を読んでいて、本の下に脚注で専門用語の説明がたくさん書かれており、凄く解りやすいです。こういう工夫はワークショップでも必要だなと思いました。本当に勉強になりました。ありがとうございます。

 

 

 

 

 

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フリーランスのウェブデザイナー。元ディベート好き。30代でニートになる。2015年に本サイト:インプロ部がヒットして、副業ディベート講師として活動。 ホームページをゼロから収益化した実績が認めれ、35歳からウェブデザイナーになる。ウェブ制作会社・デジタルマーケティング会社を渡り歩き、複数社で経験を積み、現在はフリーランスのウェブデザイナーとして活動中。セミナーやオンライン相談の実践者として、現在は個人事業主の方向けにディベートやWordPress制作×集客を教えている。事業者の専門性をカタチにしたいと考えて、屋号は木村専門研究所に変更

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